新富士駅「竹取物語」(1,050円)~十五夜にいただきたい駅弁!

By -  公開:  更新:

【ライター望月の駅弁膝栗毛】

東海道新幹線

N700系、東海道新幹線・三島~新富士間

愛鷹連山をバックに頭を垂れる稲穂の向こうを、時速285kmで走り抜けていくN700系新幹線。
新幹線と稲穂の組み合わせは、ニッポンの秋ならではの風景ですよね。
年に一度の収穫に向け、丹精込めて稲を育ててきた人がいて、時速300kmで走行可能な車両を作るモノづくりの人がいて、それを安全運行という形で人を乗せるサービスを届ける人がいる・・・。
そんな人の営みを見つめる富士山の姿が・・・残念ながらこの日は雲の中でした。

岳南電車

岳南電車7000形、岳南電車・須津駅

東海道新幹線有数の撮影ポイントとして知られる三島~新富士間ですが、この付近へのアクセスに重宝するのが、「岳南電車」です。
岳南電車は東海道本線・吉原駅~岳南江尾駅間、9.2kmをおよそ20分で結ぶローカル私鉄。
現在は元・井の頭線の7000形が主に1両でワンマン運転していて、全駅富士山が見えます。
乗車した車両は、地元高校生の皆さんの手によるハロウィンラッピングが施された車両でした。

竹採公園

富士市・竹採公園(2011年撮影)

ただ私自身、日本に暮らす者として、ハロウィンよりずっと大事なのは「十五夜」!
今年(2017年)の中秋の名月は、いよいよ「10月4日」です。
富士市内を走る岳南電車・比奈駅(ひな・えき)の近くには、この地域に伝わる「かぐや姫伝説」にちなんだ「竹採塚」があります。
一帯は「竹採公園」として整備されており、歴史散策が楽しめます。

竹取物語

竹取物語

そんな富士市に伝わる「かぐや姫伝説」ゆかりの駅弁といえば、東海道新幹線・新富士駅の駅弁屋さん「富陽軒」の「竹取物語」(1,050円)。
誕生からおよそ30年の歴史を誇る駅弁です。
特に昭和63(1988)年3月の東海道新幹線・新富士駅開業で、広く知られるようになりました。
可愛らしいかぐや姫が描かれた和紙の掛け紙には、「JR東海社長賞」の文字も躍ります。

竹取物語

竹取物語

添えられた栞には・・・
『千年の昔、竹取の翁と媼(おうな)に別れを告げて 月の世界に旅立ったかぐや姫。
時を経て、再びこの地に舞い戻った姫は、お土産に山海の幸をいっぱい詰め込んだ小籠を抱えておりました…』といった記述が。
そんな“かぐや姫伝説”の世界観を駅弁という形で作り上げたのが「竹取物語」なのです。

竹取物語

竹取物語

面白いのは、何と言っても「茹で落花生」のおこわ!
実は富士山の南麓は落花生も特産の1つで、一説には落花生塩ゆでの“発祥の地”ともいわれています。
そんな茹で落花生のおこわの上には、筍はもちろん栗、桜海老、金目鯛の塩焼き、ホタテの照り焼きとたっぷりのおかずが載っています。
見た目の華やかさと女性的な優しい味を両立していることが、ロングセラーの秘訣なのかも。
また「竹取物語」の名にふさわしく、竹かごに入っていて、小物入れなどに重宝。
我が家では、居間でお菓子を入れるかごとして使っています。

(参考)富士市ホームページほか

東海道新幹線

700系「こだま」、東海道新幹線・三島~新富士間

ちなみに、富士市に伝わる「かぐや姫伝説」は、月ではなく「富士山」に帰ってしまうのが特徴。
各地に伝わる「かぐや姫伝説」とは、ひと味違ったストーリー展開になっています。
新富士駅は「こだま」のみの停車ですが、ほとんどの列車が数分停まります。
十五夜~十三夜と月が美しく見える時期を迎えた今、コチラも近いうちに“天に上ってしまう(!?)”であろう700系「こだま」の旅に、「竹取物語」のストーリーを紡いでみてはいかがですか?

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

Page top