豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

373系電車・急行「飯田線秘境駅号」

毎年春と秋を中心に、飯田線の豊橋~飯田間で運行される臨時急行「飯田線秘境駅号」。
秘境駅とは、山中などにあり、駅周辺に人家や人の気配が全く感じられず、鉄道以外での到着が難しい駅のことで、鉄道愛好家の牛山隆信氏がウェブで秘境駅ランキングを発表されています。
そんな飯田線にある「秘境駅」に停まりながら、プチ冒険気分を楽しめてしまうのがこの列車。
373系電車による貴重な「急行」として運行されているのも特徴です。(全車指定席)
(参考:飯田線秘境7駅・JR東海のパンフレットから)

下りの「飯田線秘境駅号」は、始発駅・豊橋を、飯田線を支える豊橋運輸区の皆さんに見送られて、定刻通り9:50に出発、終着・飯田まで5時間40分の旅となります。
最初の停車駅・新城(しんしろ)で、同じ373系の特急「伊那路1号」を先に通します。
車内販売は無いので、本来は乗車前に豊橋などで駅弁を仕入れていくのが基本ですが、もしも、買い忘れてしまった場合は、下り列車では新城の駅舎内で地元の肉屋さんがジビエのハンバーガーなどを販売してくれますので、有効に活用したいものです。

豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

大嵐駅

最初の秘境駅は、17分停車の大嵐(おおぞれ)。
駅は静岡県浜松市にありますが、実質的に愛知県豊根村(旧・富山村)の玄関口です。
今も飯田線では浜松市の水窪(みさくぼ)から郵便配達の方が列車に乗って大嵐に向かう様子が見られるほか、以前、私自身も始発の飯田線に乗車した時、この駅で富山地区の朝刊が下されていくのを目撃したことがあります。
この日は富山地区の皆さんが、地元の幸やぜんざい(美味!)などを販売して下さいました。

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大嵐駅近く、静岡・愛知県境の天竜川

大嵐駅から少し歩くと、静岡・愛知県境に架かる橋から天竜川を眺めることが出来ました。
訪れた日は好天に恵まれ、紅葉シーズンの始まりを存分に満喫!
この辺りは、有名な佐久間ダムの上流に当たり、ダム湖のような景観です。
飯田線の佐久間~大嵐間は、元々この天竜川伝いに線路が敷かれていましたが、ダムによって水没することから、長いトンネルが掘られ、東側の水窪を通るルートになった歴史があります。

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小和田駅付近の天竜川

「飯田線秘境駅号」前半最大のヤマ場が、20分停車の小和田(こわだ)駅。
愛知・静岡・長野の3県境にある駅で、手前が静岡、左側が愛知、右奥が長野となっています。
日本有数の秘境駅の1つで、私も何度か訪れましたが、ココまで晴天に恵まれたのは初めて!
お陰で、天竜川の河畔からは、何とも美しい水鏡を眺めることが出来ました。
ちなみに周囲には、廃屋の製茶工場や放置された三輪のミゼットなどがあり、秘境感満載です。

豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

平岡駅で販売された「中井侍茶」

次の中井侍(なかいさむらい)からは、長野県に入ります。
10分停車の長野県最南端の駅・中井侍の名物は、斜面にへばりつくような民家と茶畑!
中井侍茶」は、天竜川から立ち上がる朝霧をいっぱい受けて育まれる、知る人ぞ知る銘茶です。
生産者と茶畑の立地から、「○○さんのお茶」としてブランド化しているのも、面白い取り組み!
この日は、途中の平岡駅で「中井侍茶」の販売も行われ、多くの方が買い求めていました。

豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

龍泉閣

中井侍、伊那小沢と続けて停まった後、長野県天龍村の代表駅・平岡では、40分の大休止。
「飯田線秘境駅号」は急行なのになんと!後続の普通列車・岡谷行に抜かれてしまいます。
平岡駅は「温泉」がある駅としても知られており、40分もあれば温泉好きには十分な時間。
駅舎併設の「龍泉閣」には29.2℃、ph9.7、成分総計248.9mg/kgのアルカリ性単純温泉が、近くの「天龍温泉」から運ばれており、加温循環ながらも、プチ温泉気分が楽しめるのです。

豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

為栗駅付近の天竜川

平岡を出ると、これまた秘境駅の「為栗」に14分停車。
「為栗」は、日本有数の難読駅名としても有名・・・為栗で「してぐり」と読みます。
駅からは、吊り橋の天竜橋が1本だけ天竜川の対岸に架かっています。
停車時間を使って乗客の皆さんは、吊り橋の揺れに驚きながら、その美しい景色を堪能。
実はこの辺りが、飯田線中部随一の絶景区間となります。

豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

田本駅停車中の「飯田線秘境駅号」

そして後半のハイライトが、16分停車の田本駅(長野県泰阜村)。
崖にへばりつくような線路があって、その崖とのすき間に狭い幅のホームがあるだけ。
しかも、駅からは獣道のような細い道が伸びており、集落までは歩いて20分とか!?

