10時のグッとストーリー

保健所から救われて災害救助犬となり大活躍する犬・夢之丞のストーリー

番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

来年は「いぬ年」、そこできょうは、殺処分寸前で救われ、災害救助犬になった犬と、一緒に災害現場で活動するスタッフの絆をめぐる、グッとストーリーをご紹介します。

夢之丞 熊本 震災

熊本の震災で活躍する夢之丞くん 写真提供=ピースウィンズ・ジャパン

災害に見舞われた地域や、紛争地帯に住む住民に、人道支援を行っている広島の認定NPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」。この団体には、災害救助犬として働く犬が5頭います。中でも、とりわけ目覚ましい活躍を見せているのが、オスの夢之丞(ゆめのすけ)。現場での懸命な活動ぶりが評判になり、2015年4月、日本動物愛護協会から「功労動物賞」を贈られました。実はこの夢之丞、災害救助犬に多いラブラドールレトリバーや、シェパードではなく、雑種で、しかも、野良犬として保護された犬だったのです。

「夢ちゃんに初めて逢ったのは、広島の愛護センターでした。生まれて3ヵ月ぐらいの仔犬で、おびえきって震えていたんです」と、夢之丞との出逢いを語るのは、「ピースウィンズ・ジャパン」のスタッフ、大西純子(おおにし・じゅんこ)さん・45歳。

大西純子 夢之丞

大西純子さん 信頼関係にあふれたやさしい笑顔ですね 写真提供=ピースウィンズ・ジャパン

世界中の被災地を廻るたびに、外国から派遣された災害救助犬が活躍しているのを見て、「私たちも救助犬を育成して、現場に連れて行けば、人命救助に役立てるのでは?」と考え、最初はブリーダーを当たりました。しかし、なかなかいい犬に巡り逢えず、それではと訪れたのが、広島の愛護センターでした。その時、殺処分される部屋のそばにあるケージに、ポツンと1頭だけいた仔犬が夢之丞。なぜかこの犬だけ、寸前で殺処分を逃れたのです。

しかしこのまま放っておけば、2日後に殺処分されると聞いた大西さん。「それを聞いたらもう、連れて帰るしかないですよね…」ところが、引き取る際、愛護センターの担当者に、こう言われました。「この犬、救助犬には、とてもなれませんよ」そもそも殺処分に廻されたのは「人にまったくなつかず、ペットとして飼うのは難しい」という判断をされたからで、実際、夢之丞は人間を見ると異常におびえる性格の犬でした。

保護時 夢之丞

保護時の夢之丞くん 怯えた表情です……怖かったですよね 写真提供=ピースウィンズ・ジャパン

しかし大西さんには「運良く1頭だけ処分を逃れたこの子は、人の命を救う仕事にきっと向いているはず」という予感がありました。大西さんたちは愛護センターから、夢之丞を含む何頭かを引き取り、訓練をスタート。

奇跡的に生還したということで、夢と希望も託してこの名前が付いた夢之丞は、なかなかスタッフにもなつかず、散歩をするのにも1年がかりでした。しかし、いざ訓練になると、野良犬ならではの嗅覚(きゅうかく)の鋭さを発揮し始めたのです。

そして4年後の2014年8月、ついに出動の機会がやってきました。広島で大規模な土砂災害が発生。夢之丞はくしくも、自分が捨てられ、殺処分されかけた土地で、デビューすることになったのです。

広島 夢之丞

広島での夢之丞くん 人間と一緒に泥まみれになって救命活動に邁進しています 写真提供=ピースウィンズ・ジャパン

「正直、最初からこの現場は、夢ちゃんにはまだ難しいかな…という思いもありました。失敗すると、トラウマになる可能性もありましたが、ダメもとで連れて行ったんです」

ところが……いつも人がたくさんいる場所を怖がる夢之丞が、救助隊員が大勢いる中でもまったく怖がらず、どこかに人が埋もれていないか、泥の中を懸命に走り回ったのです。これには同行したスタッフたちもビックリ。大西さんによると、救助隊員はみんな救出作業に集中しているので、誰も夢之丞に注意を払わなかったのが、人の視線が苦手な夢之丞には良かったのかもしれません。

台湾 夢之丞

台湾での夢之丞くん こんなに危険な現場でも果敢に挑んでいきます 写真提供=ピースウィンズ・ジャパン

「夢ちゃんは現場で、倒れた建物の中を何度も覗いては、こっちを見るんです。匂いで、そこに人がいるのが分かったんですね」

残念ながら亡くなっていましたが、行方不明者1名を発見することができました。夢之丞は、その後フィリピンの台風、ネパールの大地震にも遠征。2016年4月、熊本を襲った大地震では、大きな余震にも見舞われながら、特に被害の大きかった益城町(ましきまち)や、南阿蘇村(みなみあそむら)にも出動しました。

ネパール 夢之丞

ネパールでの夢之丞くん 凛々しい横顔で何かを見つめています 写真提供=ピースウィンズ・ジャパン

大西さんによると、夢之丞の仕事は丁寧で緻密。スタッフの間では“職人”と呼ばれています。

「人になつかない、災害救助犬に向かないと勝手に決め付けていたのは、私たち人間です。『いや、そうじゃないよ!ボクにだってできるんだ!』と、身をもって示してくれた夢ちゃんは、私たちに、大切なことを教えてくれた気がします」

夢之丞

2017年9月、最近の夢之丞くん 健やかにこれからも頑張ってくださいね! 写真提供=ピースウィンズ・ジャパン

【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年12月30日(土) より

八木亜希子,LOVE&MELODY

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