アメリカ最大の人気スポーツ アメリカン・フットボールを巡る“脳震盪問題”

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アメリカ最大の人気スポーツ アメリカン・フットボールを巡る“脳震盪問題”

アメリカ最大の人気スポーツといえば、なんといってもアメリカンフットボール、通称“アメフト”です。ちょうど今、トランプ大統領とアメフトの選手たちが、国旗掲揚のありかたを巡ってモメにモメてますが、こんなことが世界的なニュースになるのも「大人気スポーツ」であることの証左といえるでしょう。

アメフトのプロリーグ、NFL(National Football League)が創設されたのは、約100年前(1920年)。以来、倍々ゲームのようにファンが増え続けまして... 現在ではアメリカ国内だけでも、毎週1億人以上のファンがテレビやスタジアムでアメフトに熱狂しています。

なにしろ、人気チームのシーズンチケットを購入しようと思ったら、「10年以上」待たなきゃならない!NFLの優勝決定戦「スーパーボール」の視聴率は、なんと「25年連続40%以上」を誇っているほど…まさにアメフトこそは、アメリカの国技といっても過言ではないんです。

ところが… そんなアメリカの国技「アメフト」が、いま、存続の危機を迎えているというんです。毎週1億人が観てくれて、NFLは大儲けのハズなのに… いったいなぜ?実は… いま、アメフト界では、「脳震盪」が、業界を揺るがす大問題になっているんです!

アメリカ最大の人気スポーツ アメリカン・フットボールを巡る“脳震盪問題”

アメフトの最大の魅力は、なんといっても、大男たちがフルスピードで繰り広げる肉弾戦ですよね。フィールドの格闘技と言われるくらいで、大男たちが、ドカーン!とぶつかり合うからこそ面白い!ところが… 最近のスポーツ医学の進歩により、恐ろしい「事実」が明らかとなってきたんです。

ひとつ!
「アメフトの選手である以上、脳震盪のリスクを避けることはできない。選手と衝突、あるいは激しく転倒した場合、ヘルメットの中で、脳が激しく揺れてしまうからだ。」

ひとつ!
「繰り返して脳振盪を起こすと、過去の脳振盪から脳が回復しないうちに脳に障害を与えることになるので、回復が遅れたり、障害が長期化する可能性が高まる。」

そして、さらに、ひとつ! これが実に恐ろしい話なのですが…
「NFLを引退した約2万人のうち6千人が、脳震盪が遠因のアルツハイマー病や認知症になる恐れがある。」

アメリカ最大の人気スポーツ アメリカン・フットボールを巡る“脳震盪問題”

実際、ここ数年来、NFLの元スター選手たちが、引退後、精神に異常をきたし、発砲事件を起こしたり、あるいは自殺を遂げたり… という例が、後を絶ちませんでした。2013年には、NFLの元選手、約4500人が、「現役時代のプレーで脳に健康被害が生じた」として、NFLに、損害賠償を求める集団訴訟を起こしました。

そして… 一昨年(2015年)、ようやく和解。NFLは「総額で10億ドル(約1,200億円)」にも上る巨額の賠償金を支払うことになったのです。端的に言えば、NFLが事実上、「過失を認めた」ということなんです!

同じ年、2015年には、この問題を題材としたウィル・スミス主演の映画、「Concussion」(※コンカッション/「脳震盪」という意味)が公開されまして、脳震盪問題への問題意識が、さらに高まることとなりました。

さぁ、そうなると… 気になるのは「その後」でありますよね。アメフトは、莫大な資本が動く、超巨大産業です。おいそれと「アメフト廃止」というわけにもいかない…NFLは、その後、対策を講じなかったのでしょうか?

いえいえ!
当然ではありますが、NFLは、今まさに、さまざまな対策を講じようとしているんです!たとえば、アメフトの公式ルールに、「脳震盪に対するガイドライン」を付け加えました。

いわく…
「選手が頭部にヒットされたら、適切な医療担当者が、脳振盪の徴候や症状を確認する。選手に拒否させてはならない。脳振盪ではないと選手は答えるものだからである。」

… というような具合に、さまざまな注意事項が明記されました。しかし、それよりなにより、日本ではまるで知られていない、衝撃的な慣習が加わったんです!

「選手としてプレーし始めたときからカウントして、3回、もしくは4回目のコンカッション(脳震盪)があった時点で、選手は引退を勧告される。」

アメリカ最大の人気スポーツ アメリカン・フットボールを巡る“脳震盪問題”

…いかがでしょうか? 要するに、どんなに将来を嘱望された大型新人であったとしても、脳震盪が3回、もしくは4回となれば、「引退を勧告される」ということになっているんです!

脳震盪問題への、科学的なアプローチも進んでいます。たとえば、GPS(全地球測位システム)が、アメフト選手のスピードとタックル回数を正確に測定。タックルの回数を制限しようという取り組みが行われつつあります。

新たなスポーツ用品も開発されています。たとえば、スポーツメーカーの「リーボック社」は、「CHECKLIGHT」(チェックライト)という、センサー付きの帽子を販売しています。これをヘルメットの下にかぶると、頭部に大きな衝撃を受けた時に、ライトが点灯するようになっています。このライトが光ると、『あっ!この選手は、ベンチに下げないとマズイぞ!』というわけです。

いまや、アメフトの風景は、すっかり変わりつつあります。脳震盪を起こしたときの手順も決まっていますし、フィールド上には必ず、チーム専属の医者もいます。全試合に、NFLの専門スタッフが派遣されるようになり、脳震盪に繋がる激しいヒットを監視しています。それでも… 事故を完全に防ぐのは、事実上、不可能。もはや現在のアメリカでは、子供たちにアメフトをやらせたがらない親が増えている… というんです。

アメリカ文化の象徴、アメフトが、脳震盪問題で大ピンチ!というお話…。皆さんは、どう思いますか?

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10月11日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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