旭川駅「厚切り牛たん牛めし」(1,380円)~北海道観光列車モニターツアーの旅③

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

旭川駅「厚切り牛たん牛めし」(1,380円)~北海道観光列車モニターツアーの旅③

キハ183系・ノースレインボーエクスプレス、宗谷本線・美深駅

北海道庁主催の「北海道観光列車動向調査モニターツアー」。
筆者は10/28~29にかけて行われた第1弾の「大地の恵み体感 1泊2日最北への旅路・宗谷本線」のBコース(行き・バス、帰り・列車)に参加してきました。
特急で3時間半ほどの稚内~旭川間を、およそ9時間かけるのんびり鉄道旅。
その3回シリーズのラストは、宗谷本線南部・美深(びふか)から終着・旭川を目指します。

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美幸線展示室

美深駅からは、昭和60(1985)年まで、国鉄美幸線(びこうせん)が分岐していました。
「美」深とオホーツク海沿岸の北見枝「幸」を結ぶことを目指して作られた「美幸線」。
昭和50年代には「日本一の赤字線」と呼ばれたため、その不名誉な称号からの脱出を目指し、美深町が東京・銀座で記念切符を販売するなど、宣伝活動も行いましたがあえなく廃止に。
美しい名前の路線でしたが、美しいものは儚いのか、全線開業はなりませんでした。

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名寄市北国博物館前「キマロキ」

次の停車駅・名寄の目玉は、鉄道好きならご存知「キマロキ」!
「キマロキ」とは機関車の「キ」、マックレー車の「マ」、ロータリー車の「ロ」、機関車の「キ」の順に連結された、線路の雪を取り除くための列車のことです。
昔の「キマロキ」編成が残るのは、全国でも名寄だけとのことですが、既に冬籠り中・・・。

ちなみに、コレがあるのは、平成元(1989)年まで名寄駅から分岐していた旧・名寄本線の線路上なんだそうです。
雪のシーズンに雪にゆかりのある車両が観られないのは少々残念ですが、来訪者と保存・維持のコストを天秤にかけると致し方無いところか。
素人考えでは、真冬の晴れた日に有料で冬囲いを外し、“雪原のキマロキ撮影会”とかやったら、厳寒期の集客にも繋がりそうですし、観光列車の取り組みと合わせたら面白そうですが・・・。

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キハ183系を抜くキハ40形・快速「なよろ8号」、宗谷本線・和寒駅

和寒(わっさむ)では51分の大休止。
臨時列車の宿命は、「定期列車の邪魔をしない」ということ。
宗谷本線の名寄以南は毎時1本程度の列車が運行されているため、下り列車との行き違いや優等列車の追い抜きのために、長時間停車を強いられます。
キハ183系が、キハ40形単行の快速「なよろ8号」に抜かれるのも珍しい風景です。

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キハ183系・ノースレインボーエクスプレス、宗谷本線・塩狩駅

さらに10分走った所にある峠の駅・塩狩(しおかり)でも、54分の長時間停車。
「天塩国」と「石狩国」の境にある峠であることから「塩狩峠」と呼ばれています。
明治42(1909)年にココで起きた鉄道事故を元に描かれた作家・三浦綾子氏の小説「塩狩峠」でも知られ、50分あまりの停車時間は、隣接する「塩狩峠記念館」への訪問時間に充てられます。
この記念館は、三浦綾子氏の旧宅を復元したものとなっています。

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キハ261系・特急「サロベツ4号」とキハ183系・ノースレインボーエクスプレス

この間に、稚内を13:01に発ってきた特急「サロベツ4号」にも抜かれます。
“特急”同士の追い抜きというのも珍しい風景。
本数の少ない宗谷本線の旅では、列車のすれ違いなどがあるだけで、もうイベント状態。
列車がやって来るたび盛り上がる様子に、今まで鉄道写真を撮ったことがなかった人の中には「撮り鉄」に目覚めてしまった方もいたようです。

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塩狩峠饅頭の立売り

塩狩駅にも立売りの方が出てくれました!
旭川の駅弁屋さんから立売りケースを借りて、ツアー限定の「塩狩峠饅頭」(700円)を販売。
「塩狩峠」の標高は274mですので、そんなに高い峠ではありませんが、やはり峠の駅には、甘い食べものがよく似合います。
しかも、宗谷本線のキハ40がえっちらおっちら峠越えする様子は、なかなか風情があるモノ。
塩狩峠記念館の開館中、日中の列車でやってくれたら、新たな魅力になるように思います。

旭川駅「厚切り牛たん牛めし」(1,380円)~北海道観光列車モニターツアーの旅③

塩狩峠饅頭

さらに嬉しかったのが、この「塩狩峠饅頭」には、Bコース限定版の掛け紙が用意されたこと。
今回のモニターツアー・Aコースの皆さんが、前日に塩狩駅で停まった際のノースレインボーエクスプレスの画像を掛け紙としてくれたんです。
「おもてなし」の中にも、こういった機敏さがあると、嬉しさも増すというもの。
ちなみに中味の饅頭は、旭川市内のお店のものでした。

立売りを力餅ではなく饅頭とした理由が、ツアー中は今一つ分からなかったのですが、後から、小説「塩狩峠」を読み返すと、殉職した鉄道員の遺品に「名寄まんじゅう」があったのですね。
その意味では、塩狩峠で「饅頭」を販売する意義はあるというもの。
饅頭の甘みと、安全に鉄道旅が出来る幸せを噛みしめながら、じんわり心に沁みる峠越え。
ストーリー性のある物は打ち上げ花火に終わらせず、継続的に仕掛けてもいいのでは!?

