10時のグッとストーリー

秋田で廃館になった映画館を修繕して再開した千葉県の夫婦のストーリー

番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

きょうは、いったん閉鎖された地方の映画館を、何のゆかりもないのに借り受けて再開させ、地元の人たちが集う場に変えた夫婦の、グッとストーリーです。

御成座

御成座一周年記念セレモニーでの映画館内の様子(御成座 シネマ ファンクラブHPより)

秋田犬(あきたいぬ)の産地として知られ、「忠犬ハチ公」の故郷でもある秋田県・大館市(おおだてし)。2005年、人口およそ7万人のこの街にあった、唯一の映画館が閉館しました。終戦から間もない1952年・昭和27年に開場した御成座(おなりざ)です。

洋画専門のロードショー劇場としてオープンしたときには多勢のお客さんが詰めかけ、3年後に火事で焼失しても、すぐに再建されて、以来50年にわたって、大館市民の憩いの場として愛されてきました。しかし設備の老朽化や、観客減少のため12年前に閉館。解体もされないまま、廃墟のような状態で放置されていたのです。

切替義典

御成座ファンの前でご挨拶をする切替義典さん(御成座 シネマ ファンクラブHPより)

そこに現れた救世主が、現在のオーナー、その名も「切り替える」と書いて、切替義典(きりかえ・よしのり)さん・44歳。

「もともと事業所兼住居として借りたんで、映画館をやる気はまったくなかったんです」

という義典さん。当時は千葉に住んでいましたが、本業の電気通信工事の関係で、大館に長期で住める場所を探すことになり、「空き家」として偶然見つけた物件が、御成座でした。

御成座

御成座 老舗のオーラが漂っています(御成座 シネマ ファンクラブFacebookより)

「ここが映画館だということは、中を見るまで知りませんでした」という義典さん。

実は、映画の観過ぎで目が悪くなり、パイロットになる夢を諦めたこともあるほどの映画好きで、かねてからプライベートシアターを持つのが夢だったので、まさに願ってもない物件でした。

交渉の末、自分でリフォームすることを条件に、格安の家賃で御成座を借り受けることに。改装費を安く上げるため、自分で工事を進めていると、近所の人たちが代わる代わる覗きに来て、こう聞いてきました。「…御成座、また開けるのかね?」

御成座 てっぴー

館内で放し飼いになっている“猛獣の”白うさぎ・てっぴーちゃん とっても可愛いですね!(御成座Twitterより)

「いやいや、社員用の住居と事業所にするんです」と説明していた義典さんでしたが、カビ臭く、ホコリまみれだった映画館がだんだん綺麗になってくると、気持ちが変わってきました。

「また地元で映画を観たい」という人たちが、大館にはたくさんいる。このスクリーンを独り占めしたらバチが当たるぞ…義典さんはついに自分の手で、御成座の営業を再開しようと決意。千葉から家族を呼び寄せ、妻の桂(かつら)さんには、そのとき初めて自分の思いを伝えました。

御成座

御成座ではさまざまなイベントが開催されています こちらはこれから開催予定の『大館御成座 音楽館 アコースティックライブ』(御成座HPより)

「なんで先に相談しないのよ!と思いましたけど、主人が映画好きなのは知ってましたし、本業を辞めるわけじゃないですから、まあいいかなと」夫の夢に付き合うことにした桂さん。

昭和の雰囲気はそのままに、最新の音響設備も設置し、2014年7月7日、9年ぶりに御成座はリニューアルオープン。最近はデジタル上映が主流になっている中、フィルム専門の上映館として復活を果たしたのです。秋田には、フィルムをかけられる映写技師がほとんどいないという問題もありましたが、様々なツテを頼って90代のベテラン技師にお願いし、何とか上映にこぎ着けました。

御成座

御成座一周年記念セレモニーにて 映画サークル絵夢人倶楽部による8ミリ上映会も行われました(御成座 シネマ ファンクラブHPより)

「古い洋画を観て喜ぶ地元の人たちを見ていたら、本当に再開してよかった」という義典さん。

しかし映画館経営を続けていくのは楽ではありません。義典さんは本業で多忙なため、いま実質的に御成座を切り盛りしているのは、妻の桂さんです。「周りから見るといい話なんでしょうけど、儲けなんか出ませんし、休むヒマもないし、本当に大変なんですよ」と苦笑いする桂さん。

それでも義典さんとともに、縁もゆかりもなかった大館で、御成座を守り続けている理由は、
「千葉で普通に暮らしていたら、絶対に出逢えなかった人たちと交流することができましたし、貴重な体験をさせてもらいましたから…」

大林宣彦

憧れの大林宣彦監督と切替義典さんの肩を並べたツーショット!(切替桂さんFacebookより)

義典さんも、憧れの大林宣彦(のぶひこ)監督がトークショーで来てくれたときは、つい泣きそうになりました。映画以外にも、コンサートや落語会などの会場として安く貸し出され、大館市民の憩いの場になっている御成座。

昔懐かしい「手描きの映画看板」も名物の一つで、映画好きの市民がボランティアで描いています。義典さんに、御成座を再開させて印象に残ったことを聞いてみると…

「隣町の、40年前に映画館を閉めたオーナーの奥さんが、当時を思い出して、泣きながら『昔の映写機を見たい』と訪ねてきたことです。大館から映画の灯を消さないように、これからもなんとか頑張っていきたいですね」

御成座パンフレット

御成座パンフレット オシャレでわくわくしますね(御成座 シネマ ファンクラブHPより)

御成座パンフレット

御成座パンフレット 是非、御成座へ足を運んでみてください(御成座 シネマ ファンクラブHPより)

【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年9月30日(土) より

八木亜希子,LOVE&MELODY

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