冬季五輪で思い出す、銅メダルの笑顔と尻餅が1番人気。10位は幸せな結婚へ

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メタボな表現者・大谷龍雄が駆ける「昭和時間」

気になる話題は「平昌冬季五輪」だ。ジャンプノーマルヒル予選とカーリングの混合ダブルスが先行開始しているが、今大会はメダルが期待される競技も多く、25日までの期間中に様々な場面で一喜一憂するのだろう。ここ数日の報道はメダル獲得予測ばかりだったが、毎回事前予想と終了後の報道トーンの違いには複雑というか呆れる。メダル、結果至上主義と言われればそれまでだが、様々な競技種目で世界レベルを競い、数字とプレッシャーと戦うのが五輪だ。あからさまな商業主義になり、日本人のメダル獲得にも“お金”が付けられ、昭和時間としては閏年の冬季、夏期同時開催が無くたった頃から、様変わりしたようにも感じる。

平昌では出場選手にとって日本でも猛威を振るう寒波が心配だが、視聴者としては時差も無く寝不足にはならなくて済みそうだ。但し、欧州の視聴時間に合わせた人気種目の競技時間設定もあり“闘い”はとっくに始まっている。ロシアの“排除”の影響や軍事パレードと南北融和を同時に演出し、自らの「核保有国アピール」に活用している北朝鮮の動向も大いに気になる。中でも女子アイスホッケー日本チームの韓国・北朝鮮合同チームとの対戦が心配だ。多くの日本人が望む“平和の祭典”とは名ばかりの「欧州のゴリ押し」「政治利用の場」「利権の巣窟」だというのは、言い過ぎだろうか。

昭和時間には「参加する事に意義がある」とされた五輪だが、グローバル化の時代背景もあり、日本人の価値観が変わったのだろう。昨今は何でも「1番」「1番じゃなきゃ意味が無い」というのが主流になり、銅メダルを獲得しても笑顔を見せない選手も大勢いるが、何のための3位までの国旗掲揚と表彰台、金銀銅のメダル授与なのか。1番至上主義ではなく、2位と3位の高く栄誉ある価値について、更には1強思想ではなく共存共栄の利得について、平昌冬季五輪を通じて今一度考える契機にするべきではないか。ある業界ナンバーワン企業社長室の「共存共栄」の文字が掲げられた額縁を見て、改めて強く思った。

さて、冬季五輪の思い出と言えば長野大会を語る人が圧倒的なのかもしれないが、昭和時間としては、もちろん「札幌大会」だ。4年前のソチ五輪の際にも少し触れたが、昭和47年2月6日の宮の森シャンツェ「スキージャンプ70m級(現在のノーマルヒル)」で、笠谷幸生が金、金野昭次が銀、青地清二が銅メダルを獲得し、後に日本スキージャンプ選手団が「日の丸飛行隊」と称される契機になった快挙だ。冬季五輪メダル獲得総数が銀1つしかなかった時代に、1種目で日本人選手3人が表彰台を独占したのだから、国民の興奮度は近年五輪のメダル獲得の比ではなかったが、結局日本人が獲得したメダルはこの3個に止まった。総合的にはソ連、東ドイツ、ノルウェー、スイスなど欧州勢が圧倒的に強かったのである。

葛西選手らジャンプ陣に注目が集まり、4人全員が無事ノーマルヒル予選を通過したが、冬季五輪代表の特徴として北国、雪国出身者が多い中、平昌五輪でも女子フィギュアスケート代表の宮原知子は京都府、坂本花織は兵庫県出身の関西勢だ。実は札幌五輪の日本代表も大阪府出身の山下一美で、2大会連続で五輪代表に選ばれ“深窓の令嬢風の美形”と称され、その前のグルノーブル五輪に共に出場した大川久美子、石田治子の3人の大阪勢が日本の女子フィギュアスケート界をリードしたため「銀盤のいとはんトリオ」と呼ばれていた。山下はその中で1人連続出場した札幌大会では順位を上げて10位と奮闘したが、昭和時間の記憶に残るのは、愛くるしい笑顔から「札幌の恋人」「銀盤の妖精」と呼ばれ日本中で人気を博し、カルピスのCMにも出演した、懐かしいあの外国人である。

