トランプ大統領はなぜスティーブン・バノン氏を大切にするのか?

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11/17(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①

クビにしたはずなのに
6:32~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

スティーブ・バノン

2017年11月15日、東京都内で講演するスティーブ・バノン氏 写真提供:産経新聞社

前首席戦略官のバノン氏の実像とは?

今年8月に大統領首席戦略官及び上級顧問を辞任したスティーブン・バノン氏は、現在もトランプ大統領と頻繁にコンタクトをとっていると言う。元外交官の宮家邦彦が、未だトランプ大統領がバノン氏と関わっている理由やアメリカの格差社会について解説。

高嶋)日本にやって来た前の首席戦略官というアメリカ政府のバノンさん、あの怪しい感じのオヤジは今でも定期的に大統領と話をしているということです。様々な理由があって一応クビにはしましたが、今回、日本でいくつものメディアのインタビューに応じています。に宮家さんはバノンさんをどのように捉えていますか?

宮家)この人は一種の理論家であり革命家、そして破壊者でもあると思います。彼の頭の中にあるのは、白人の国であるはずだったアメリカがどんどん変わっていってしまって、その中で今までアメリカ社会を支えていた白人労働者層、白人男性、低学歴のブルーカラー、この人たちが忘れ去られているのだということです。そして民主党がマイノリティの少数派のこととかリベラルなことばかり言っていて、そういった本当にアメリカを支えてきた人たちがどうも無視されている。「これはおかしい」という形で彼なりの“アメリカ改造計画”を持っていて、ものすごく頭の良い人ですから、それがうまく人々の魂を揺さぶったのだと思います。
そういう意味では彼の周りにおそらく数千万のそういった票があって、そしてそれを上手く使ってトランプさんは当選したと思っている。だからトランプさんは彼を切ることができない。なぜならトランプさんは3年後に再選したいから。
ということはバノンさんを側に置いておきたいのだけど、この人は残念ながら革命家であって行政官でも実務家でも無いわけで。「あることみんなぶっ壊せ」という話ですから「国際主義なんてクソくらえ。アメリカ第一なんだ。2国間でやるんだ」というトランプ主義そのものなのですよ。そんなのホワイトハウスにいたら仕事になりませんから。

高嶋)つまりトランプさんの主張していることの後ろに影のようにずっと付いているのはバノンさんであると。彼が言わせている部分が大きいと。

宮家)というより言わせているのでしょうね。

今までアメリカを支えて来た低学歴の白人中年層の“絶望死”が増えている

高嶋)今日の新聞にノーベル経済学賞を獲ったアンガス・ディートンさんという人が「低学歴層広がる。アメリカのいわゆる高卒以下の人たちに広がる“絶望死”」と言っています。仕事にも家庭にもいろいろ絶望して薬物に溺れて自殺をするという人が多くて、社会からの疎外感が大変大きいものがある。そんなところをトランプさんは救おうとしたと。

宮家)この記事によると「米国で低学歴の白人中年層の死亡率」と書いてあるわけですね。まさに今申し上げたように、今までアメリカを支えて来たつもりなのに、いつのまにかアフリカ系とかヒスパニック系がどんどん台頭している。「俺たちは一体どうなってしまうんだ」という絶望感ですよね。

高嶋)薄気味悪いのが「格差は日本のような国にも広がっている。多くの人が疎外感を抱く、世界の行く末を懸念している」とこの学者は語っているのですね。

宮家)それは正しいとは思いますが、アメリカの格差と日本の格差はまるで違いますから、向こうは無茶苦茶に大きいですからね。その点まだ日本の方が健全だとは思うけれども、その日本ですら格差が広がっているのは事実だと思います。

高嶋)最初におっしゃったバノンさんを大事にする理由は“再選したいから”だと。それで来年中間選挙があります。その2年後にまた大統領選挙が来ますけど、これは順調に進んでいるのですか?

宮家)支持率が30%近くで史上最低だとか言っていますが、考えてみたら30%近くもあるのですよ、こんな無茶苦茶をやっているのに。ということはやはり強固な支持層がまだ残っている。それは先程申し上げた3千万か4千万か分からないけども、その人たちの支持が繋ぎ止められる限りにおいてはまだ再選のチャンスはあると思います。

高嶋)ということはトランプさんの路線は絶対に変わらないということですね。

宮家)残念ですけどね。

高嶋ひでたけのあさラジ!
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