ジャンプ選手からワックスマンに転身、 高梨沙羅選手の板も扱った小浅星子さん

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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

いよいよ明日、閉会式を迎える平昌オリンピック。今回は、ジャンプの選手から、裏方のスタッフに転身。国内戦で、高梨沙羅選手ら日本代表のスキー板を預かり、選手を支えている女性の、グッとストーリーです。

ガリウム ワックスマン 小浅星子

スキー板にワックスを塗る「ワックスマン」の小浅星子さん

平昌オリンピックで、日本中が拍手を贈った、女子スキージャンプ・高梨沙羅選手の銅メダル。「メダルを決めた2本目のジャンプは、特に沙羅らしいというか、力強く飛び出していたので、カッコよくて感動しました」と言うのは、小浅星子(こあさ・せいこ)さん・35歳。

小浅さんの仕事は、選手のスキー板に、助走が滑らかになるようワックスを塗る「ワックスマン」で日本代表の選手もサポートしています。国内戦の担当なので、今回、平昌には帯同していませんが、「星子(せいこ)さんは選手の視点で、板を調整してくれる」と、選手から厚い信頼を寄せられている小浅さん、実は4年前まで、ワールドカップ出場経験もあるジャンプの選手でした。

小浅さんは、山形県米沢市出身。地元の大会でジャンプを観て憧れ、小学5年生から本格的に競技を始めました。当時、ジャンプの女子大会は非常に少なく、男子に混じって出場していた小浅さん。「女子が飛ぶのは危険だから」と、参加すら認められないこともありました。

スキー ジャンプ 小浅星子

選手時代の小浅さん とても高く飛んでいます!(クレジット名:佐藤眞一)

「記録では男の子に勝っているのに、なんで出られないの? という悔しさはありましたね。でも頑張り続けていたら、いつか認められる、と思って飛んでいました」という小浅さん。 国内・海外の様々な大会に参加して技術を磨き、オリンピック出場を目指しました。しかし……ようやく女子ジャンプが正式種目になった4年前のソチオリンピックでは、あと一歩で代表から漏れ、小浅さんは引退を決意します。ヒザの前十字じん帯を3度も断裂しており、肉体的にも限界でした。

引退後もジャンプに関わり、東北に残ってお世話になった人たちに恩返しがしたいと、2014年の春、仙台のスキーワックス製造会社・ガリウムに入社。広報や営業の業務を担当するかたわら、大会ではワックスマンとして選手をサポート。選手の声を、開発担当に伝える役割も果たしています。

現役のとき、自分でワックスを塗った経験はありましたが、より専門的な知識を一から学び直した小浅さん。ワックスマンは試合前日、選手からスキー板を預かり、ベースワックスをアイロンで溶かして、滑走面に丹念に塗り込んでいきます。試合当日、さらに仕上げのワックスを塗りますが、その日の気温、湿度、雪の温度によって、何種類ものワックスを使い分けます。

ガリウム ワックスマン 小浅星子

一生懸命にワックス作業に勤しんでいます

ガリウム ワックスマン 小浅星子

選手だったからこそ微妙なニュアンスがわかる小浅さん

「選手にストレスなく滑ってもらうことが、ワックスマンの仕事なんです」という小浅さん。1本目を飛んで戻ってきた選手に「どうだった?」と感触を聞くのも大事な仕事。選手は「ちょっとしぶかったね」「けばけばしてた」など感覚的な表現で、状況を伝えてくることが多いそうです。

「『しぶい』は滑らかに滑らない、『けばけば』は、氷の粒が立っていて板が引っ掛かる、という意味ですが、私も選手だったので、そういう微妙なニュアンスが分かるんです」

小浅さんは、短い時間で選手の希望を汲み取って、最も適したワックスを選び、塗って渡します。天候が頻繁に変わるときは、判断力と決断力が要求されるため、選手の頃より緊張することも……。

「選手に『よく滑って、いいジャンプができました』と言われたときが、一番嬉しいですね」

2014 スキー ジャンプ ワールドカップ

2014ワールドカップ遠征中 (左から)山田優梨奈選手・伊藤有希選手・高梨沙羅選手・小浅さん・岩渕香里選手

今の女子日本代表は、現役時代からよく知っている選手たちばかりで、お互い名前で呼び合う仲。小浅さんは、選手たちが普段通りの力が出せるよう、選手への何気ない声掛けを大事にしています。選手も「星子さんには、思ったことを何でも遠慮なく言える」と絶大な信頼を寄せますが、高梨沙羅選手もその一人。「沙羅のことは小学生の頃から見ていますが、当時から集中力と精神力の強さは並外れていました」という小浅さん。ソチでメダルなしに終わった悔しさを、4年間ふつふつとためて、平昌に向かったその思いが、離れていても伝わって来たそうです。

メダルが決まった直後、「沙羅、ナイスジャンプだったね、おめでとう」とメールした小浅さん。高梨選手からすぐに「ありがとうございます」という返事が、可愛いスタンプ付きで返ってきました。

「今の選手たちは、一緒に飛んでいたので、気軽に話してくれますが、もっと勉強して、選手から、より信頼される存在になりたいですね」

スキー ジャンプ 2018 札幌 ワールドカップ 小林諭果 勢藤優花 伊藤有希 小浅星子

2018札幌ワールドカップ (左から)小林諭果選手・勢藤優花選手・小浅さん・伊藤有希選手

【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2018年2月24日(土) より

八木亜希子,LOVE&MELODY

番組情報

LOVE & MELODY

毎週土曜日 8:30~10:50

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