第30回東京国際映画祭、合作映画を中心に振り返る

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第308回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

10月25日から11月3日まで開催された「第30回東京国際映画祭」。

私は毎年、司会者として映画祭をサポートさせていただいてます。世界各国から集まった魅力的な映画が上映されるなか、私は日本と諸外国が製作協力した作品に触れる機会が多くありました。
そこで今回は、これから日本でも公開となる注目作を中心にレポートします。


空海ーKU-KAIー:圧倒的スケールで迫る日中共同製作超大作!

第30回東京国際映画祭、合作映画を中心に振り返る
昨年の東京国際映画祭で製作が発表された、日中共同製作映画『空海ーKU-KAIー』。

長安の街を再現し、かつてないスケールで作られた巨大セットで、約5か月にわたるオール中国ロケを敢行した本作は、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールをはじめ数々の映画祭で受賞経験があるチェン・カイコー監督の最新作として、世界中から注目を集めています。

現在絶賛編集中の本編とメイキング映像をまとめた10分間の特別フッテージ映像が、東京国際映画祭の第30回記念オープニングスペシャルとして世界最速上映されました。

第30回東京国際映画祭、合作映画を中心に振り返る
その舞台挨拶には染谷将太、ホアン・シュアン、シン・ポーチン、松坂慶子、阿部寛が登壇。巨大セットにおける撮影は「いままで経験したことがない世界だった」と振り返る、染谷さん、松坂さん、阿部さん。

シュアンさんが「日本人キャストの皆さんとの共演は素晴らしい体験でした」と話せば、ポーチンさんも「早く完成した作品を観たいですね」と笑顔。

そして肝心のフッテージ映像は…というと、これが規格外のド迫力!カメラを引けば引くほど、そのダイナミックさに溜息が漏れる長安のオープンセット。色彩が豊かでまるで中国絵巻を見ているような美しい衣装や美術セット。映画館のスクリーンで観るからこそ価値がある圧倒的スケール、いまから映画の完成が楽しみです。

『空海ーKU-KAIー』は2018年2月24日から日本公開です。


日中映画交流の新たな展開:中国映画がもっと身近に…。

第30回東京国際映画祭、合作映画を中心に振り返る
映画祭会期中には、「日中映画交流の新たな展開」と題した記者会見が行われました。日本からは西村康稔内閣官房副長官、萩生田光一衆議院議員、国際交流基金の安藤裕康理事長、株式会社KADOKAWAの角川歴彦 取締役会長が。

中国からは劉少賓 中華人民共和国駐日本国臨時代理大使、上海国際影視節有限公司の於侃ジェネラルマネージャーアシスタントが登壇。

さらには映画『空海ーKU-KAIー』から松坂慶子、原作者の夢枕獏も出席し、日中国交正常化45周年の記念事業などが発表されました。

角川歴彦会長によると、前出の『空海』の日本公開に先駆けて、1月からは中国で興収1,000億円を超えた『戦狼 ウルフ・オブ・ウォリアーズ』、高倉健の主演作「君よ憤怒の河を渉れ」をジョン・ウー監督がリメイクした『追捕 MAN HUNT』を連続公開するとのこと。
これら3作品の予告編映像も上映され、会場の記者たちを魅了しました。

第30回東京国際映画祭、合作映画を中心に振り返る
ハリウッド映画への出資など、年々映画ビジネスに力を入れている中国。予告編からでもハリウッドナイズされたスタイリッシュな作風が見て取れ、中国映画界が急速に変化していることを感じずにはいられません。

中国では外国映画の国内上映本数に制限があるのが現状ですが、その上限も徐々に緩和傾向にあると言われています。その限られた枠の中で日本映画が上映されるのは至難の業。しかし一方で、日本映画に興味を持つ若者が多いことも事実。映画を通じて日中両国の文化交流がどのように深化していくか、おおいに期待したいですね。


Mr. Long/ミスター・ロン:映画祭がもたらした縁が新たな映画を生み出す

第30回東京国際映画祭、合作映画を中心に振り返る
日本での任務に失敗した台湾の腕利きの殺し屋ロンが、心を閉ざした少年ジュンと台湾人の母リリー、そして少し変わった村人たちとの交流を通じて人間らしさを取り戻していくさまを描いた、バイオレンスかつハートウォーミングなドラマ。

国内外で活躍するSABU監督と、アート系の名作から超大作まで幅広く出演する中華系スターのチャン・チェン。世界を股にかけて活躍するアジア映画人の初タッグが実現しました。

第30回東京国際映画祭、合作映画を中心に振り返る
上映前の舞台挨拶には、主演のチャン・チェンとSABU監督が揃って登壇。2005年にモントリオール映画祭で出会って以来親交を深めてきたことが、本作の製作につながっただけに、トークの息もぴったり。

国際映画祭がきっかけで人の輪が広がって1本の映画が生まれる、映画祭ならではのエピソードですね。『Mr. Long/ミスター・ロン』は2017年12月16日から新宿武蔵野館ほか全国順次公開です。

第30回東京国際映画祭、合作映画を中心に振り返る
今年は、第30回の記念として増設された企画にも参加させていただきました。

新作『ローガン・ラッキー』を引っ提げて来日したスティーヴン・ソダーバーグ監督の作品を振り返る「スティーヴン・ソダーバーグ特集」やミュージカル映画の魅力を掘り下げる「トリビュート・トゥ・ミュージカル」。

ミッドナイト・バス』のワールドプレミア上映や『Ryuichi Sakamoto:CODA』での「第4回SAMURAI(サムライ)賞」授賞式など。どれも非常に印象深いものでした。

映画を観る喜びを共有することが出来るのも、映画祭の醍醐味のひとつ。30回の節目を迎えた映画祭が、今後どのように進化していくかも興味深いところです。

<作品情報>
空海ーKU-KAIー
2018年2月24日から全国ロードショー
監督:チェン・カイコー
原作:夢枕獏「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(角川文庫/徳間文庫)
©2017 New Classics Media,Kadokawa Corporation,Emperor Motion Pictures,Shengkai Film
公式サイト http://ku-kai-movie.jp/#movie

Mr. Long/ミスター・ロン

2017年12月16日から新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:SABU
出演:チャン・チェン、青柳翔、イレブン・ヤオ、バイ・ルンイン ほか
©2017 LiVEMAX FILM / HIGH BROW CINEMA
公式サイト http://mr-long.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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