横浜駅「シウマイ弁当」(830円)~駅弁屋さんの工場ですよ!(崎陽軒編②)

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

快速 アクティー

E231系・快速「アクティー」、東海道本線・川崎~横浜間

ライター望月が全国の駅弁屋さんの厨房にお邪魔する「駅弁屋さんの厨房ですよ!」シリーズ。
これまで伊東、小淵沢、水戸、出水、長岡、米沢の各駅弁屋さんの厨房に潜入してまいりましたが、今週は“厨房”を超越したスペシャル企画「駅弁屋さんの“工場”ですよ!」。
19年ぶりのプロ野球日本シリーズ・横浜開催を記念し、横浜駅弁「崎陽軒」横浜工場の工場見学コースを特集しています。

崎陽軒

崎陽軒横浜工場

日本一を目指す戦いには、やはり“日本一売れる”といわれる駅弁がよく似合う!
ということで、おなじみ「シウマイ弁当」(830円)が、崎陽軒横浜工場で製造される様子を、「駅弁膝栗毛」読者の皆さんのために、特別に撮影を許可していただきました。
「シウマイ弁当」は、1日およそ2万3,000個が売れるといわれており、日本トップクラスの販売数を誇る駅弁なんです。

崎陽軒

崎陽軒横浜工場

実は8月からリニューアルされた崎陽軒横浜工場の工場見学における最大のリニューアルポイントが、この「シウマイ弁当」の箱詰め風景。
これまで「シウマイ弁当」は、横浜駅東口にある本社工場と、東京・江東区にある東京工場の2つの拠点で作られてきました。
加えて今回、横浜工場での生産体制が整ったことから、3つの拠点で作られるようになり、横浜工場の工場見学で、満を持して“公開”されるようになったという訳なんです。

崎陽軒

崎陽軒横浜工場

昭和29(1954)年、横浜名物「シウマイ」の妹分として登場した「シウマイ弁当」。
「シウマイ」はもちろん、ホントに白いご飯が美味しいですよね。
その美味しさの秘密は、何と言っても、お米を蒸して炊き上げる「蒸気炊飯」!
シウマイを「蒸す」、ご飯も「蒸す」という、2つの「蒸す」作業が美味しさを引き出すわけです。
その炊き上がったご飯が、一気に成形機に入りますと・・・?

崎陽軒

崎陽軒横浜工場

なんと、おなじみの俵型ご飯になって出てきました。
その俵型ご飯を、職人さんがへらを使って、伝統の経木の折箱にスッと入れていきます。
コレ、かなり難易度が高い作業なんだそうですが、全くもたつくことがありません。
しかも、機械を通しているのに、お米1粒1粒がつぶれることなく、立ったままなのもスゴイ!
実はあの美味しいご飯には、「職人技」が隠れていたのです。

崎陽軒

崎陽軒横浜工場

白いご飯が詰められた折箱には、順を追っておかずが1つ1つ手作業で添えられていきます。
まずはおかずのメイン、「昔ながらのシウマイ」が5個。
続いて、巨大な鍋で作られる人気の筍煮、こんがり焼かれた鮪の照り焼、さらにかまぼこ、玉子焼き、鶏唐揚げが入って、幕の内弁当の“三種の神器”が揃いました。
これに「あんず」が加わったところで・・・最後に最大の難関が!

崎陽軒

崎陽軒横浜工場

それは、「切り昆布」と「千切り生姜」を詰める作業。
よく見ると、右手で昆布、左手で生姜を、同時に折箱の斜めに区切られた狭いマスのところへ、寸分の狂いもなく、一瞬で盛り付けているのです。
次から次へ来る折箱が全く滞ることなく、当たり前に流れていく様子は見ていて惚れ惚れします。
崎陽軒の工場見学の際は、ぜひこの皆さんの“神の手”に注目したいものです。

崎陽軒

崎陽軒横浜工場

仕上げに「シウマイ」の辛子と醤油が添えられて、おなじみの「シウマイ弁当」に・・・。
経木のふたが載せられていきます。
ココに木を使っているのが大事なことで、経木の折は水分を程よく吸ってくれて、ご飯でいえば、いわゆる「お櫃」のような効果があるといいます。
ホント、昔からの知恵や技術を大事にしているからこその美味しさでもあるんですね。

崎陽軒

崎陽軒横浜工場

おしまいは、横浜エリアならではの職人技、掛け紙と紐かけです。
本社工場、横浜工場で生産され、神奈川地区を中心に販売される「シウマイ弁当」には、昔ながらの掛け紙が健在なのです。(東京工場生産分は紙蓋タイプ)
サッと十字にかけて、キュッと結ぶのも、あっという間。
ちなみに「崎陽軒」に新入社員として入社した方は、まずこの紐かけを習うのだそう。
やはり、この作業が、駅弁屋さんのイロハの「イ」ということなのかもしれません。

シウマイ弁当

シウマイ弁当

このようにして出来上がってきた「シウマイ弁当」が横浜駅・新横浜駅をはじめ、首都圏の各駅はもちろん、百貨店や郊外にもある「崎陽軒」の売店へと運ばれていきます。
ちなみに、この掛け紙は4代目で、平成7(1995)年から使われているデザインです。
龍と水晶が描かれ、水晶の中に横浜のシンボリックな風景が映し出されています。
ランドマークタワーをはじめとした「みなとみらい」の様子が描かれるようになったのが特徴です。

シウマイ弁当

シウマイ弁当

掛け紙を外した時、まず嬉しくなっちゃうのが、この蓋の反り!
この反りに曲線美を感じながら愛でるところから、「シウマイ弁当」は始まります。
思わず、“あゝ、経木の折がしっかり仕事してる!”と叫びたくなっちゃうくらい。
日本の駅弁文化の伝統と素晴らしさが、ココにギュッと凝縮されているように感じます。
崎陽軒が発祥の「駅弁のお手拭き」も、しっかり入っていますね。

シウマイ弁当

シウマイ弁当

【お品書き】
・俵型ご飯(小梅、黒胡麻)
・昔ながらのシウマイ。
・鮪の照り焼
・かまぼこ
・鶏唐揚げ
・玉子焼き
・筍煮
・あんず
・切り昆布&千切り生姜

崎陽軒 茶

シウマイ弁当を「崎陽軒のお茶 釜炒り茶ブレンド」と一緒に

「シウマイ弁当を、何から食べるか?」というのは、恐らく横浜市民の皆さんを中心に、首都圏で暮らす方にとっては、盛り上がること必至な『テッパンの話題』。
望月は俵型ご飯の左下1区画を、ごまの風味を感じながらいただくことが多い気がします。
ちなみに、この「シウマイ弁当」をはじめとした駅弁に合うように作られたのが、「崎陽軒のお茶 釜炒り茶ブレンド」(120円)。
売店の方が、冷たいお茶と「常温」タイプを選べるように心遣いをしてくれるのも嬉しいものです。

快速 アクティー

E231系・快速「アクティー」

東海道線の普通・快速列車には、先頭車両となる1.2号車、14.15号車、(一部9.10号車)を中心にボックスタイプのシートがあり、日中の空いた時間帯なら、昔ながらの駅弁旅が楽しめます。
また、横浜~東京間の移動でも、普通列車グリーン車や踊り子の自由席を利用して「シウマイ弁当」をいただけば、25分でしっかりお腹いっぱいになるのが嬉しいところです。
日本シリーズの舞台・横浜スタジアムでもいただくことが出来る、崎陽軒の「シウマイ弁当」。
「シウマイ弁当」は、駅弁の戦い「駅弁味の陣」にも参戦中です。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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