シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」(vol.2「丸政」編⑤)~小淵沢駅「小淵沢丸政の信州牛御辨當」(1,800円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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山梨県の小淵沢と長野県の小諸を結ぶJR小海線。
清里~野辺山間にある標高1,375mの「JR鉄道最高地点」にキハ110系気動車が差しかかります。
「八ヶ岳高原列車」と銘打たれたこの列車は、週末や繁忙期に小淵沢~野辺山間で運行される臨時列車。
特急「スーパーあずさ、あずさ」に接続して、高原リゾートへの輸送を担います。
実はこの場所が分水嶺でもあり、清里側へ流れた水は富士川を下って駿河湾に注ぎ、野辺山側に流れ出すと千曲川~信濃川と下って日本海に注ぎます。

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JRの鉄道駅として最も標高が高い場所にあるのは「野辺山駅」。
野辺山駅から先ほどの「最高地点」までは、駅前のレンタサイクルを借りれば、線路に沿ってほぼ平坦な道を15分ほど。
駅前の観光案内所では1時間500円で貸し出しを行っており、天気が良ければさわやかな高原の風を感じながら訪ねることが出来ます。
そんな「JR最高地点」を走る小海線の始発駅・小淵沢に「JR最高峰の焼肉駅弁」があります。
ライター望月が駅弁屋さんの厨房を訪問、駅弁作りの現場に迫っていく「駅弁屋さんの厨房ですよ!」。
小淵沢の駅弁屋さん「丸政(まるまさ)」の名取政義社長へのインタビュー最終回、この焼肉駅弁について詳しく伺いました。

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※画像は小淵沢駅の駅弁・土産物売店「デュオレールこぶちざわ」。

◎それにしても「丸政」さんは2000年代から、ものすごいペースで弁当を出し続けてますね?

僕が入ったのが12年前、そのころから僕が商品づくりを始めたんです。何のために「商品開発」をするのかというと、やっぱり新しい商品価値を生み出すことにあると思います。
ウチって「飽くなきwants(ウォンツ)の追求」というのが経営理念なんです。お客様が気づいているのは「needs(ニーズ)」なんですよ。こういうのをこう作ってくれって。でも「wants」というのは、お客様が気づいていない。
例えば「高原野菜とカツの弁当」は「wants」なんです。その時期、生野菜が入ってる弁当なんてのは、みんな欲しいなんて言っていませんでした。でも、出たら「よかった!」となった。「元気甲斐」もそうなんです、料亭と料亭の弁当が二段重ねになった駅弁なんて。
ま、ご飯が二段重ねというのは今どきじゃありませんけど、あれも「wants」でした。で、「甲州かつサンド」を作る時にも「何かwantsを生み出さなければいけない」となりました。
その時「なぁんで世の中にかつサンドってこんな冷たいのしかないのかな」と。自分が食べてきた中で美味しいカツサンドが無かったんです。
そこで、自分が作るとなった時に、まずラードで揚げようと。こんな所、他にはまずありません、風味がまず違います。毎日は食べられませんけど。でも、一生に一度しかこの駅弁を食べない人もいるでしょうから、その人の思い出に残っていく商品づくりをしたいと。

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◎「丸政」はホント「肉系駅弁」へのこだわりがスゴイですよね? 肉への愛情がホントに大きいように思うんですが・・・。

それはボクが肉好きなのもあるんですが・・・(笑)。山梨は「海」が無いでしょう。だからお客様のイメージからも「海鮮系」がかけ離れてる。それに今のお客様の求めるものが「幕の内弁当」とか「元気甲斐」のようなものではなくなってきていますよね。たぶん「駅弁」を食べたい人って「なんか美味しいもの食べたい」という人が多いと思うんです。これになると「肉にする?魚にする?」が強くなっちゃうんです。
実際、外食でも「寿司にする?焼肉にする」っていうんで、寿司屋さんと焼肉屋さんはある程度いいと聞きますし。
肉の中でもやっぱり牛肉で、豚肉は唯一売れるのが「カツ」なんです。で、冷めたらまずいっていうんで、カツ弁当より「かつサンド」のほうが動く。単純にコレ、お客様のイメージなんです。
その中にあって「丸政」が出している「信州牛御辨當」は食べた人がびっくりして「冷めても美味いね!」と言ってくれる人が多いんです。

