小樽駅「かにめし」(980円)~日本随一の珍しい通勤列車・函館本線963M

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

733系電車 快速エアポート 函館本線 朝里 銭函

733系電車(札幌から快速エアポート)、函館本線・朝里~銭函間

函館本線の列車が石狩湾に面して走る、北海道小樽市の銭函にやって来ました。
高倉健さんの映画「駅 STATION」の舞台としても有名ですね。
ちょうどやって来たのは、札幌から快速「エアポート」になる6両編成の733系電車。
朝晩の小樽~札幌間は4号車の指定席「uシート」も自由席として運行される列車も多いので、追加料金なしでリクライニングシートを利用できる“乗りドク列車”の1つでもあります。

函館本線 963M 函館本線 朝里 銭函

函館本線・963M、函館本線・朝里~銭函間

札幌近郊の通勤・通学路線としての役割が大きい函館本線の小樽~札幌間。
中でも、“珍しい通勤列車”として知られるのが普通列車・963Mです。
時刻表上は、倶知安を6:20に発ち、小樽・札幌を経由して苫小牧には9:49着。
この日も963Mは731系電車を先頭に粉雪を巻き上げながらやって来ました。
よく見ると、後ろの3両は、車体の帯の色が違いますね。

731系電車 キハ201系 気動車

731系電車+キハ201系気動車

なんと、この963M、後ろの3両は電車ではなく気動車の「キハ201系」。
普通、電車と気動車は一緒に走ることは出来ませんが、北海道の731系電車はキハ201系気動車と共に運転することを前提に開発された車両なんです。
それというのも、函館本線の電化区間は小樽までで、小樽以南は非電化のまま。
そこで小樽以南から札幌方面への直通ニーズに応えながら、電車のようにきびきびと走れる気動車が求められてキハ201系が生まれ、毎日協調運転が行われているんですね。
この列車も倶知安から小樽まではキハ201系単独で「963D」として運行され、小樽で731系電車を併結して「963M」に、札幌で気動車を切り離して、電車単独で苫小牧まで行きます。

かにめし

かにめし

銭函は、北海道の鉄道開通とともに誕生した駅の1つ。
長年、この駅で販売された「酒まんぢう」は、北海道における駅弁のルーツの1つとされます。
現在は芦別の業者さんが復刻したものが、小樽駅の売店「北海道四季彩館」にありますが、その四季彩館で販売されている小樽駅弁の中から、今回は「かにめし」(980円)をご紹介。
小樽の駅弁は、「小樽駅構内立売商会」が製造しています。

かにめし

かにめし

掛け紙を外し、ふたを開けると、フワッと広がる磯の香りが漂ってきます。
「かにめし」は、ちょうど映画「駅 STATION」が公開された年・昭和56(1981)年の発売。
小樽では随一のロングセラー駅弁です。
秘伝のタレで1時間ほどコトコトとズワイガニの身を煮込んで作られていて、これに椎茸や錦糸玉子、グリンピースがあしらわれた“ザ・北海道のかにめし”です。

かにめし

かにめし

「小樽駅構内立売商会」によりますと、最近は「かにめし」と聞くと、いわゆる海鮮丼に載っているようなカニをイメージされる方が多いそうで、この煮込まれたカニを見た時に、「???」となってしまう方もいるといいます。
一方、最近はズワイガニの高騰のため、カニを安定的に確保するのがとても難しくなっているそうで、実は調理に大いに苦心されているといいます。
それというのも、同じズワイガニでも産地によって、カニの繊維の太さが全く違うのだそう。
しかし、「かにめし」を買い求める方は、“いつもの味”を求めます。
そこで味付けの仕方を工夫しながら、違和感のないように仕上げているのだそうです。
このほとんど人に見えない努力があっての「980円」はスゴイ!
だから、カニの身を噛みしめた時のじんわりした味わいが心に沁みるのです。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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