シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」(vol.2「丸政」編②)~小淵沢駅「直火炊き山菜とり釜めし」(1,000円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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ライター望月が駅弁屋さんの厨房を訪問、駅弁作りの現場に迫っていくシリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」。
第2弾は中央本線と小海線の接続駅・小淵沢の駅弁屋さん「丸政(まるまさ)」を訪ねています。
中央本線・高尾以西の普通列車の主力は、東海道線や高崎線から転属してきたステンレスの211系電車で、通称「長野色」と呼ばれる帯を巻いてます。
一方、小海線の顔ともいえるのが、世界初の営業用ハイブリッド車両・キハE200形。
鉄道のハイブリッド車は、発電用の「ディーゼルエンジン」と「蓄電池」を使って、それぞれの「電気」をエネルギーにして動く車両です。

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小海線の始発駅・小淵沢を拠点に駅弁を製造、販売する「丸政」もある意味「ハイブリッド」な駅弁屋さん。
「元気甲斐」「高原野菜とカツの弁当」をはじめとした伝統駅弁と、タイムリーに投入される新商品が”ハイブリッドパワー”でお店を支えています。
今回は「丸政」が去年12月に投入した新商品「直火炊き山菜とり釜めし」が出来るまでに密着します。
実はこの釜めし「45分前」までの予約が必須な予約制の駅弁。(9:00~16:00の間、電話:0551-36-2521)
「45分」かかるのは、ホントに駅弁の釜を使って生米から炊き上げる”ガチの”釜めしだからだというんです。

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駅弁各社には多くの「釜めし」駅弁がありますが、車内販売への対応などからプラスチック釜の「釜めし」が多いもの。
仮に陶器製の釜を使っていても、実際にその釜を使って直火で炊き上げている釜めしを見ることはほとんどありません。
その中にあって「直火炊き山菜とり釜めし」は注文を受けたところで「生米」と鶏ガラスープなどが入った釜と下ごしらえされた具材が用意されました。
確かにコレは「生米」からのスタート。
ちょっと前の某・総選挙風に言えば”神様に誓ってガチ”です。

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釜めしを「直火炊き」にするにあたって新たに導入されたのが「10個同時炊き」のコンロ。
公式発表で「1度の調理で10個まで」「10個以上注文の場合は1時間ほど時間がかかる」というのは、こんな理由があったんですね。
本当は駅弁大会などの催事等で「釜めし」を出す場合も「直火炊き」にしたいのが本音だそう。
ただ、催事会場によっては「火」を使うことが禁じられていることも多いといいます。
このため電気釜を使わざるを得ないこともあり、別に「電気釜」も用意されていました。。

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機械が結構静かだったので、釜の下部をのぞき込むと確かに「直火炊き」!

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10分ほどすると釜から「湯気」が立ち上ってきました。
やっぱり食べ物でも温泉でも「湯気」ってテンションがアガりますよね!

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20分ほどで炊きあがり、蒸らし終わったところで、いよいよ盛り付けへ・・・。
まずは炊きあがったご飯の上に野沢菜と錦糸卵を敷きつめていきます。
「丸政」では定番の鶏肉・甲斐味鶏の照り焼きも見えますね。

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その甲斐味鶏の照り焼きを2切れ載せると、手際よく椎茸、ぜんまい、ふき、竹の子、しめじ、花人参、栗が載せられていきました。
手早い盛り付けも職人技。

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まずは盛り付け完了、ココで一旦ふたをして、再び10分ほど蒸らします。

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蒸らし上がったところで、まだ温かい釜に掛け紙をかけていきます。
これもまたホントにあっという間!
やっぱり調製って「時間」も勝負のうち。

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キュッと蝶結びが決まったところで「直火炊き山菜とり釜めし」の完成!
注文を受けてからおよそ30分、これにかつサンド同様”のりしろ”の15分が加わっての「45分」という訳です。
ココで「望月さんも掛け紙・・・やってみます?」の声が。
お言葉に甘えて、掛け紙をかけるのにチャレンジしたのですが・・・。

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コレが「望月作」の釜めしの掛け紙ですが、同じ紙と同じ紐で同じ釜に掛けているのに・・・どうもイマイチ。
逆に言えば、ちゃんと釜のセンターで「蝶結び」が決まっていないと、絶対お客さんに手に取ってもらえないってことなんですね。
つまり駅弁って「掛け紙」のかけ方一つで『見た目の美味しさ』が全く変わってしまう・・・コレは気付いていなかった!!!
「掛け紙ととじ紐のある駅弁」って最近はめっきり減っていますが、実はコレ、手間のかかる「職人技」。
「掛け紙ってレトロな雰囲気がイイなぁ」とは思っていましたが、これからはもっと「技」に敬意を払って紐をほどきたいと思います。

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改めて紐をほどき、掛け紙を外して、釜のふたを開けますと・・・直火炊きならではの香ばしい匂い!
そして、具の下のご飯を掘り出せば、ちゃんと「おこげ」も!!
これが「ガチの釜めし」というものですよ!!!
「駅弁=釜めし」のイメージの人も多いと思いますし、群馬のほうの某「釜めし」を食べてきた人も多いと思います。
でも、同じ価格帯で「直火炊きの釜めし駅弁」を食べられるのは、小淵沢が東日本で恐らく唯一ではないでしょうか。

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中央東線を走る211系電車の中には、昔ながらのボックスシートがある編成も・・・。
せっかく駅弁の「釜めし」を食べるなら、バッチリ予約して釜の温もりを感じながら「おこげ」を味わうだけでも、素晴らしい旅の思い出になるハズ。
新しい直火炊きの機械で静かに燃える炎こそ、駅弁文化への「丸政」さんのアツイ思い。
釜の底に黒くこびりついたおこげは、その結晶のように感じながら美味しくいただきました。
次回は、その「丸政」の社長さんにお話を伺います。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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