ただ、個人的に何となく既視感があるのは、私自身が同じく東海エリアにある身延線の沼久保駅(静岡県富士宮市)を使っていたからかもしれません。
25年ほど前に並行する県道が現在のルートになるまでは、富士川にへばりつく県道と、途中からこの田本駅のような山道を、ショートカットして、駅までよく歩いていたものです。
その意味では、都会の方から見れば、このような駅は「秘境」なのかもしれませんが、地元の方にとっては鉄道開通以来の「日常」なんですよね。
そんな山間地で暮らす方の「日常」を、ほんの少し追体験させてもらうのが「飯田線秘境駅号」ともいえましょう。

豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

飯田線秘境駅オリジナル弁当

そんな「飯田線秘境駅号」にピッタリの駅弁が、豊橋駅弁・壺屋弁当部にはあります。
ズバリ「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)、通称“秘境駅弁当”です。
掛け紙のセンターには、「飯田線秘境駅号」の373系。
そして天竜川をバックに、「秘境駅」とされる為栗、中井侍、小和田、田本、金野、千代の各駅が、描かれて、紐で綴じられています。

豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

飯田線秘境駅オリジナル弁当

飯田線の沿線をイメージしたとされる駅弁です。
ご飯のバリエーションが豊富で、白飯のほか、山間の奥三河、南信をイメージしたか山菜おこわ、これに豊橋名物の稲荷寿し、海苔巻きが加わります。
みそカツ、エビチリソースなどは愛知らしく、うずらの卵の燻製は“うずら推し”の豊橋らしい感じ。
椎茸の肉詰めは遠州・南信らしさがありますし、ワカサギの甘露煮は諏訪湖でしょうか。
また、柿の形のあんこ餅が入っているのは、「市田柿」が想起されますよね。

豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

飯田線秘境駅オリジナル弁当

この駅弁、「飯田線秘境駅号」に乗車する時に、豊橋の売店に無くても安心な場合があります。
実は「飯田線秘境駅号」はJR東海ツアーズの旅行商品として多くの席が販売されることも多くて、旅行商品には、この「秘境駅弁当付き」で販売されるものがあるんですね。
ですので、秘境駅号で確実に秘境駅弁当を食べたい時は、まずツアーを押さえるのがお薦め。
もちろん、秘境駅弁当自体は、運行シーズンではない時でも、お目にかかれる場合もあります。
豊橋駅「飯田線秘境駅オリジナル弁当」(1,030円)~乗って楽しい「飯田線秘境駅号」の旅!

私自身、初めて飯田線に乗ったのは、JR東海が1周年の時に、東海道線~身延線~中央東線~飯田線~東海道線と、381系電車で1周運行した「ふるさと号」という臨時の団体列車でした。
まだ中学1年生でしたが、この天竜川沿いの景色の美しさは今も鮮明に憶えています。
それ以来、飯田線に魅せられてしまい、何度となく足を運ぶようになりました。

飯田線の定期列車である特急「伊那路」と同じ373系電車が使われている「飯田線秘境駅号」ですが、中味は思いのほか、手作り感が溢れています。
特に車掌さんの沿線のアナウンスはよく練られていて、真面目な中にも時に自虐的ネタを交えて、思わずクスッとなるネタを仕込んでいるので、よく聴いておくのがお薦めです。

あと、秘境駅めぐりということで、秘境の裏には“危険”が伴うことも事実。
このため、秘境駅周辺の散策を楽しむ際も、要所に関係者の方を配置して、乗り遅れの無いよう、発車時刻の札を掲げたり、狭い場所を歩く場合は予め人数制限をかけるなど、安全に細心の注意が払われているのも大きな特徴です。
実は運行に、かなり多くの方が携わっている「飯田線秘境駅号」。
この手間があるから、多くの方が、安全・安心して「秘境駅」を訪問出来るという訳なんですね。

加えて、新城、大嵐、平岡などでは、地元の皆さんとの触れ合いも楽しめ、意外にあっという間の豊橋~飯田間・5時間40分。
また、次の運行機会を楽しみに待つことに致しましょう。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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