西前頭1・貴景勝 日馬富士暴行事件で揺れる中、今場所2個目の金星

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貴景勝

【大相撲十一月場所】二日目、○貴景勝(おしだし)日馬富士× 支度部屋、貴景勝=2017年11月13日福岡国際センター 写真提供:産経新聞社

兄弟子、貴ノ岩が日馬富士から暴行を受けたとされる問題は今、国民的な関心事。連日、貴乃花部屋へも多くのマスコミが来て、とにかくピリピリとしたムードに包まれています。そんな状況にもかかわらず、貴景勝は今場所、2つめの金星をあげました。対戦した、稀勢の里は幕内歴代8位タイの701勝。師匠の貴乃花と並んでいました。これから更新されることは確実ですが、弟子がそれを阻止。昨日の一番では、意地を感じました。強い絆で結ばれているといっても過言ではないでしょう。

プロの力士になることを決意したのは小学生。4年生から3年連続で貴乃花部屋が行った「相撲教室キッズクラブ」で親方から手取り足取りで直接指導を受けました。それまではやんちゃな面が目立っていましたが、自身が「相撲をやる」と言い出した。兵庫・芦屋出身といえば、セレブのイメージが浮かびます。スポットを浴びると、そのあたりの質問が多い。しかし、

「芦屋にも、いろいろあります」

と笑いながら、サラリとかわします。入門時から、親方から徹底されたのは、「絶対に変化をするな」、「ひたすら、前へ出る」、「突っ張っていけ」の3つでした。

そして、「毎日、質の高い相撲をとりたい」と精進。今場所は「2ケタ、勝ちたい」が目標です。貴乃花部屋では、土俵の鬼と言われた初代若乃花からの伝統を重んじ、関取で半人前、三役で一人前とされている。今場所は、名古屋場所と同じ自身の最高位で迎えました。いつものことながら、巡業では、力士の模範ともいえるようなエネルギッシュな毎日。秋巡業も皆勤。173センチと、決して身長は大きくないものの、「だから、強くなる」と親方衆から一目置かれる存在です。

「相撲人生は、まだこれから。1ページずつ積み重ねていく。ターニングポイントは、まだありません」

と、極めてまじめで、浮ついたところがない。そんな貴景勝を師匠はほめたことがなく、常に厳しい。これまた、連綿と続く伝統です。ただし、巡業中、確かな手応えがあったのでしょう。

「頑張れば、4つ、金星がとれる」

と内々で漏らしていたという話を耳にしました。残念なことに、それは実現しなかったものの、出場した3人の横綱の内、日馬富士と稀勢の里を下し、通算3個目の金星を手中にしました。

今場所、特に闘志を燃やすのは、中学時代からのライバル・阿武咲が先に三役へ昇進したからです。

「自分もやらないといけない。刺激になる」

阿武咲が所属する阿武松部屋は、貴乃花グループです。同じ学年で、土俵外では親友の関係。貴景勝は2019年、初場所で念願の新入幕を果たし、幕内に定着しました。2度の三賞を獲得し、このまま勝ち星を重ねれば、殊勲賞などの候補になることは確実です。

暴行問題で、よもやの大騒動。雑音をシャットアウトして、渾身の土俵をアピールする貴景勝は声援をおくりたい力士です。

11月16日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」

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