大船駅「鯵の押寿し」(960円)~受け継がれる伝統の「鯵と味」①

By -  公開:  更新:

【ライター望月の駅弁膝栗毛】

横須賀線

E217系電車、横須賀線・大船~北鎌倉間

東海道線・横須賀線の接続駅となったことから、大きく発展した「大船駅」。
戦後、横須賀線を走る列車には、青と白の塗色が施されるようになりました。
“青い海、白い砂”をイメージしたとも云われる、通称「横須賀色(スカ色)」です。
今も主力のE217系電車には、青と白の帯が巻かれ、その系譜を今に伝えています。
鎌倉、逗子といった海のある街を走り抜ける横須賀線ならではのカラーリングですよね。

鯵の押寿し

鯵の押寿し

そんな湘南の海を思い浮かべていただきたいのが、「大船軒」名物「鯵の押寿し」(960円)。
誕生したのは大正2(1913)年、これもまた100年以上の歴史を紡いできた伝統の駅弁です。
「サンドウヰッチ」が人気を集めていた大船軒ですが、他社もサンドイッチ駅弁に参入してきたことから、「サンドウヰッチ」に次ぐ名物の開発に迫られました。
そこで当時、湘南の海で豊漁が続いていたという「鯵」を使って駅弁が作られたんですね。

鯵の押寿し

鯵の押寿し

大船軒の「鯵の押寿し」は、関東風ににぎり、関西風に押して仕上げるのが特徴。
その意味では、関東~関西を結ぶ東海道線ならではの駅弁ともいえましょう。
大正2年に発売されるや否や、「サンドウヰッチ」と並ぶ人気を博したといわれています。
古くから鎌倉ゆかりの文人たちに親しまれてきたほか、昭和以降は大船に映画の撮影所が出来たことで、銀幕のスターたちにもファンが多かったといいます。

鯵の押寿し

鯵の押寿し

現在の「鯵の押寿し」は、九州産を中心に国産の脂が乗った「中鯵」を使って作られています。
「大船軒」によりますと、中鯵の場合は、一匹からおよそ8カン+αの身が取れるといいますから、一つの折詰がちょうど鯵一匹分・・・実はかなり贅沢な駅弁なんです!
この鯵を「大船軒」伝統の合わせ酢で〆て、鯵のうま味と共に味わうことが出来ます。
望月は包装を開けた時の、独特の酢の香りが大好きなんですよね。

E217系電車

E217系電車、横須賀線・鎌倉~北鎌倉間

季節や気候によって、職人さんが酢に漬ける時間を考慮したりしながら作っているという大船軒伝統の「鯵の押寿し」。
東海道線・横須賀線の普通列車には、昔からグリーン車が連結されていることもあって、列車内で駅弁を食べやすい環境が整っているのも嬉しいところです。
次回、この「鯵の押寿し」のさらにディープな世界に迫っていきたいと思います。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

Page top