あけの語りびと

定年後の父の夢「柏ビール」を家族全員で実現した物語

By -  公開:  更新:

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

定年後の父の夢「柏ビール」を家族全員で実現した物語

色とりどりの美しいビール!(こまいぬ醸造所自社農園 | 柏ビール Komainu Brewery HPより)

日本には「とりあえず! ビール」という言葉があります。心地よい疲労感や達成感、カラカラに乾いたノド、みんなで「カンパ~イ!」という時は、ワインや焼酎じゃダメ! やっぱりビールなんですよね。

「ビールのノド越しの良さ! 爽快感! キレ! ビールのこうした画一的なイメージは、実は作られたものではないか?」と異議を唱えるのは、小さなビール工場とレストラン「柏ビール」を開いた丹羽文隆(にわふみたか)さん。60歳。

丹羽さんは、去年の夏まで親の代から60年以上も続けて来た進学塾を経営。千葉県柏市の地元では厳しくて有名な塾だったといいます。そんな丹羽さんが、なぜビールレストランを? その疑問にお答えしましょう。

柏ビール

「柏ビール」前でビールをかかげる丹羽文隆さん(柏ビール Komainu Brewary Facebookより)

丹羽さんの塾では、子どもたちに植物観察や農業体験をさせることを実践。丹羽さんは、60アールほどの借りた畑地で農作業に汗を流しました。最初は水田での稲づくりにも挑戦しましたが、ハードルの高さに断念。畑に、麦のタネをまき、麦踏みをして、成長した麦を刈り取り、脱穀、そして製粉した粉で奥さんの和子さんがパンを焼く。

さて、残った麦は、どうするのか? (そうだ! ビールを作ってみよう!)東京大学農学部出身の丹羽さんには、醸造学を学んだ経験がありました。その経験を活かして、ビールを作る! 次の人生に明かりが灯りました。

丹羽さんは、塾をたたむことを決意。去年の7月、発泡酒の酒造免許を申請。

定年後の父の夢「柏ビール」を家族全員で実現した物語

丹羽さんは2017年12月、柏税務署にて酒造免許を取得しました(こまいぬ醸造所自社農園 | 柏ビール Komainu Brewery HPより)

「日本のビールの先入観にとらわれたくない。世界には美味しいビールが沢山あるはず。たとえば、インドには冷やさないで飲むビールがあるんです」

こんな信念に燃える丹羽さんに、酒造免許が下りたのは、去年12月でした。還暦、定年退職の年を迎えて見た新しい夢。これを実現するためには、どうしても家族の協力が必要です。丹羽さんの家族は、父親の夢のために全員が結集しました。

丹羽さんの次男の岳悠(たけひろ)さんは、勤めていた会社を今年2月で辞めて、営業部長として販売を担当することになりました。ハンガリーの医科大学に進んでいた三男の一宇(かずひろ)さんは、目ざしていた外科医への適正に疑問を感じ、大学を中退して帰国。本場のビールを味わい、その魅力に引き込まれた経験から、都内のビール醸造所でビールつくりを学んだ後、工場長に就任しました。

そして、奥さんの和子さんは接客を任され、丹羽さんはもちろん、シェフを担当! こうして準備万端、相整い、「柏ビール」は、去年の12月にオープンしました。

定年後の父の夢「柏ビール」を家族全員で実現した物語

メニューその①「柏ペールエール」(こまいぬ醸造所自社農園 | 柏ビール Komainu Brewery HPより)

定年後の父の夢「柏ビール」を家族全員で実現した物語

メニューその②「手賀沼ポーター」(こまいぬ醸造所自社農園 | 柏ビール Komainu Brewery HPより)

シャレたレストランと工場の広さは合わせておよそ83平方メートル。小さなスペースに設置した煮沸釜や発酵タンク4本など醸造装置が、客席からものぞけるようになっています。ビールの仕込みは週1回。年間7.2キロリットルを生産する予定です。丹羽さんは言います。

「誰もが『ビール作りは儲からないよ』と言います。『これっぽっちの生産で、生活できるのかい?』とも言われました。でも私は、大きくやる冒険よりも小さくコツコツやる楽しさとビールの可能性、奥深さを選んだんです」

「柏ビール」が製造するビールは、全部で7種類。

定年後の父の夢「柏ビール」を家族全員で実現した物語

自社農園を近隣の白井市に構え、麦芽の生産、ホップの生産を研究しています(こまいぬ醸造所自社農園 | 柏ビール Komainu Brewery HPより)

*ホップの香りが強い「柏ペールエール」
*麦芽の香りが立つ「手賀沼ポーター」
*バナナのような甘い香りがする「白樺バイツェン」
*手賀沼のイチゴを使った「そのべイチゴエール」などなど・・・。

今のところ、原料の麦やホップは外国産ですが、フルーツビールだけは地元のイチゴや青森のリンゴ、自前の小麦を使っているそうです。

柏ビール 白井市 自社農園 麦畑

柏市の隣の白井市にある自社農園の麦畑(こまいぬ醸造所自社農園 | 柏ビール Komainu Brewery HPより)

柏ビール

小麦麦芽が乾燥して出来上がりました!(柏ビール Komainu Brewary Facebookより)

「ゆくゆくは、柏市内の農家の協力を得て麦やホップも栽培したい。柏産の原料を増やして、いずれは地元産の原料だけで造るビールを目ざしたいですね」と声を弾ませる丹羽さん。

地元のショウガを使ったビールも計画中で、春以降には瓶詰めビールも少しだけ販売するほか、店内でのビール造り体験教室も予定しています。丹羽さん家族の夢は今、ビールの真っ白な泡のように勢いよくモコモコとふくらんでいます。

よし、今夜は早速「柏ビール」へ・・・と思われた方、「柏ビール」の営業は、木曜日から日曜日の午後5時半から10時半までだそうです。

定年後の父の夢「柏ビール」を家族全員で実現した物語

柏市生まれのビール醸造所、こまいぬブリュワリー(柏ビール Komainu Brewary Facebookより)

柏ビール
柏市柏5-8−15(柏市役所そば)
営業日 木~日曜17:30~22:30(22:00Lo)
Tel:04-7199-7774(営業時間内のみ)
http://kashiwa.beer/

上柳昌彦 あさぼらけ 『あけの語りびと』
2018年2月14日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

Page top