カンボジアで50年にもおよぶ学園都市構想に挑む日本人

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カンボジアで50年にもおよぶ学園都市構想に挑む日本人

国内外で活躍するNGOやNPO、社会起業家の活動にスポットを当て、その活動を応援・紹介するニッポン放送の番組『阿部亮のNGO世界一周!』。
12月5日(火)の放送では、パーソリティの阿部亮が起業家の猪塚武氏にカンボジアのリゾート地で立ち上げた学園都市構想についてインタビューした。

カンボジアの首都プノンペンから車でおよそ2時間半のところにあるキリロム国立公園。猪塚氏は大自然に囲まれた人気の観光地に最先端のIT技術を学ぶことができるキリロム工科大学を中心とした学園都市を作っている。
元はWebのアクセス解析技術のトップ企業 デジタルフォレストの創業者でもある起業家・猪塚氏が、なぜ今カンボジアへ?

猪塚:もともと政治家志望で、社会問題を考える機会が多かったんです。何年もアジアを回っていて、カンボジアのひとたちが欲しがっているのは、高度な教育だなと感じました。日本のたくさんの方々の寄付によって小学校がいくつも建設されて、初等教育の環境は整ったのですが、その先の出口、高等教育にまでうまく繋がっていない。そこで大学を中心とした学園都市を作ることを考えました。

阿部:なぜカンボジアのリゾート地・キリロム国立公園の中に作ったんでしょうか?

猪塚:始まりはキリロムとエコツーリズムで契約したことでした。現在のカンボジアにとってエコツーリズム、つまり環境の保全と持続可能性を考慮するニーズはゼロだったんです。この土地のいい環境を保全する意味も込めて、大学を作って、リゾートを作って、大学中心の形で街として発展していって、それがカンボジアの発展とリンクして、やがてここが国際都市になってカンボジアの財産となっていく。50年ほどの時間をかけてストーリーが出来上がれば、地元のひとにも受入れてもらえるだろうと考えました。

国立公園という大自然に囲まれた素晴らしい環境での勉学。
ここに作られたキリロム工科大学は、どんな特色を持つ大学なのか。

猪塚:最先端のIT教育を目指していて、 ITの先生は全員インド人です。英語の先生はフィリピンというような形で、オーナーは日本人ですけど、世界中のベストメンバーを集めて教育を行っています。

阿部:環境として英語を使わないとコミュニケーションできない状況の中で、生徒や先生がみんな一緒に暮らしていると、おのずと英語レベルも上がって、世界で戦える英語を習得していくことができる仕組みになっていますね、

猪塚:全寮制というのがキーポイントになっています。2000年頃までITの世界は日本が世界を席巻する勢いでしたが、一気に失速してしまいました。オープンイノベーションの波に乗れなかったことが原因です。オープンイノベーションというは英語が基本です。その英語を使って世界中のひととコラボしながらものを作っていく。キリロム工科大学の全寮制というシステムは、異業種・異文化のひとたちとの革新的な技術協力を行うトレーニングのための最適なプラットフォーム、基盤になっていくだろうと考えています。

阿部:さらに魅力的なのが、今、世界で戦っている民間企業から実際の案件がオーダーされている。それを生徒達がインターンの立場で実際に納品するまでが授業のカリキュラムに組み込まれている、その仕組みもまたすごい。

猪塚:ベンチャー企業を経営していて、日本の大学に対して不満があったんです。
日本の会社には新入社員教育があります。でもあれは大学でちゃんと教育して卒業させていないから、実際の仕事の現場で必要なスキルや教育が改めて必要になるわけです。本来ならば新人教育なんていらないところまで大学は責任を持つべきだと考えます。大学卒なのだから、他のスタッフに教えられるくらいまでは大学でやっておくべきだという判断です。

阿部:そのためには優秀な生徒集めが必要になってきます。募集の方法は?

猪塚: 我々のところには、カンボジアの上位1%の学生が入ってきています。基本的には口コミベースですがFacebookで試験実施の告知を行っていまして、倍率は20倍くらいになっています。

最先端を学ぶことのできる授業は無料。理想をかなえた経営システムは?

猪塚:そもそも、採用する企業は優秀な学生が欲しいわけで、決してお金持ちのファミリーの学生が欲しいわけじゃない。だからお金のフィルターで大学が学生をブロックするというのは問題がある。そこで授業料は取らない、これは最初に決めたことでした。
では実際にかかる費用はどこから捻出するか。学生の就職先からと考えたのですが、全額はさすがに難しいので、半分は企業からの援助、残り半分は学生が大学でインターンとして行う経済活動で賄おうと考えました。
その結果、カンボジア国内向けには、授業料は一切もらわない、その代わり卒業後の4年間、援助してもらった企業で働いてくださいというモデルを完成させました。奨学金を出してくれる企業は複数あって、そのマッチングは3年生の末までに行います。いくつかの選択肢の中から企業を選べる形です。我が校は就職にはかなり強いと思います。

阿部:実際にキリロムのビレッジの中には学生が100人弱、ほかに学生たちの暮らしを支えたり、キリロムというリゾートを支えるスタッフが常時200人くらい。すでに村を超えて街の規模に近づいていますね。

猪塚:目標人数が10万人なので、まだ村にも至っていない道半ばという気持ちです。でも外国人起業家として、常にカンボジア人の応援という形で、急速に大きくなれるような仕掛け作りに、これからもどんどん取り組んでいきたいと思っています。

※猪塚武氏は、来年1月3日(水)11時~13時「ニッポン放送新春スペシャル 阿部亮のNGO 世界一周!~世界を変える日本の起業家たち」にも出演されます。こちらもぜひお聴きください。

 

(お知らせ)
『阿部亮のNGO世界一周!』、次回は今夜12月19日(火)21:30から。
日光市にある認定NPO法人『だいじょうぶ』が運営する「yourplaceひだまり」で取材した模様をお届けします。生活困窮家庭や、シングル家庭、または子どもへの虐待が起こりうる家庭と密接に関わりながら、子どもと親が安心して暮らせるようサポートしているNPO団体『だいじょうぶ』。yourplaceひだまりの役目や伝えたい思いを代表の畠山さん、yourplaceひだまりのリーダー金子さんに伺いました。
育児中のお母さんにもメッセージいただいています。ぜひお聴きください。

『阿部亮のNGO世界一周!』12月19日(火)21:30放送のradikoのリンクはこちら

『阿部亮のNGO世界一周!』
FM93AM1242ニッポン放送 毎週火曜日 21:30-21:50
番組HPのURL https://www.1242.com/program/aberyo/
番組YouTubeページ(過去の放送のなかから選抜された放送回をアップしています)
https://www.youtube.com/channel/UCjxPoNub9xtY9oM8OpOPx7w

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