北朝鮮に対する日米の微妙で危険な違いとは?

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11/2(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①

トランプ大統領の来日でどこまで情勢が動くのか
6:32~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター佐藤優(元外務省主任分析官・作家)

北朝鮮に対する日米の微妙で危険な違いとは?

北朝鮮をアメリカが攻撃する可能性は、この3ヶ月で100倍上がっている

今月5日のトランプ大統領の来日まで、あとわずか。日本と共通の問題である北朝鮮問題についても、話し合いが予想されています。しかし、一見共通しているこの問題も、日米では必ずしも一致していない点があります。その点について、元外務省主任分析官である佐藤優さんが解説します。

高嶋)トランプさんがやってきます。北朝鮮情勢で「あらゆる選択肢がテーブルの上に置いてある」と言っていますが、そういうことに対して、日本の安倍総理は、必ず「支持の表明」をします。このような動きに対して、いろいろな見方があるようですが、佐藤優さんはどう分析していますか?

佐藤)まず、多数説での見方は、いろいろなことは言うけれど、いろいろな手続きをする圧力があり、結局は交渉で落とすしかない。

高嶋)最終的には話し合いだと?

佐藤)となると、戦争は避けられる、という見方ですね。

高嶋)そういう気持ちが日本全国にあります。

佐藤)ただ、私は、先々月までは朝鮮半島で、アメリカが攻撃をする可能性は、10万分の1くらいだと思っていたのですよ。それが先月は1万分の1。いまは、1,000分の1くらいだと思っています。1,000分の1とは、たとえると、「5軒先の火事が、自宅に燃え移るかもしれない」というくらいのリスク。外交の世界で1,000分の1は高い数字です。その観点からだと心配なのは、安倍さんは「圧力1本でいけ」という形で言っています。それから「あらゆる選択肢」です。

高嶋)国連で堂々と言いましたよね、「圧力」と。

佐藤)それを聞いたトランプは、日本の憲法的な制約とか、安保法制でのいろいろな議論で先制攻撃ができない、ということが分かっていないですよね。それから、歴史で朝鮮半島はかつて日本の植民地だったから、仮に北朝鮮を日本の自衛隊が空爆することになったら、韓国の世論がどう揺れるか。特に、いまは文在寅政権で、ナショナリズムに触れると、韓国まで反日になる可能性がある。こういうところにおいて、日本が軍事行動にいける、というのは常識的に考えてないのだけど、「一緒にやろうぜ、シンゾウ」とトランプが言ってきたらどうします?

北朝鮮に対する日米の微妙で危険な違いとは?

アメリカと日本の違いは北朝鮮との物理的な位置関係

高嶋)いろいろな意味で、日米は一致していると言っていますよね。

佐藤)これも、ちょっとマズいのです。日米は今回、一致していないのです。何故かというと、アメリカは大陸間弾道ミサイルさえできなければ、北の核がアメリカ大陸に到達する可能性は、ゼロなのです。ところが日本の場合、この前の、8月29日と9月15日のミサイル実験でも分かるように、北朝鮮は日本全域に到達可能なミサイルを持っている。あとは、核の小型化さえすれば全域が北朝鮮の核兵器の攻撃射程距離になる。そうすると、日米の基本的な価値観は一致しているけど、地政学的な状況が違う。なので、「日米の状況が違うから、アメリカが考えているよりずっと危機的だから、核廃絶をきちんとやってくれ」ということを、いま戦術的に強調しなければいけない。違いを強調した方がいいと思うのです。

高嶋)先ほど、「1,000分の1まで縮まった。5軒先の家が火事を起こして、こちらに火が飛んできて危険」と。ずいぶん急激に佐藤さんの読みは変わっていますが、それは何故ですか?

トランプ 金正恩

トランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長 写真提供:時事通信

金正恩とトランプ大統領の間にある危険な「売り言葉に買い言葉」と「無知と誤解」

佐藤)それは「売り言葉に買い言葉」、「無知と誤解」、これが金正恩とトランプの間であるからです。たとえば、北朝鮮で、「太平洋に水爆を撃ってやる」と外務大臣が大暴れしたでしょう。あの原因は、トランプさんが、いままでは「同盟国を北朝鮮が攻撃するときは、北朝鮮を壊滅させるとき」と言っていたのを、「同盟国に脅威を与えるなら、北朝鮮を壊滅させる」と。“軍事攻撃”が、いつの間にか“脅威”に変わってしまったわけです。トランプさんなので、そのときの雰囲気で言っているのは間違いない。ところが、北朝鮮はハードルを上げて、「宣戦布告が近づいてきた」と受け止めてしまった。これはトランプという人間に対する無知。それから、アメリカの意志決定システムでそんなことは簡単にはできない、ということに対する誤解ですね。

高嶋)トランプという、こう言っては失礼ですが、特異な体質を持つアメリカの指導者。この性格の危険性がね。「シンゾウ、一緒にやろう」と。

佐藤)そんな感じで。ゴルフとかやりながら、そんな話になったら、どうします?

高嶋)本当ですね。今日のお話は不気味です。

佐藤)そういったリスクというのが、首脳間の信頼関係で行おうとした場合には、あるということですよ。

高嶋)安倍さんは分かっているのでしょうか?

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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