あけの語りびと

数奇な縁から犬と家族になり犬像の本を出版した写真家

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

青柳健二 愛犬

今回の主人公はこのご家族

戌年の今年、いろんな犬の本が出版されていますが、中でも、話題になっているのが、『全国の犬像(いぬぞう)をめぐる 忠犬物語45話』という本です。著者は、写真家の青柳健二さん(59歳)。青柳さんは山形県の出身。山形大学四年生の時、バックパッカーで、ヨーロッパを旅行しました。自由に旅をする人が多いことを知って、就職はせず、自分も、旅をしながら生きていきたい、と写真家の道を選びます。

アジアの少数民族やメコン河、棚田をテーマに撮り続けている青柳さんですが、犬が嫌い。嫌いというより、怖い! というのも、チベットの遊牧民を撮影しに、中国の青海省を訪ねた時、熊のようなチベット犬に、ふくらはぎを、ガブッと噛まれた。それ以来、犬が怖くなってしまいます。その青海省では、悪いことばかりじゃなく、同じバックパッカーで、将来の伴侶となる女性と知り合います。6年後、東京でバッタリ再会し、交際が始まり、結婚へ……。

青柳健二 夫婦 ヴィーノ 愛犬

運命の再会から結ばれた青柳夫婦と愛犬のヴィーノ君 とっても幸せそうです

「かみさんの実家へ、挨拶に行ったんですよ。玄関を開けたら、いきなり、犬に飛びつかれて、ビビりましたねぇ。かみさんの家族は、犬が大好きだったので、その時は、犬が好きなふりをしましたけど……」

結婚から6年後、実家と同じ、ビーグル犬を飼うことになります。人懐っこい性格なので、犬が怖い青柳さんも、大丈夫でした。
犬を飼って2年後の2009年、チベットの遊牧民の生活に憧れていた青柳さんは、奥さんと犬を連れ、車をテント代わりに、「日本一周車中泊の旅」に出かけました。

妻と犬連れ 日本一周 車中泊の旅 青柳健二

アクシデントを無事乗り越えた「妻と犬連れ 日本一周 車中泊の旅」

ところが、北海道の網走で、アクシデントが起きます。夜中、犬の散歩をしていると、引き綱が外れて、暗闇の中を走り出した犬が、行方不明になってしまいます。青柳さんと奥さんは、手分けして探しますが、見つかりません。警察に電話をすると、「遺失物扱い」に……

「ヴィーノ! ヴィーノ!」と犬の名を呼びながら、真っ暗な海岸を、2時間以上、探しますが、見つかりません。そのとき、ふと頭によぎったのが、(あいつは食べるのが好きだから、匂いのする所に行くはずだ!)この近くで、食べ物の匂いがするところは? 暗闇の中、ポツンと明かりが灯っているのは、コンビニでした。そこにいました! 駆け寄って、犬を抱きしめた青柳さん。「こいつがいないとダメだ!」飼い犬が、我が子に感じた瞬間でした

青柳健二 ヴィーノ イヌ 犬

元気に駆け回る“我が子”ヴィーノ君(『一心一写』 放浪の写真家、青柳健二の旅写真ブログより)

旅を続けると、北海道の南富良野町で「ハチ公之碑」を見つけます。

「渋谷の忠犬ハチ公とは別のハチ公でなんですが、日本各地には、いろんな犬の像があって、忠犬や愛犬のいい話が残っているんですよ」

1年かけて、北海道から鹿児島まで犬の像を撮影し、追加取材を重ね、去年、『全国の犬像をめぐる 忠犬物語45話』を出版……。この本には、感動的な話が、いくつも紹介されています。

驚いたのは、江戸時代、飼い主の代わりに、「お伊勢参り」や「こんぴら参り」をした犬がいたことです。首に「行き先・願い事・住所と主人の名前」を書いた名札を下げ、ウロウロしていると、旅人に、「おい、お伊勢参りにいくのか、こっちだ、こっちだぞ!」と、世話をしてもらいながら、伊勢神宮や金毘羅さんに、たどり着いた、というんです。

福岡県筑後市 羽犬 像

2017酉(鳥)年から2018戌(犬)年へ 「羽犬」の像 福岡県筑後市の「羽犬」像(『一心一写』 放浪の写真家、青柳健二の旅写真ブログより)

全国の犬像をめぐる 忠犬物語45話

『全国の犬像をめぐる 忠犬物語45話』には感動的な話がたくさん!

「あの司馬遼太郎さんは、著書の中で、作り話だと書いているんです。私も、初めはフィクションだと思いました。でも、犬の像を調べていくうちに、人と犬の仲は、切っても切れない関係があると、分かってきました。だから、旅人が、そんな犬を見かけたら、ほっとけなかったはずです。私には、江戸から伊勢へ、金毘羅へと旅した犬が目に浮かぶんですよ」

犬のおかげで人間になれる』。これはオーストラリアの先住民族アボリジニーの言葉だそうです。

「犬がいなかったら、いまの人間はなかったし、犬もまた人間と暮らさなかったら、いまの犬ではなかったかもしれません。私も、犬と暮らさなかったら、いまの自分はなかったと、思います」

青柳健二 写真集

青柳さんが今まで出版してきた写真集の数々がこちら

青柳健二

青柳さんがファインダー越しに眺めた世界がこの中に詰まっています

『全国の犬像をめぐる』という写真展が、さいたま市浦和区のギャラリー「楽風(らふ)」で1月30日まで開催されます。入場無料で、定休日は、1月10日、11日、17日、24日です。

青柳健二写真展 全国の犬像をめぐる

青柳健二写真展「全国の犬像をめぐる」 入り口では犬像が迎えてくれます

大河ドラマ「西郷(せご)どん」が始まりましたが、この本には、西郷さんが飼っていた「ツン」という犬の話も載っています。西郷さんが飼った犬は、15匹。欲しい犬がいると、大金を持って、飼い主に「譲ってほしい」と交渉したそうです。手に入れた犬は、うなぎを食わせるほど可愛がった。上野の西郷さんが連れる犬は、ツンだと言われています。

あれは、ツンじゃありませんよと、青柳さんは言います。「だって、下から覗くと、犬の股間に〝いちもつ〟があるから。ツンは雌なんですよ」
ツンにまつわる興味深い話も、この本に載っています。

青柳健二写真展 全国の犬像をめぐる

青柳健二写真展「全国の犬像をめぐる」の内装 是非足を運んでみてください

『一心一写』 放浪の写真家、青柳健二の旅写真ブログ
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上柳昌彦 あさぼらけ 『あけの語りびと』
2018年1月10日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

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