あけの語りびと

東京で今日も一人芝居 膠原病に襲われながらも夢を諦めない女性

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

とある夕暮れ……、東京駅八重洲口、オフィス街の片隅で、首に「開演中」と書いたボードを下げた若い女性が、なにやら、一人芝居をやっていました。

木下咲希

東京駅で「開演中」と首にぶら下げている女性……

もらったビラには、『劇団やりたかった』……。一人芝居を演じているのは、団長の木下咲希さん。話を聞くと、こんな方なんです。

木下咲希

笑顔がチャーミングなこの方が木下咲希さん!

木下咲希さんは、広島県福山市生まれの30歳。子供の頃からクラシックバレエを習っていて、人前で表現するのが大好きでした。高校は地元の進学校に進みますが、卒業を前に悩みます。みんなが大学に行っても、自分は違う道に進みたい、と19歳の時、ダンスのオーディションに受けますが、不合格。そのショックか原因不明の病気に襲われます。

指の皮がボロボロにはがれ、顔がパンパンに腫れ上がりました。内科や皮膚科を受診しても医者は首をひねるばかり……、太陽に当たると症状が悪化するのでしばらく家にこもっていると、少しずつ良くなっていきました。

木下咲希

闘病の末、自分を探し、芝居を見つけた木下さん

体調を取り戻した木下さんは親の反対を押し切って上京、『人生は一度っきり。何か、自分を表現するものを、見つけたい』と入ったのが、小さな劇団でした。

「舞台に立って、お客さんの前で演じた時、ダンスにはなかった、ビビッとくるものがあって、『あ、これだ! 芝居に人生をかけてみよう!』と思ったんです」

その後、所属していた劇団が解散することになり、本気で芝居をやりたいのなら一人でもやれるはず、と2013年、『劇団やりたかった』を旗揚げします。

劇団やりたかった

『劇団やりたかった』のみなさん

第一回公演「上京物語」は、テレビアイドルを目指し上京した女の子が所属事務所に翻弄され、舞台役者となり、最終的に挌闘家になる物語……。初日の観客は、たったの二人。その前で一人芝居を演じました。4日間でトータル79人。50万円の赤字が残りました。

公演を終えて、痛感したのは「お客さんを呼ぶ難しさ」。第二回公演も思ったほど集客できず、赤字が続きます。公演の資金を貯めるために、3つのアルバイトをしていた27歳の時、高熱、発疹、さらに歩けないほどの関節痛に襲われます。

木下咲希

何度病に倒れても弱音は吐きません!

医者に診てもらうと、即入院。精密検査の結果、「膠原病(こうげんびょう)」だと判りました。19歳の時に襲ったのも、この病気が原因でした。

第3回公演の準備を始めようと思った矢先のダウンでしたが、それでも木下さんは弱音を吐きません。膠原病は原因不明の病気でしたが、医療の進歩で、いまでは安定した状態を維持することが出来ると知って、退院後、再び路上に立ちます。

「最初は、ビラを配るだけだったんです。それじゃ、お客さんが舞台に来てくれない。舞台と同じ、路上でも、自分をさらけ出さないとダメ!」

木下咲希

ビラを配るだけなのをやめ、一人芝居をはじめた木下さん

そう思った木下さんは、路上で一人芝居を始めました。「男はつらいよ」や「北の国から」のワンシーンを一人で演じます。「寅さんのダメ人間ぶりと、温かい家族、あれが大好きなんです」

舞台の方は、一人芝居をやめて、台本の登場人物をオーディションで選び、徹底した役作りに、こだわっています。どこまでが台本で、どこまでがアドリブか分からない、と評価を得て、前回の公演は、トータル800人近くのお客さんが観にきました。そのほとんどが路上で出会った人たちです。現在は、年2回のロング公演を行い、黒字にもなっています。

劇団やりたかった

赤字から黒字に転じた『劇団やりたかった』 大迫力ですね!

木下咲希

この表情! 迫真の演技で輝いてます!

11月16日から第10回公演『朝からギョーザ』が始まります。深夜勤務を終えて帰宅するお父さんの楽しみが、ビールにギョーザ。その家族も、朝からギョーザに付き合わされるという喜劇で、木下さんは58歳の妻を演じます。

「芝居は私にとって、生きるための真剣勝負!といっても、芝居の中身は喜劇なので、こいつ、バカだな〜、と笑ってほしいですね」

『劇団やりたかった』団長、木下咲希さん……きょうもどこかの街角で、人生をかけた一人芝居を演じています。

木下咲希

人生をかけた一人芝居。観てみたいと思いませんか?

朝からギョーザ

劇団やりたかった 第10回公演「朝からギョーザ」ポスター(表)

日々の路上も、真剣勝負。「劇団やりたかった」は年2回、劇場公演を行っています。
劇団やりたかった 第10回公演「朝からギョーザ」

あらすじ
深夜のタクシー運転手である正造は、あさ帰ってきて ビールにギョーザを数十年続けています。家族は、妻の幸恵と長男長女次男、そして居候の俊介です。この家族はずっと朝からギョーザなものですから 朝の会話も少しふつうの家庭とは違うようです。この家族が迎えてきた印象的な五つの朝を集めました。五幕構成ではなく五朝構成です。
どうぞのぞき見に来てください。

日時:2017年11月16日(木)〜28日(火) 全18公演
場所:「参宮橋トランスミッション」(小田急線「参宮橋駅」から歩いて2分)
料金:前売り 3,000円 前売り二回券 6,000円 三回券9,000円 ​当日 3,500円

詳しくは、「劇団やりたかった」のホームページをご覧ください。

朝からギョーザ

劇団やりたかった 第10回公演「朝からギョーザ」ポスター(裏)

上柳昌彦あさぼらけ 『あけの語りびと』
2017年10月25日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

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