厚切り牛たん牛めし

厚切り牛たん牛めし

そんな塩狩峠の饅頭立ち売りにも協力して下さった旭川の駅弁屋さん「旭川駅立売商会」による今年(2017年)10月発売の新作駅弁を、ココでご紹介しておきましょう。
その名も「厚切り牛たん牛めし」(1,380円)。
牛めし駅弁はもちろん、最近は牛たん駅弁も各地で見かけますが、「牛たん&牛めし」のダブル牛肉駅弁というのは、ちょっと珍しい存在かと思います。

旭川駅「厚切り牛たん牛めし」(1,380円)~北海道観光列車モニターツアーの旅③

厚切り牛たん牛めし

醤油ご飯(北海道産米)
牛たん煮
牛肉煮
茹でとうもろこし
茹で人参
菜の花大根漬

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厚切り牛たん牛めし

旭川最古の醤油屋さんによる「キッコーニホン醤油」。
このキッコーニホン醤油でコトコト煮込んだ牛たんと牛肉が、醤油ご飯の上に載った駅弁。
牛たんを中心にペッパーが効いていて、食欲がそそられます。
ただ、ベースが醤油なので、牛たん・牛めしのダブルでも、サッパリとした食感なのが特徴。
男性はもちろん、女性の方もどんどん箸が進みそうな肉駅弁だと思います。

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比布町のゆるキャラ・スノーベリー(いちごちゃん)と筆者

塩狩峠を下り、最後の途中停車駅「比布(ぴっぷ)」でも地元の皆さんの熱い歓迎。
宗谷本線の比布駅は、去年の「駅弁膝栗毛」でもご紹介していますね。
朝8時半過ぎに稚内を出発し、旭川にはすっかり日も暮れた午後5時半前の到着。
ノースレインボーエクスプレスに揺られておよそ260kmを9時間、表定速度・時速27kmあまりののんびり旅を経て、1泊2日のモニターツアー・第1弾は無事終了と相成った訳です。

旭川駅「厚切り牛たん牛めし」(1,380円)~北海道観光列車モニターツアーの旅③

キハ261系・特急「宗谷」、宗谷本線・抜海~南稚内間

私自身、およそ7年ぶりの全線走破となった宗谷本線。
10月末のモニターツアーでは稚内駅で販売されている駅弁購入が叶わなかったので、結果的に1か月後の11月末にも再訪し、宗谷本線の“日常と非日常”、両方を見ることが出来ました。


●“しくじり”が許されない宗谷本線の旅

日常の宗谷本線は、名寄以北で特急3往復、普通3往復の6本の列車しかありません。
1本の列車に乗れないと、全ての旅程が破たんする、“しくじり”が許されない旅があります。
区間によっては、特急と普通の時間が近すぎて、実質、「使える列車」が特急しかありません。
なのに、特急停車駅での路線バスとの接続が考慮されていないこともしばしば・・・。
来るまでのハードルが高く、来てからも高いハードルがあるようでは、スムースな交通に慣れている都市部の人を呼び込むことは難しいと言わざるを得ません。
また、せっかくLCCと組んだ「バニラエアきた北海道フリーパス」(12,500円、4日間有効)といった魅力的な商品もあるのに、首都圏の多くの地域から利用可能な成田9時台発の便でも、わずか15分差で旭川13:35発の「サロベツ1号」に間に合わず、稚内着がほぼ午前様に・・・。
だから、私のような酔狂な人をのぞいて、新千歳でレンタカーを借りてしまうんですよね。
これは宗谷本線に限ったことではありませんが、最低限、鉄道と路線バス、時には飛行機との乗り継ぎを考えたダイヤ作りをしてほしいものです。


●定期列車が少ないから「観光列車」は必須!

定期列車が使いにくい現状だからこそ、北海道の「観光列車」の存在は必須ともいえます。
私自身はほぼ季節に1回、北海道に行きますが、多くの方は数年に1度、あるいは生涯に1度しかない北海道旅行でしょう。
その大切な時間を鉄道で過ごしてもらうなら、オイシイ所が1つのパッケージになった今回のような「観光列車」が無いことには、鉄道が旅の選択肢に入ってこないのではないかと思います。
車両としてノースレインボーエクスプレスも悪くありませんが、段差が多いのが気になりました。
乗ったり下りたりを繰り返すことを考えれば、フラットなバリアフリーの車両だと有難いものです。

北海道には鉄道によって発展してきた地域が多いだけに、ツアー等を通じて、沿線の皆さんの鉄道への思いはよく伝わってきましたし、潜在的な魅力も豊かなことは十分感じられました。
実際に乗れたら、間違いなくファンが多くなる北海道の鉄道。
そのきっかけとして「観光列車」は、なるべく早く定期的な実現にこぎつけてほしいものです。
観光列車で人を引き付け、定期列車をはじめ公共交通全体のクオリティを上げていく・・・その「両輪」が再生に向け、希望のレールが繋がるかどうか、カギを握るのではないでしょうか。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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