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◎ニッポン放送のスタッフにも「信州牛御辨當」の大ファンがいますが、あの焦げ目がついた肉がたまりませんよね!

私が7年間、研究に研究を重ねて出した弁当です。ウチは炭火で焼いています。炭で焼くと、最後に食べた時にちょっとした水分が残らないんです。ガスは水の火だから、最後にちょっと水が残っちゃう。

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◎「焼肉」って「焼き方」がポイントで、最後の一瞬で味が変わっちゃうんですね。

普通、肉駅弁を出している駅弁屋さんには「冷めても美味しく」食べられるような駅弁屋の知恵があります。
例えば、砂糖水を使って肉を下ごしらえなどをするなどして、冷めた時に脂が白く浮き上がらないような工夫もしています。
この独特の製法で、いわゆる”牛めし”系の駅弁は、肉の味わいにそんな差は出ません。ただ、炭火焼肉は、使った肉のランクの良さが如実に現れます。
A4,A5ランクの和牛ならではの香り、味、柔らかさといったものを表現出来た駅弁というのは、今までに無かったので、ずっとやりたかったんです。

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◎「小淵沢丸政の信州牛御辨當」は、他の焼肉駅弁の追随を許してないですよね。

肉は信州牛(注)のA4.A5を使用、スライスも薄すぎず、厚すぎないようにしました。たれは牛肉のA4,A5を活かす秘伝のたれを使っています。下に敷いたキャベツも生のままでは臭いや菌も出てしまうため、加工して敷くことで独特の食感を出しました。「丸政」の最高級駅弁として売るので、漬物の赤かぶも厚く切っています。
この駅弁を通して「信州牛」の良さを知ってほしいし、もっと「信州牛」が世に出てほしいと思います。

(注)信州牛とは
厳選した和牛を特製のりんご入り発酵飼料をメインに丹念に育てた信州のブランド牛。「リンゴで育った信州牛」というフレーズと共にやわらかい食感、風味がいい。信州に数多くある温泉宿では「信州牛」をメインにした夕食が出されることが多い。

◎こういった駅弁のアイディアは、どこから出てくるんですか?

全国に「点」を作っています。
つまり、出かけた時に「美味しかったなぁ」というものを憶えておいたり、メディアで取り上げられたものもチェックします。あと、友人と「美味しい」と評判の所に行ったりします。
今はみんな(そういったものをまとめて)私1人で(新商品を)考えてやっています。でも、今後は社長がシャカリキになってやるのではなく、スタッフで開発出来るようにしたいと思っています。

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◎最近は週末、富士急行線の河口湖駅で販売もされていますよね。

河口湖での販売は、インバウンドのお客様にどうやって「駅弁」を食べていただくかが課題になっています。駅弁は日本の誇る文化ですから「スシ、天ぷら、駅弁」といわれるくらいに育てていければ・・・。
実際、フランスの方には、NREさんがリヨン駅に店を出したこともあって認知度が上がっています。この間も10人くらいが(河口湖駅に)「EKIBEN!」と言ってやってきて、まとめてお買い上げいただいたそうです。
外国の方に食べていただくことで、日本の方にもう一度「外国の方がそんなにいいって言うなら私たちも食べてみる」という人が増えていくといいなぁと思います。

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◎今後はどんな展開を?

