日産・不正検査問題はなぜ起きたのか?

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10/20(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③

世界的な信頼を失うことへの危機感と利益重視の体質
7:11~ひでたけのニュースガツンと言わせて!:コメンテーター須田慎一郎(ジャーナリスト)

日産・不正検査問題はなぜ起きたのか?

日産自動車 新車「完成検査」無資格検査問題で会見、西川広人社長謝罪(提供:産経新聞)

国内の6ヶ所で出荷停止 販売済みの車の追加リコールも検討

日産自動車は、資格のない従業員による新車の検査を、公表後も続けていたとして、国内に6ヶ所ある、すべての完成車工場で、出荷を停止することを決めました。無資格の従業員の検査が続いていたのは、神奈川県の「日産車体湘南工場」など、国内4つの工場で、先月29日に問題を公表した後も、ずさんな検査態勢の改善が徹底されていなかったことが明らかになりました。

国の規定に反した、新車の無資格検査。そもそも、先月18日に、国土交通相の立ち入り検査で判明し、先月29日に、日産自動車が公表していました。日産は、販売を一時停止したのですが、その後「検査態勢を改めた」ということで、販売を再開していました。日産は10月になって、国土交通相に販売済みの小型車「ノート」など、38のすべての車種、116万台のリコールも届け出ていました。

ですが、その後の社内チームの調査で、日産車体湘南工場で、無資格検査が続けられていたことが、今月11日にわかりました。その他にも、栃木工場、追浜工場、日産自動車九州でも、無資格検査を続けていたことがわかりました。

新車の出荷前に行う最終検査のうち、「エンジンのスタート」や「タイヤの使用確認」に、資格を持っていない補助検査員が携わっていたということで、問題の改善に取り組もうとする上層部の意向が、どうやら現場に伝わっていなかったようです。

日産は、万全を期すために国内6つの工場すべてで出荷を止めます。不十分な検査態勢のまま出荷し、すでに販売したおよそ4000台は、国土交通相に追加のリコールを届け出ることも検討します。販売店も含めた、日産が抱えるおよそ3万台は販売を止め、国内向けの車両の生産も停止します。検査体制を改め、出荷を再開するまで、「2週間程度かかるだろう」とのことです。以下は、昨日、記者会見をした日産自動車の西川廣人社長です。

西川社長)再発防止策を、信頼して頂いた皆様に、大変申し訳ないことをしてしまった、という風に思っております。深く、お詫び申し上げます。

日産は再発防止策として、最終検査のスペースを独立させ、正規の検査員しか入れないように、管理を厳重にするほか、正規の検査員の数も増やしていくとのことです。

 

非生産部門のコストカットの結果が、今回の件を招いた

高嶋)これは非常に微妙なところがありまして。私はまったくの素人で、わかっていないのですが、「ハンドルの遊び具合」や「ブレーキの利き具合」というのは、その程度のことは私でもわかる気がしました。もちろん、他にもいろいろ調べるのは分かりますが、無資格の人がやっていた。それはようするに、そういう人でも安全だから、オーケーだったのでは?という気配がするのと、「神戸製鋼のアルミは安全」というのも出てきて。他のはまだ分からないのもありますが、いろいろな企業が独自に調べて安全と言っている。ということは、「そもそも、基準がキツすぎるのでは?」ということも感じなくはない。だけど、規則は規則、法は法、というところがありますから、この辺のせめぎ合いで、本質の原因は何か、須田さんはどう分析しますか?

須田)高嶋さんの言うように、基準やルールが厳しすぎる側面が色濃くあるのだろうと思います。やはり資格を持った検査員と無資格の補助検査員に、どの程度能力の差があるのか、という問題もあるのだろうと思います。ただ、やはりルールはルールで、やらなければならない。そういった検査員や検査、チェック体制というのは、利益を生むものではないのです。その一方で、「これだけの出荷をしなさい、検査をしなさい」というノルマが与えられていて、コストカットをするために、「検査員の数はこれだけ、人件費はこれだけに抑えなさい」という体制をとっていれば、当然、こういったことが起きてくる。別に、素人に検査をやらせるわけではないのですから。そういった意味で言うと、やはり利益を出さない、非生産部門を、経費削減でどんどんカットした、そういう側面があるのだと思います。
そしてもう1つは、この検査と、神戸製鋼の品質管理。この品質管理に関しては、国際規格の「ISO9001」という基準が適用されているのです。こういった基準が何故設けられているのかというと、
どちらかというと、「品質管理を徹底してやる」ということではなく、出荷した後。車なら売却後に何かトラブルが発生したときに、企業としては「これだけ万全な体制を敷いていました」と弁解をするための側面が色濃くあるのですよ。

 

今回の騒動の本質は、日本の技術力が世界に追い越されてしまっていること

高嶋)神戸製鋼の例で、30~40年前からやっていた、というのは、無神経さにも驚きますが、そんなに昔からやっていたのなら、重大事故が発生してもおかしくはないなと思うけど、特に聞いたことがないですよね。

須田)ええ。先ほど申し上げたISO9001は、近年導入されたもので、以前からあるわけではないのです。どんどんこういう基準はキツくなっている。なので、「かつては良かったのだから、いいじゃないか」という現場の意識も無いわけではない。

高嶋)なるほど。その辺は、分からなくもないですね。

須田)だから、日産や神戸製鋼が許されるということではないけれど、実はこの問題は、日本の「ものづくり」や日本企業がいま抱えている、本質的な大きな問題が横たわっているのです。

高嶋)と、言いますと?

須田)それが何かというと、かつての日本企業、ものづくりなら、過剰なスペックや品質。つまり、規格、基準を遙かに上回るようなスペックのものを提供していたわけです。

高嶋)なるほど、国際基準で「ここまで」と言っていても、日本企業はそれ以上の安全性などをクリアしていた。

須田)「そこまでやる必要はないのでは?」と言われるほど、やってきた。それが日本のものづくりや企業に対する世界的信頼だったのです。それが追い越されてしまった。ここに危機感を覚えなければダメです。最大の問題点ですよ。

高嶋)企業が国際化しすぎて、経営陣も毛色の違う人がいろいろやっている、というのもあるし、なかなか難しいところですよね。だけど、かつての日本のものづくりはそこまでやっていた。それが許されなくなった状況というのもある、ということですよね。普通に考えれば、「検査員を増やす」のはわけもないことだと思いますものね。

須田)そうですね。それがここに来て「増やすという方針」……遅すぎますよ、これは。

高嶋)日本の代表的な企業がこういう現象をあちこちで起こしている不思議。その原点は何か、いまの須田さんの一言で分かった気がしました。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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