ライター望月の駅弁膝栗毛

松阪駅「五街道 彩弁当」(1,100円)~奇跡のローカル線・名松線

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

キハ11形気動車

キハ11形気動車、名松線・家城駅

三重県には「名松線(めいしょうせん)」という “奇跡のローカル線”があります。
名松線は、紀勢本線・松阪駅から山間部に向かって伸びる43kmあまりの“盲腸線”。
この家城(いえき)~伊勢奥津(いせおきつ)間は、平成21(2009)年10月の台風被害で運休を強いられていましたが、去年(2016年)3月、運転を再開しました。
災害で廃線になるローカル線が多い中、6年半の歳月をかけて復旧したのは奇跡的なこと。
それゆえに“奇跡のローカル線”と呼ばれているんですね。

家城駅

名松線・家城駅

名松線が“奇跡のローカル線”と呼ばれるのは、他にも理由があります。
まず、国鉄時代の昭和43(1968)年に廃止対象とされた「赤字83線」の生き残りであること。
さらに信号の自動化が進む中で、懐かしい昭和の鉄道風景が、奇跡的に残されていること。
途中、唯一列車のすれ違いが出来る家城駅には、今も駅員さんがいて、列車交換に合わせて、大きな輪の付いた入れ物を持って車両を行き来しており、この風景はJRでは名松線ならでは!
今や路線そのものが、“リニア・鉄道館・三重分館”と呼びたいくらいの存在かもしれません。

名松線

名松線の前面展望

家城駅を出た名松線のキハ11形気動車は、険しい山の間を縫うように走っていきます。
この家城~伊勢奥津間は、国鉄時代から災害が多く、長期運休が多かった区間です。
今回も一度はバス転換の方針が示されましたが、地元の熱意がJRを動かし、安全運行のための治山治水、および維持管理を県・市が行う協定がJRと結ばれました。
地元の皆さんの“鉄道を地域の宝”と思う気持ちが、自分たちの足を守ったのです。

伊勢奥津駅

名松線・伊勢奥津駅

松阪から1時間20分あまりをかけて、列車は終着の伊勢奥津駅に到着。
駅自体は無人駅ですが、地元の施設が併設されており、“人の匂い”がする温かい終着駅です。
「名松線」という名前は、三重県内の松阪と名張(なばり)を結ぶ計画から生まれた路線名。
しかし、近鉄線の延伸などもあって、国鉄線としての開通は、昭和10(1935)年の伊勢奥津までに留まり、以来ずっと、地元の足として使われています。

伊勢奥津駅

名松線・伊勢奥津駅

伊勢奥津駅の名物といえば、何と言っても「給水塔」。
蒸気機関車が走っていた時代の名残りですね。
名松線では、昭和40(1965)年まで蒸気機関車による列車が運行されていたといいます。

キハ11

名松線・伊勢奥津駅で発車を待つキハ11

現在、名松線の主役は、キハ11形ディーゼルカー。
キハ11は、JR東海が非電化ローカル線向けに投入した車両で、今も現役なのは、ステンレスの車体である300番台のみ。
車両の中央部にはボックスシートが設置されており、空いている時間帯の名松線は、始発駅・松阪から駅弁旅を楽しむには、格好のローカル線なのです。

五街道 彩弁当

五街道 彩弁当

『松阪の牛肉駅弁はひと通り食べちゃった・・・』という濃いめの駅弁好きの方なら、いただいてみたいのが幕の内系駅弁。
松阪駅弁「あら竹」の「五街道 彩弁当」(1,100円)は、三重県立相可(おうか)高等学校の食物調理科の生徒さんとのコラボレーション駅弁です。
TVドラマにもなった“高校生レストラン”の生徒さんたちが、レシピを作った駅弁なんですね。

五街道 彩弁当

五街道 彩弁当

【お品書き】
白飯(三重県産コシヒカリ)
黒毛和牛そぼろ煮
梅干し
錦糸卵
松阪の黒毛和牛ゴマ風味あっさり煮
厚焼き卵
鶏だんご
しいたけ煮
さくらのもち麩
野菜のおひたし
煮物(にんじん、ごぼう、こんにゃく)
酢れんこん
かまぼこ
季節の付け合せ
ミニ和菓子

五街道 彩弁当

五街道 彩弁当

掛け紙を外し、竹かごのふたを開けると、白いご飯に赤い梅干し、おかずは煮物たっぷりの懐かしい「駅弁」の世界が広がります!
肉は他の駅弁より少なめですが、黒毛和牛あっさり煮とそぼろ煮で、しっかり「松阪」をアピール!
付添のしおりには、三重の五街道(伊勢街道、伊勢本街道、和歌山街道、和歌山別街道、熊野街道)の簡単な解説なども書かれ、生徒さんらしい“学びのある”駅弁でもあります。

キハ11形気動車

夕暮れのキハ11形気動車、名松線・家城駅

2000年代以降、学生とコラボした駅弁は数多く生まれていますが、多くは期間限定もの。
その中で10年近く継続的に調製され、定番化しているのは、率直に素晴らしいと思います。
高校卒業後、都会へ出て、久しぶりに帰省し、故郷のローカル列車に乗った時、青春時代の「駅弁」が変わらず、通学の駅にあることの感慨はひとしおでしょう。
地元の方のアツい思いが支える「地元の足」同様、作り手のアツい思いが繋ぐ「地元の味」。
そのアツさが“ぬくもり”としてシンクロするから、ローカル線の旅は心も満たしてくれるのです。

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