2017年の世界情勢~トランプ政権が金正恩体制を認める日が来る!? 佐藤優

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12/28(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①

中東情勢で忙殺される米の事情
6:30~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター佐藤優(作家・元外務省主任分析官)

 

2017年の世界情勢~トランプ政権が金正恩体制を認める日が来る!? 佐藤優

トランプ米大統領来日 迎賓館で安倍晋三首相主催の晩餐会 トランプ米大統領と乾杯

北朝鮮情勢よりも中東情勢のほうがウェイトの高いアメリカ

2017年は年間を通して北朝鮮問題が多く取り上げられた1年間となった。金正恩体制のあらゆる行動に対しアメリカのトランプ大統領は様々な発言で軍事行動を示唆してきたが実現することは無く、今月に入ってからはイスラエルのエルサレム首都指定など中東問題に力を入れている。

高嶋)今回が佐藤さんにお願いする今年最後のまとめになります。北朝鮮について今年と来年そして日本との動きを解説していただきたいと思います。金正恩について今年はどうでしたか?

佐藤)金正恩はある意味やりたい放題という感じでしたね。2月にお兄さんの金正男さんを暗殺して、ミサイルを撃つわ核実験は行うわ、そして9月には核出力160ktという広島の原爆10倍の威力の強化爆弾もしくは水爆を爆破させるわと。今年は残念ながら金正恩の有事に進んだ1年でした。
トランプ大統領もこの1年間を通していろんなことを言ったし、航空母艦も出したけど実際に軍事行動は取れなかったでしょう。ということはこの程度のことを北朝鮮がやってもまだ“レッドライン超え”ではない、すなわちアメリカは“外科手術”をしないということだと思います。
そうこうしている内に、中東情勢がこれまた12月にトランプさんがエルサレムをイスラエルの首都と認め大使館を移転するということを言い始めてしまったので、ここら辺が緊張している。
そうすると中東情勢と北朝鮮情勢が天秤の上に乗っているのですよ。アメリカは二正面作戦をやる力が無いので、今は天秤の上で中東情勢の方が重たくなってしまっています。そうすると「北朝鮮のミサイルはまだアメリカに飛んで来ないよね。それじゃあ手打ちをするか。現状を維持するということだったら金正恩体制を事実上認める」という形で手打ちをする危険性があるのですよ。

高嶋)ずっとそうおっしゃっていますよね。日本にとって最悪の結末というのも有り得るのですか?

佐藤)最悪というのはやはり戦争で、隣の朝鮮半島で200万人以上死んで、もし核兵器が爆発すれば1,000万人以上死ぬ。日本でも少なく見積もっても数千人は北朝鮮の工作活動とかゲリラ活動で死ぬという状況が最悪ですから、“現状維持”はその次に悪い話ですね。日本の全域が北朝鮮の中距離弾道ミサイルの射程圏内に入るということです。

エルサレム問題に力を入れているのはトランプ支持のキリスト教右派のため

高嶋)アメリカはいわゆる二正面作戦が無理で中東の方がずっとウェイトが高いと。じゃあかなりの北朝鮮の言い分を聞きつつ妥協を図るということも考えられるということですね?

佐藤)そういうことです。残念ながらそのシナリオは有り得ます。結局内政なのですよ。トランプにとって北朝鮮問題で妥協してもそれで「トランプはけしからん」という話にはならない。他方中東に関してはかなり乱暴で危険な政策を取っているのだけどトランプがコアとしている低学歴の白人層はそもそも支持しているし、例えば今年「メリークリスマス」とか言いましたよね。これはアメリカの大統領では非常に珍しいですよ。

高嶋)最近は言わないのですってね。

佐藤)「ハッピーホリデーズ」と言うのです。それはアメリカの大統領はGod―神様とは言いますけどChrist―キリストとは言わないですからね。これは元々ユダヤ教配慮なのですよ。だから捻じれているのです。エルサレムの大使館についてもユダヤ教に配慮していて、そのくせユダヤ人を刺激するようなことは平気でやるので場当たりなのですよね。こういうトランプですから内政の中で宗教右派の支持を得ようと思って今必死になっている。その人たちが絶対に選挙に行くということだったら強いのですよ。そうなるとそっちを重視しているから北朝鮮はどうでも良いと、こういう話なのですよね。

高嶋)どうでも良い(笑)。急にそうなっちゃうのですか。

佐藤)はい。こういう動きが激しいのですよ。だから見切りが激しいのでいくつかの不良債権を並べて処理していたら「もうこれはいいわ」というような感じなのですね。

高嶋)これは来年の動きとしては当面どういうことが考えられますか? ついこの間ティラーソンさんが「条件を付けずに北朝鮮と話し合う用意がある」と言って、数日経ったら少し発言をトーンダウンさせましたけど、基本的にその発言はまだ生きていると考えた方が良いですか?

佐藤)生きていると考えた方が良いです。ポイントは何かと言うとやはりエルサレムで、ここまで言っている以上大使館を動かさないという形で済むかどうかですよね。動かし始めたらフェーズがもうひとつ変わります。
そうするとアメリカは本当に中東で忙殺される、従って北朝鮮の店仕舞いと、こういう話になって来ますね。この2つがリンクしているので、今、明確に北朝鮮の予測をできるということは中東を予測できるということですから、それは有り得ない話なので予測はできないということなのですね。ただ北朝鮮は妥協するという方向性が高まっているということです。

高嶋)大使館移転についてもすごく楽観的なことを言う人もいるし佐藤さんのように領事館もあるから看板を変えればいきなりだという人もいるし、これはどっちが強いのですかね?

佐藤)これは看板を変えればあとは意思次第ですが、既に総領事館の建物があるわけですから、看板を変えたらすぐにできると見た方が良いと思います。

高嶋)トランプさんの性格から言って癇癪を起こすということも考えられますね。

佐藤)あとは誤魔化しがあるのですよ。言ったままでやらないというのがもし無理だとすればアメリカ大使公邸だけがエルサレムに作られるのですよね。それで大使館自体はテルアビブに置いておくということはあると思います。

高嶋)いずれにしても東アジア、日本と北朝鮮の問題はアメリカにとっては少し厄介すぎて軽く片付けるきらいがあると。それで日本は割を食うと。

佐藤)そうです。それはやはり冷静に見ないといけないです。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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