原田泰造、長距離深夜バスに乗せて運ぶものとは…『ミッドナイト・バス』

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第349回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、1月27日に公開された『ミッドナイト・バス』を掘り起こします。


伊吹有喜による傑作ヒューマンドラマ、完全映画化

原田泰造、長距離深夜バスに乗せて運ぶものとは…『ミッドナイト・バス』
都内の主要ターミナル駅周辺にある長距離深夜バス乗り場。夜も深くなるとやって来る乗客は、年齢も性別もバラバラなら、バスを利用する目的も様々。

『ミッドナイト・バス』は、長距離深夜バスの運転手や乗客の姿を通じて、それぞれの人生の“夜”を越えていく物語。第27回山本周五郎賞と第151回直木三十五賞の候補となった伊吹有喜による同名小説を映画化しました。

原田泰造、長距離深夜バスに乗せて運ぶものとは…『ミッドナイト・バス』
故郷の新潟で暮らしながら、新潟と東京を行き来する長距離深夜高速バスの運転手として働く高宮利一。16年前に妻の美雪と離婚後は息子の怜治と娘の彩奈とも今は別々に暮らし、東京で定食屋を営む恋人の志穂との逢瀬だけが、利一のささやかな心の拠りどころだった。

ある日、利一が乗務するバスに、美雪が偶然乗車して来る。聞けば、怪我をした父親の面倒を見るために東京から新潟まで通っていると言う。その頃、東京で働いていたはずの怜治が突然帰郷、彩奈は結婚と夢の間で揺れていた。

一度は離れ離れになった家族が、それぞれの心と向き合う時間が増えてきて…。

原田泰造、長距離深夜バスに乗せて運ぶものとは…『ミッドナイト・バス』
主人公の高宮利一を演じるのは、俳優としての活躍も目覚ましい原田泰造。関越トンネルを境に“父性”と“男性”の間を行ったり来たりする難しい役どころを繊細に演じています。

そんな利一に心を揺さぶられる女性を演じるのは、二人の実力派女優。元・妻の美雪を山本未来が、天真爛漫な恋人・志穂を小西真奈美が、それぞれまったく違う女性像を熱演してしているのも大きな見どころ。

また、兄妹役で七瀬公と葵わかながフレッシュな息吹を吹き込めば、美雪の父・山辺敬三役の長塚京三が味わい深い存在感を発揮。

メガホンを取ったのは、原田泰造と『ジャンプ』以来二度目のタッグとなる竹下昌男監督。家族の再生と再出発を穏やかに優しい視点で描きました。

撮影はほぼ全編新潟ロケを敢行。白鳥の飛来やスクリーン狭しと広がる雪景色など、美しい風景も魅力的です。

雪も人の心のわだかまりも溶かすような、静かな中にも温かさがある人間ドラマです。

原田泰造、長距離深夜バスに乗せて運ぶものとは…『ミッドナイト・バス』
ミッドナイト・バス
2018年1月20日から新潟先行公開、1月27日から有楽町スバル座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
監督:竹下昌男
原作:伊吹有喜 「ミッドナイト・バス」文春文庫 刊
音楽:川井郁子
出演:原田泰造、山本未来、小西真奈美、葵わかな、七瀬公、長塚京三 ほか
©️2017「ミッドナイト・バス」ストラーダフィルムズ/新潟日報社
公式サイト http://midnightbus-movie.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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