やじうま好奇心

エッチな幽霊“色情霊”を不倫の言い訳にする?

幽霊といえば「真夏の夜」のイメージが強いと思いますが、世界的にいうと、旬の季節は「秋」なのだそうですよ。幽霊は、秋の日の黄昏どき… すなわち「トワイライトゾーン」にたくさん現れると言われています。そういえば、カボチャのオバケが出てくる「ハロウィーン」も、秋ですよね。

そこで、江戸の昔から伝えられてきた「幽霊」にまつわるお話を。といっても、それほど怖~い幽霊じゃありませんからご安心を。むしろこの幽霊に遭いたい!な~んていうヒトもいるかもしれません。
その幽霊とは… ズバリ!「色情霊」と呼ばれている種類の幽霊なんです。

「色」の「情け」に幽霊の「霊」と書いて「色情霊」…聞いたことありますか?この「色情霊」。ものの本によればこんな説明がなされています。

「色情霊とは、性や恋に対する未練を残したまま死んでしまった者が、その執着から現世で幽霊となり、異性と情交を結ぼうとするものである。」

まぁ小難しくいうとこうなりますが…端的に言うと「エッチな幽霊」のことでありますね。

さて、歴史的な資料の発掘や分析が進みまして、ごく最近分かってきたことなのですが…日本にはこの「色情霊」にまつわる文献が特に多いのだそうです。海外にも艶っぽい幽霊の話がなくはないのですが、ダントツで多いのは、わがニッポン!

そして、ここが大事なポイントなのですが…日本における「色情霊」の話というのは、多くの場合、フィクションではなくホントにあった「実話」「実体験」として、語り継がれているんです!つまり、昔のヒトは本当に「色情霊」なるものが存在する… と信じていたんです。

では、色情霊の体験談とはいったいどんなドキドキするようなシロモノなのか?「随筆」──つまり、「エッセイや日記」として書かれている色情霊の話を紐解きますと、たいていの場合、こんな感じです。

草木も眠る丑三つ時。毎晩のように、水も滴るような美女が、枕元に現れる…。
そして、それが幽霊と知りつつも、関係を持ち続けてしまう…。
すると… いつのまにか、美女の霊に獲りつかれてしまい、男は、見る影もなく、衰弱してしまった…

こういう「精気を吸い取られる」という話がひとつの典型的なパターンとなっているんです。

幽霊

「月百姿」 『源氏夕顔巻』に描かれた幽霊(月岡芳年画 1886年)(Wikipediaより)

さて、有名な怪談にも、色情霊は登場します。ご存じ、お岩さんが出てくる『四谷怪談』…薄幸の美女、お菊が「いちま~い、にま~い」と皿を数える『番町皿屋敷』…。これらと並び称される『日本三大怪談』のひとつに、『怪談 牡丹灯籠(ぼたんどうろう)』という話があります。

講談になったり歌舞伎になったりもしているのですが、『四谷怪談』や『番町皿屋敷』に比べると、知名度はちょいと低いようです。みなさん『怪談 牡丹灯籠』というタイトルは聞いたことがあっても、内容となると意外と知らないという方が多いのではないでしょうか。せっかくですから、ここでちょいと気分を出しまして…『怪談 牡丹灯籠』のハイライトシーンをご紹介しましょう。

牡丹灯籠

牡丹灯籠 – 『ほたむとうろう』(月岡芳年『新形三十六怪撰』)(Wikipediaより)

あるところに、萩原新三郎(はぎわら・しんざぶろう)という名前の、たいそう若い、美男の浪人が住んでいた。
新三郎が眠りにつこうとすると… どこからか、カランコロンという、駒下駄の音が響いてくる。

扉を開け、目を凝らし、闇夜の中を見ると…お付きの者とおぼしき老女が、牡丹の柄が入った灯籠を手に、ゆらゆらと歩いてくる。
そして、そのあとを、この世の者とは思えないほどに美しい女が、楚々として、ついてくる。

「新三郎さま… お逢いしとうございました。
あたしは、旗本・飯島平左衛門(いいじま・へいざえもん)の娘、お露(つゆ)と申します。」

お露に一目ぼれした新三郎は、やがて、毎晩のように、逢瀬を重ねるようになった。
ところが… なんとも、奇っ怪なことに。
日に日に、新三郎の顔が、げっそりと、やつれていくではないか。

不思議に思った、新三郎の知人。
ある夜、塀の隙間から、ふたりの逢瀬を、そっと、覗き見た。

「あぁ… なんということだ。」

新三郎の知人は、歯の根も合わないほどにガタガタと震え始め、その場に、しゃがみこんでしまった。
無理もない。新三郎が抱いていたのは、骸骨だったのである。

骸骨を愛おしそうにかき抱く新三郎。枕元には、不気味に灯る「牡丹灯籠」が鎮座している…。

この『怪談 牡丹灯籠』のベースとなったのは、江戸時代の怪談集『伽婢子(おとぎぼうこ)』のなかに出てくる『牡丹灯籠』というエピソードなのですが…話の骨子は、実際に伝えられている「色情霊の体験談」のパターンと同じです。やはり、美女の幽霊に精気を吸い取られていく… というお話なんです。

ちなみに、こういう「色情霊が出てくる怪談」。細かいことを言いますと、「怪談」という字を充てるのは、間違いなのだそうです。実は… 「開く」という字を使って、「開談」(かいだん)と書くのが正しいのだそうです。いったいナニが「開く」のか??? そこはまぁ、ご想像くださいませ。

伽婢子

伽婢子(おとぎぼうこ)(岩波書店HPより)

さて、さきほども申し上げましたように、色情霊はそこらへんのオバケとは違って「実際に存在する」ということになっていました。まことしやかな目撃談、体験談が、ひきもきらなかったからです。

では…「色情霊」の正体とは、いかなるものだったのでしょうか?
現在では「レム睡眠中に見た夢の話だ」という説が、一般的です。でも… 最近になって、歴史家の間でじつに興味深い説が浮上しているんです。

それは、ズバリ!「色情霊は、不義密通の言い訳の産物だった」という説です。

江戸時代、不義密通(※不倫)は、天下の大罪でした。そんな時代のなか… たとえば、お隣の奥さまとただならぬ関係になった、としましょう。そして、その「現場」を長屋の知り合いに見つかってしまった… としましょう。もしも奉行所に密告されたら、隣の奥さんはただではすみません。そこで…

「あ、あれは違うんだ!あれは、隣のカミさんじゃないよ!似ているけど、色情霊なんだっ!」
「そういやオレ、顔色が悪いだろう!タチが悪いのにとりつかれちゃったなぁ、ちきしょ~!」

な~んて…マァこんなふうに色情霊が「不倫の言い訳」に使われたのではないか… というわけなんです。

文春砲やら、それを受けての大袈裟な謝罪会見やら…いまの不倫騒動はどうにも世知辛い。昔はひとこと、ズバリ!「あれは色情霊のしわざだ!」で済んだ…というんですから、良くも悪くもなんとも鷹揚な時代でございました。

9月13日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
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