しゃベルシネマ

浅草の老舗パン屋が二種類のパンだけを販売する理由とは…『74歳のペリカンはパンを売る。』

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第287回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、10月7日から公開の『74歳のペリカンはパンを売る。』を掘り起こします。


売り切れ必至の大人気パン、その美味しさの秘密に迫ったドキュメンタリー


「ペリカン」という名のパン屋さんをご存知ですか?見るからにずっしりと密度のある生地で、しっとりふかふか。シンプルなのに毎日食べても飽きのこない味。パン好きにとってはたまらない、憧れのパン屋さんです。

本作は、ペリカンの舞台裏を追ったドキュメンタリー映画。たった二種類のパンで、何故、毎日長蛇の列が出来るほど不動の人気を築くことが出来たのか、その秘密に迫ります。


浅草にある老舗パン屋「ペリカン」は、2016年に創業74年を迎えた人気店。毎朝4時に職人がパンの仕込みを開始。ペリカンのロゴが目印の店先には、朝8時の開店からすべてのパンが売り切れるまで賑わいが絶えない。

そんなペリカンも、創業当時は様々なパンを販売していたが、現在販売しているのは食パンとロールパンの二種類のみ。それは二代目店主である渡辺多夫が掲げた独自の経営方針で、いまなお続く「ペリカン」のスタイル。昔ながらの素材で作る「ペリカン」ならではの美味しいパンを提供し続けている…。


本作では四代目店長の渡辺陸氏、「ペリカン」の生き字引的存在のパン職人・名木広行氏といった「ペリカン」で働く人々や、経営コンサルタント、喫茶店のマスターなど、さまざまなジャンルの人にインタビューを敢行。そうしてモノ作りの本質と“売れるパンを作る”という商売の本質を浮き彫りにしていきます。

バゲットやカンパーニュ、菓子パンに総菜パン、あらゆる種類のパンが並ぶオシャレなベーカリーが主流の昨今。変わりゆく時代に対応しながら、あえて商品数を絞って“極める”という道を選択した同店の勇気と職人魂に心が揺さぶられます。

数多のパン屋が乱立するなかで、人と争わず、ほかの店と競合せず、ただただ二種類のパンを美味しく作ることを追求し続ける。その姿からは、あらゆるモノづくりや仕事に共通する大切な“何か”に気付かされるのではないでしょうか。


「ペリカン」の店内では、今日も黙々と職人たちがパンを焼いています。木の棚にズラリと並べられているのは、予約済みのパンたち。
焼き上がったばかりの香ばしい匂いがスクリーンから飛び出してきそうです。

パンは人なり。

そんな言葉があるかどうかはともかく、ペリカンのパンからは作り手の食する人を思う気持ちが伝わってきます。この映画を観れば、あなたもきっと「ペリカン」のパンを口にしたくなりますよ。


74歳のペリカンはパンを売る。
2017年10月7日からユーロスペースほか全国順次公開
企画・製作・撮影:石原弘之 
監督・編集・撮影:内田俊太郎
出演:渡辺多夫、渡辺陸、名木広行、伊藤まさこ、保住光男、中村ノルム
©ポルトレ
公式サイト http://pelican-movie.tokyo/

八雲ふみね,しゃベルシネマ

Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.