毎回美しい妙技で話題になるが、札幌五輪の女子フィギュアスケートは「特に美人揃いだった」と評判が高い大会だ。後にゴルフ評論家として有名なツアー解説者の大西久光と結婚した山下はもちろんだが、金メダルのベアトリクス・シューバ(オーストリア)は、重い宿命を背負ったような暗さの中にある美しさを魅せ、銀メダルのカレン・マグヌセン(カナダ)は、文字通りの可憐な美貌が魅力で、相反する男性的なスケーティングで観衆を魅了した。だが、圧倒的に記憶の中に焼き付いているのが、3番手の銅メダルを獲得した銀盤の妖精・ジャネット・リン(米国)だった。

滑る前から大人気の可愛らしさでメダル候補。リンクの上では美しい金髪のショートカットに満面の笑み。「カワイイ」を突き抜けた“伝説のアイドル”だ。ジャネット・リンの素晴らしさは、カワイイだけでなく、ずば抜けた明るさだった。勝つ事だけに必死というよりは、心からスケーティングを楽しんでいると感じさせる笑顔に、観衆や視聴者が魅せられた。自由演技で尻餅をつきながら審判委員たちが満点を出してしまう程、スマイル効果は抜群で、結果は銅メダル。エピソードも豊富で、選手村の部屋に「LOVE&PEACE」という“落書き”を残し、競技では「SHIRIMOCHI&SMILE」を魅せ、「札幌五輪=ジャネット・リン」と深く記憶に刻まれた。

冬季五輪の盛り上がりで記憶される昭和47年だが、1月24日にグアム島で「元日本陸軍兵士横井庄一氏が発見された」という衝撃から始まり、五輪期間中の2月10日に横井庄一の任務解除命令が発せられた。五輪終了直後の2月19日に連合赤軍によるあさま山荘事件が発生し、2月28日に全員逮捕されるまで、五輪に続いてテレビに釘付けにさせられた。同年のミュンヘン夏季五輪では銃撃戦により、選手を含む17人が死亡しており、政治利用や平和妨害によるアピールが“世界の常識”なのかもしれない。アジアが注目されていた前回の東京五輪の際には中国が核実験している。

昭和47年を改めて振り返ると平和の祭典の影に混沌とした現実が存在し、現代との共通項も多々ある。今年の初場所はジョージア出身、栃ノ心の初優勝で始まったが、昭和47年は外国人力士である高見山が初優勝した年でもある。2020年に東京五輪が開催されるのを機に、大阪市では「2025年の万博」誘致を目指して、正式に開催都市として立候補し、札幌市では「2026年冬季オリンピック・パラリンピック」招致へ向けて動き出している。歴史は繰り返すとは言われるが、余りにも似ている。昭和の「高度成長期の夢再び」にしても、立候補都市が全て同じで良いのだろうか。昭和に学ぶコラムとしては、世相が似ている現実を懸念するが、何事も「参加する事に意義がある」と信じ「共存共栄」を願いたい。

<大谷龍雄プロフィール>
「ニッポン放送モバイル(携帯)サイト」会員限定で発信して来たが、連載150回を機に「ニッポン放送ホームページ」にも同時掲載開始。新聞社に約15年勤め全国紙、スポーツ紙、夕刊紙、地域紙に携わった取材、プロデュースなどの経験を活かして独立。経営者、政治家、行政との関わりやプロデュース業の傍ら、政治、経済、文化、歴史、スポーツ、芸能からIRゲーミング、地域創生、サブカルチャー、スピリチュアルまで、日本の精神文化と言論の自由を守るコラムニストとして、体型に合わせた幅広い経験と知識、ギョーカイ人脈やオープンソースなどを活用した情報を基に「昭和時間」をテーマとした様々なジャンルを自由に紐解き、時宜に適う話題を“本質”で切っている。同時に「何故か気になる読む習慣化」のために、メタボらしく“体重の増減”を発表しており、本日は前回比「1.1kg増」で元の木阿弥。

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