「丸政」はこれまで「元気甲斐」と「高原野菜とカツの弁当」、それにもう1つの柱として「甲州かつサンド」を投入して三本柱でやってきました。ただ、これはだんだん過去の三本柱になっていくのかなと・・・。
これからは「信州牛御辨當」「そば屋の天むす」、これにもう1本打ち立てて、新しい三本柱を作ることが出来ればと思います。
この夏、小海線に乗って、清里~野辺山方面へ来る方もいらっしゃるかと思います。せっかく小淵沢へ来るんだったら、やっぱり夏の避暑地の緑を眺めながら、照り付けるけど涼しい風が吹く所で、家族みんなで弁当を食べてほしいですね。

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※画像は甲府駅前の「武田信玄」像

「人は石垣、人は城」ともいわれ、今なお、多くの人に愛される甲斐国の英雄・武田信玄。戦上手で盛んな外征を行う一方、信玄堤の公共工事や金山開発など地域を富ませる内政を行いながら、甲斐・信濃を治めました。
今、小淵沢、甲府、茅野の甲信エリアを拠点にしながら、積極的な「輸送駅弁」で首都圏にも進出している「丸政」。
今後は地域経済の活性化も視野に入れた「そば屋」など、新たなビジネスモデルも展開しようとしています。「外征=輸送駅弁」「内政=そば屋」と考えれば、その姿は信玄の領国経営にも重なって見えるかもしれません。

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そして何より、名取社長に話を伺っていて感じたのが「自分が作りたい!」と思ったものはトコトン追求して作り上げる情熱。
一方で「お客様ならこう考えるだろうな」という冷静な視点のバランスがスゴイこと。
果たして今後、どんな「3本目の柱」を打ち出してくるのか、益々楽しみになってきました。
これからの夏、小淵沢で駅弁を買って「丸政」の駅弁への思いを感じながら、高原列車に揺られてみてはいかがでしょうか。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

【ごあいさつ】
はじめまして、放送作家の望月崇史(もちづき・たかふみ)と申します。
ニッポン放送には、昔の有楽町の社屋の頃から、かれこれ20年お世話になっています。
最近では、月~木・深夜24時からの「ミュ~コミ+プラス」で放送された、
ルートハンター」のコーナーに、5年ほど出演させていただきました。

そんな私がライフワークとしているのが「駅弁」の食べ歩き。
1年間に食べる「駅弁」の数は多い年でのべ500個。
通算でも4500個を超えているものと思います。
きっかけとなったのも、実はニッポン放送の番組。
2002年~05年に放送された「井筒和幸の土曜ニュースアドベンチャー」の
番組ウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載することになり、
本格的に「全国の駅弁をひたすら食べまくる生活」に入りました。
以来、私自身のサイトや、近年は「ライター望月の駅弁いい気分」というブログで
「1日1駅弁」を基本に「駅弁」の紹介を続けています。
”駅弁生活15年目”、縁あってニッポン放送のサイトで連載させていただくことになりました。
3つの原則で「駅弁」の紹介をしていきたいと思います。

①1日1駅弁
②駅弁は現地購入
③駅弁のある「旅」も紹介

「1日1駅弁」ですので、日によって情報の濃淡はありますが、
出来るだけ旬の駅弁と鉄道旅の魅力をアップしていきますので、
ゆるりとお付き合い下さい。

【プロフィール】

望月崇史(もちづき・たかふみ)望月

1975年12月8日静岡県生まれ。
早稲田大学在学中から、ニッポン放送で放送作家に。
卒業後の2002年「井筒和幸の土曜ニュースアドベンチャー」の番組サイトで始めた
ライター望月の駅弁膝栗毛」をきっかけに、全国の駅弁食べ歩きをスタート。
以来およそ15年、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。
1日1駅弁のウェブ紹介を日課とし、これまでに食べた駅弁は4500個以上。
ニッポン放送「ミュ~コミ・プラス」ルートハンター、鉄道特番などにも出演。
丸の内朝大学・温泉クラスの講師も務める。