柿崎元子のメディアリテラシー

インターネットとリアル世界の共通点

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インターネットとリアル世界の共通点

インターネットの世界では、モノを購入する際やメールをやり取りする人との付き合い方など、特別に注意する必要があるとよく言われます。顔をみてやりとりする現実の世界とは違う点が多いためです。しかし、今回は両者の共通点、つまり変わらないポイントがあるというお話です。

最近フリマアプリが人気を集めており、私の友人たちの中にもすでに売り買いのツワモノがいて、様々な体験談を私に吹き込んでくれます。「ものすごく簡単になんでも売れるよ」と面白さを主張する先輩もいれば、「なかなか売れないのよね、もう1週間ぐらいになるかも」と残念そうな後輩。子育てに忙しい若いママは「今年の息子の冬服は調達しちゃった」と楽しそうに言い、「写真だけだとよくわからないから見るだけで終わっちゃう」と面倒くさそうに話す仕事仲間など感想は様々です。私自身は新しいものにはすぐに頭を突っ込むのですが、めんどくさがり屋な面もあり、時間がないを理由にアプリをインストールするだけで終わっていました。それがふと時間が空いたので、本当に何も考えず、ポチっと押してみたのです。念願のフリマ・デビュー!「おお、ものすごい量の商品。確かになんでもある」ここまでは誰しも想像できるでしょう。でもやってみないとわからない事とはあるものです。私は、このあと瞬時に動くネットコミュニケーションを実感させられることになるのです。

どうなる? 初参加の結果は。

マーケットに出品したのは、今年一度も袖を通していないダウンジャケット。出品してから数分後、スマホの画面上では見ている人の数や、いいと思ってくれている人の数が見えてきます。「へー、見てくれる人いるのね…」と思った次の瞬間、「あれ?…売れちゃったかも」はじめてアクセスしたにも関わらず、何気なく画面を傍観していたらものの15分で売れました。ネットの速さとはマッハなのでは? と感じた瞬間でした。こうなると俄然やる気が出てきます。単純な私は次にタオルを売ろうと考えました。手ごろだなと思ったのです。しかし世の中そんなに甘くない。未使用のかわいいタオルは1日経っても売れず、見ている人も少なく誰も興味がなさそうでした。

主語はIよりYou

なぜ売れない? 私は1回目との違いを考えました。値段もさることながら情報提供の仕方に問題があるのではと、情報を分析し始めたのです。
マーケットに参加した以上、お客様に買ってもらわないと意味がありません。ビジネスで言うところの営業やプレゼンテーションも相手を動かしてこそ上手く行った、結果を出したとの評価になります。大切なのは「自分が何をいくらで売りたいか」ではなく「相手がいくらで買いたいか」ということです。つまり常に相手の立場になってアプローチすることで、対象者を行動させることが出来るのです。フリマアプリの場合、商品に直接触れたり、自分に合わせてみたりすることができないため、品物の良し悪しではなく、「ほしい」と思わせる一言です。「そんなのわかっているよ」と思うでしょう。しかし、人間はなかなか相手の立場にたって考えることができないものです。真っ先に「自分がどうしたいのか」を考え、主語がYouよりIとなってしまうのです。それではここで主語をYouにしてみましょう。相手がどう感じるか、相手の生活をどう変えるか、そのポイントを表現できれば、直接購入者の気持ちにアクセスでき、行動させることが出来るのです。フリマアプリの商品情報においては、商品の特徴や状態だけでなく、この商品を手に入れた時どんなうれしいことがあるのか、どんな風にその人やその人の生活が変わるのかなど、具体的に書き表してあげるのです。「これを着たとき、あなたはこんな素敵になる」というイメージです。

インタビューのコツ

話は少し専門的になりますが、メディアからのインタビューに答える際のコツとして、記者が望む答えを言ってあげるという方法があります。これにより、コメントを記事に取り上げてもらえる可能性が高いのです。記者は記事の最終イメージがあります。それに対してコメントをくれる人を根拠として探しています。例えば、連休の最終日に成田空港でマイクを向けられた家族連れの姿を想像してみてください。「南の島で思いっきり楽しめました」「ゆっくり家族と過ごせました」「また明日から仕事ですががんばります」というインタビューはよく聞きますね。ニュースのタイトルは「連休最終日」です。あなたがテレビカメラの取材に出くわし、ニュースに出てみたかったら、記者(相手=You)が欲するコメントを言ってみましょう。採用される確率はかなりあがるはずです。

注目されるポイントは何か

話はフリーマーケットに戻りますが、このように商品の情報提供する際には、相手を意識した次の3つの点を心がけてみてください。①相手の心をくすぐるコメント ②希少価値という意味の限定表現 ③段階を踏んだ価格交渉力。2番目の限定表現とは「今だけ」や「初めて」などが当たります。また、「あの時売れに売れた」、「あの女優さんが来ていた形に似ている」など第三者が行動した客観的評価を加えるとさらに効果が高いでしょう。(嘘はダメです)これはあなたの会社の商品やサービスをプレゼンする際にも有効です。そして価格についてですが、ビジネスにおいて交渉する際は1回では決まらないのが常です。段階を踏んで相手との距離を縮めていくことをイメージするのです。最初の一声ではなく、落としどころを決めておき計画的に下げると考えましょう。相手とwin―winにするにはどうするか、譲歩できるのはどこまでか幅を持たせて予想しておき、時間が経って売れなければ値を下げます。実際にタオルは2回値段を書き換えたことで売却に成功しました。

ネットでもリアルでも「相手」

インターネットの世界では、知らない人とでも相互にコミュニケーションをとることが簡単になりました。しかし、その分、自分はこうしたいという点が際立ってしまい、相手をおろそかにしがちです。人を動かすには、相手のことを考えて行動することがキーなのです。相手の立場に立つ、相手を動かすための言葉を選ぶ、相手のハッピーを予測する。コミュニケーションをとる上で大切なことは、ネットでもリアルでも同じです。このことを何気なくフリマに参加したことで実感させられました。そして相手の想像をはるかに超えてあなたが動いた時に、感謝以上の「感動」を呼ぶことになるのです。

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