10時のグッとストーリー

父親から受け継いだ工務店を二度の大きな困難を乗り越えて発展させた社長のストーリー

番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

きょうは、父親から受け継いだ工務店を、二度の大きな困難を乗り越えて発展させ、新たな街づくりにもひと役買っている方の、グッとストーリーです。

増山工務店

増山工務店の仕上げた美しい内装

かつて天智天皇が都を遷し、1300年もの歴史を持つ古都・滋賀県大津市。世界文化遺産に指定されている比叡山延暦寺をはじめ、由緒ある古い建物がたくさん残っている街です。

その大津市で、父親から受け継いだ工務店を経営し、自分も大工として施工に当たっているのが、「増山工務店」代表の、増山次利(ますやま・つぐとし)さん・49歳。

増山次利

こちらが増山工務店・社長 増山次利さん

古い建物が解体されたときに出る木材を再利用し、新築でも伝統を感じる建物を造り上げるのも増山工務店の得意とするところで、仕事の予定が、すでに3年先まで埋まっています。

「大事なのは店構えで、そこでいかに上品な雰囲気を醸(かも)し出せるかが勝負です。時には、200年以上前の木材も使ったりしますよ」という増山さん。子供の頃から、創業者の父親・満次(みつじ)さんに「大工のイロハ」を叩き込まれて育ちました。

増山工務店

こちらが増山工務店のオフィス 天井の柱が立派です

「父は、宮大工の仕事もやっていたんです。『大工として大切なのは“心”だ。クギ一本にも、真心を込めるようにと、厳しく仕込まれました」という増山さん。

地元の建築専門学校を卒業すると、20歳で東京の建設会社に就職。出社初日、全社員を集めた朝礼で、現場の責任者が増山さんを紹介するとき、こう言いました。

「こいつは、滋賀から来た工務店の息子だ。ボンボンで、どうせすぐ田舎に帰るから、仕事は教えなくていいぞ」…頼れる人が誰もいない東京で、いきなり先輩社員から冷たい仕打ちを受けた増山さんは「負けるものか!」と必死で仕事を覚え、社内最年少で、「一級建築施工管理技士」の試験に合格。若くして「社内一の現場監督」と呼ばれました。

大工仕事

「社内一の現場監督」と呼ばれた増山さん 真剣に大工仕事に打ち込んでいます

実家の工務店は、長男の満広(みつひろ)さんが継いでいましたが、増山さんは28歳のときお兄さんに「お前の力が必要だ」と頼まれ、会社を辞めて、兄弟で一緒に経営に当たることに。二人の合言葉は「うちを、滋賀で一番の工務店にしよう」でした。ところが・・・

これから新事業を立ち上げよう、というときに、お兄さんが突然、クモ膜下出血で亡くなったのです。

増山工務店

お兄さんの満広さん これからという時に……突然の悲しいお別れでした

「茫然として、数日間、何も手につかなかったです。いっそ自分も死んでしまおうかと、高速道路のカーブに猛スピードで突っ込みそうになったこともあります」

という増山さん。後を追ってどうする?と思い直し、お兄さんに代わって、33歳で新社長に就任。新事業でできた借金も残る中、営業マンもいない小さな工務店が新しい仕事を取ってくるには、自分たちの腕をPRするしかありません。

父親から教わった「クギ一本にも真心を」の精神で、すべての依頼に全力で応えていると、その仕事ぶりを見た大津市の担当者から、こんな依頼が舞い込んできました。「姉妹都市との国際交流でドイツに茶室を造りたいので、現地まで技術指導に行ってくれませんか?」

ヴュルツブルク

ドイツ・ヴュルツブルク市 現地スタッフのみなさま

2001年、姉妹都市・ヴュルツブルク市に赴いた増山さん。現地の山に行って、桜の木を選んで切り、現地の業者に建て方を細かく指導。ドイツに本格的な茶室が完成しました。この丁寧な仕事ぶりが、また次の仕事を生み出します。

大津市の高級和菓子メーカー「叶 匠壽庵(かのう しょうじゅあん)」の社長が「新しい店舗を、おたくで造ってほしい」と依頼してきたのです。和菓子店に必要なのは「たたずまい」。増山さんは、全国から集めた古い木材を組み合わせ、高級感の漂う空間を造ることに成功。叶 匠壽庵はその後、全国100店舗以上の設計施工を、増山工務店に任せてくれました。

叶 匠壽庵

叶 匠壽庵の高級感の漂う内装 そのたたずまいに匠の技が光ります

これで経営も軌道に乗った、と思われた2011年・・・信頼していた社員が、会社のお金を横領していたことが発覚。着服した額は数千万円に及び、増山工務店は経営危機に陥りました。

「また死のうかと思いましたが、ありがたいですね。取引先の皆さんや、友人・知人が次々に援助を申し出てくれまして」…お金は「そのお気持ちだけで結構です」と還しましたが、そんな周囲の励ましが力になって、増山さんはふたたび、会社を建て直すことができました。

施工後

施工前(左)と施工後(右) こんなに変わるなんて驚きです

その恩返しの意味も込めて、増山さんは現在、大津市の駅前にある商店街の再生に力を入れています。閉店した店舗を、古い木材を使ってリフォームしたことも。解体された建物の一部が、新たな店舗の一部として、生まれ変わることで、シャッター街が生まれ変わろうとしています。

「木は生き物なんです。鉋(かんな)一つかけるのでも、木目の向きを見て削らないとささくれ立ってしまいます。これからも“心”を込めて木に向き合っていきたいですね」

床組

床組の作業中 “心”を込めて木に向き合う増山さんのこれからのお仕事が楽しみです

【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年11月4日(土) より

八木亜希子,LOVE&MELODY

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