しゃベルシネマ

クリント・イーストウッドが<実話>を映画化する理由『15時17分、パリ行き』

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第367回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、3月1日から公開となる『15時17分、パリ行き』を掘り起こします。


主演は事件の当事者たち! 無差別テロ事件の真実を究極のリアリティで描く


『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』と、リアルヒーローの真実の物語を描き続けてきた巨匠、クリント・イーストウッド監督。87歳を迎えても尚、新たな挑戦を続けるトップランナーが最新作の題材に選んだのは、2015年に起きたパリ行き特急列車内で554人の乗客全員をターゲットにした無差別テロ襲撃事件。

武装した犯人に立ち向かった、ヨーロッパを旅行中の3人のアメリカ人の若者たちの、その半生と事件の真相を緊迫感たっぷりに描いています。


2015年8月21日、オランダ・アムステルダムからフランス・パリへと向かって出発した高速列車タリス。列車は順調に走行を続け、やがてフランス国内へ。ところが、自動小銃やピストルで武装していたイスラム過激派の男が自動小銃を発砲し、無差別殺傷を引き起こす。

突然の事態に怯え、混乱をきたす車内で立ち上がったのは、その列車にたまたま乗り合わせていた米空軍兵のスペンサー・ストーンとオレゴン州兵のアレク・スカラトス、そして2人の友人であるアンソニー・サドラーだった…。


列車内で起きた出来事を正確に映画に反映したいと考えたイーストウッド監督は、前代未聞の方法で今作を完成させました。それは当時、その列車に乗り合わせて実際に事件に遭遇した人たちにコンタクトを取り、本人役として出演させ事件を再現して撮影に臨んだということ。

テロリストから乗客を救ったアンソニー、アレク、スペンサーたちも本人なら、実際に列車に乗り合わせていた旅行者も乗務員も、女性看護師も列車に乗り込んできた刑事も、あの時あの場所であの瞬間を共有した人々なのです。(ただ当然のことながら、現在投獄されているテロリスト本人による出演は叶うはずもなく、俳優のレイ・コラサーニが演じています。)

撮影現場はイーストウッド監督とクルーを除くと、事件を体験した本人だらけ。彼らを本物の高速列車タリスに乗せ、あの忌まわしい出来事を追体験させることで、見せかけではない迫力と臨場感に満ちた映像を収めることに成功しました。


前作『ハドソン川の奇跡』に続き、アメリカの正義を体現してきたかつてのスーパーヒーローであるイーストウッドが描いたのは、名もなきリアルヒーローたち。イーストウッド監督が実話を映画化するのは、ヒーロー不在が叫ばれる現代において「ヒーローは私たちのすぐそばにいる」ということを伝えたいからなのではなかろうか、そんなことがふと頭をよぎりました。

新作を発表するたびに常に新たなチャレンジを繰り返すイーストウッド監督にとって、主役に事件の当事者を据えるということは“必然”だったのかもしれません。しかも素人ばかり集めて撮影した本作は、イーストウッド監督作史上最短の94分! 驚嘆に値する傑作です。


15時17分、パリ行き
2018年3月1日から丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督・製作:クリント・イーストウッド
出演:アンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、スペンサー・ストーン ほか
©️2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT INC.
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/1517toparis/

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