フランス人女性 出生率UPのホントのところ~出産、仕事、育児、人生観・・・ニッポンと全く違うシステムと価値観 【ひでたけのやじうま好奇心】

厚生労働省が5月に発表した2015年の人口動態統計によりますと、1人の女性が生涯に産む子どもの数を推計した合計特殊出生率は1.46となり2年ぶりに上昇しました。
経済環境の好転や30~40歳代前半の出産が増えたことが背景にありますが、少子化には依然歯止めがかかっていません。 

このニュースが報じられると必ずセットで取り上げられるのが、「フランスに学べ」との記事。
フランスでもかつて出生率は低下の一途、1993年に1.66まで下がったのが、上昇に転じ、2008年についに2.02まで回復。
以降、ずっと落ちることなく2.0以上をキープしています。 

その本当の理由は何だったのか?
日本は本当に真似できるのか? 

フランス式というとよく言われる「婚外子の権利」や「結婚の形」の話になりますが、そこよりもまず重要な点があります。
それは「フランス人女性の権利」。
その歴史を振り返っておきますと・・・ 

フランスは“自由の国”と思われていますが、1970年代まで、まったく男女平等じゃありませんでした。
家の財産権や、子供の養育権は、父親だけ。
全ての権利を父親が支配していて、日本の家父長制とほぼ同じ、もしかしたらそれ以上に男性に権利が集中していました。

妻には、避妊する自由も、離婚する自由も法律で禁止。

家を出たくても住む場所を自分で決めることが出来ず、夫の許可なくして仕事も出来ず、自分名義の銀行口座も持てず、よって個人の資産も持てず、子供が銀行口座を開設できたことを鑑みると、ついこの間まで女性は子供以下の人権でした。
この前時代的なシステムは19世紀初めに出来たナポレオン法典が脈々と受け継がれてきた結果。
それが変わったきっかけは世界中が社会革命に揺れた時期の1968年五月革命でした。

La_beauté_est_dans_le_rue1 

これを機会にやっと「避妊」「中絶」「離婚」が出来るようになりました。
ただし、カトリック国ですから、離婚は協議離婚のみで、今もとても時間がかかります。 

こうして権利を手にした女性たちは仕事を始めるようになり、フランス女性の25歳から49歳の就労率は現在85%。
働かずに主婦をするのは本当の上流階級だけで、主婦に憧れている人は皆無。
主婦という職業はなく、職業欄は「無職」となります。
こうした点でも、日本女性と考え方が大きく違います。 

フランスから主婦が消え、女性が仕事を得て経済的に自立するようになると、どの先進国でもよくあることですが、“晩婚化が進む”。
そして出生率がどんどん下がって、1960年代前半は2.9だったのが1975年に2.0を割ります。

だからと言って、女性たちから「権利をはく奪する」とか「主婦になれ」とか、どこかのアタマの固い親父たちが言うのは、全くナンセンスな話。さすがにフランスではそうはならなかった。

その後、1995年に出生率がV字回復を見せるのですが、その方法に目を見張るものがありました。一言、特効薬はない。
様々な方策を複合的に行ってこそ、V字回復となったのです。 

その具体的な方策をお話する前の大前提として、フランス人女性は「子供か仕事か」という二者択一を迫られていません。
結婚する、しない。避妊する、しない。子供を産む、産まない。
2人目、3人目を産む、産まない。一人で暮らす、パートナーと暮らす。
・・・などの様々な選択肢を人に左右されずに自由に自分でアレンジ出来る、という高い意識を持っています。

その女性の意識、プラス、後押しする「社会の制度」が重要ということになります。
フランスの出生率が2人台に回復した大きな背景は、不妊治療の充実した支援政策があります。
フランスの女性は、43歳の誕生日まで不妊治療を4回まで、人工授精、体外受精を問わず、無料(!)で受けることが出来ます。
1回50万円ほどかかる費用が無料とはスゴイ。 

フランスの初産の年齢は30歳越えと遅い。
しかし、そのあと30代後半、40代で2人目、3人目をどんどん産んでいくのが主流になっています。
しかも、帝王切開は女性への体のラインを美しく保つことを考え、横に切るのが主流。日本のように縦には決して切らない。 

また、出産後すぐに仕事復帰できるのは、どこかの国にあるような「母乳で育てた方がイイ」という“母乳至上主義”という考えがない。
お母さんの負担は少なくて済むのです。 

さらに、フランスには、正社員でも契約社員でもパートでも「3年間、職場のポジションキープ協定」というのがあって、現状維持の職場と地位が保障されている。
これがあるから、安心して子供を産んで育てられる。 

職場に復帰したら、「公立子ども園」に入れられる。
3歳から5歳の全ての子供が通い公立の幼児学校で、国の教育機関で授業料は無料。フルタイム。これはありがたい。
それより小さい子供は、民間に預けるシステムが豊富。
フランスは、教育に国家予算の20%を使っているのです。

母親だけではない。父親にも家族と過ごしやすくするために、2000年から施行されたのが「週35時間労働法」。週35時間以上働いてはいけない、という法律で、1日7時間、平日5日勤務。仕事が終わったらしっかり家に帰って、子育てをするという環境が整っているのです。
ちなみに、意外に思われるかもしれませんが、フランス人は集中して効率よくする仕事をする、とフランス人本人たちが言っています。
フランスの出生率アップ、というと必ず持ち出されるのが「婚外子への権利」。
摘出子と完全に平等で、結婚しないことに何の弊害もないことも、もちろん要因となっています。
しかしフランスの婚外子は60%、日本は2%。日本とは事情が違いますね。 

婚外子がこれだけ認められるその理由は、フランスは、アムール至上主義”。
最後に、その愛情=アムールに対する土壌が全く違うお国柄がわかる話を。 

サッカーワールドカップに参加する選手の妻はもちろんのこと、恋人にも予算を付けて、帯同させること。その予算2,650万円。

Reagan_Mitterrand_1984_(cropped)1

ミッテラン元大統領に隠し子が発覚した時、報道陣に問われて、「それで?」と聞き返し、以降誰も何も言わなかった。
フランスでは、婚外子はスキャンダルにならない、と言う証。

François_Hollande_(Journées_de_Nantes_2012)1 

現大統領のオランドさんは、事実婚の女性との間に子供4人。
不倫中の愛人と逢引するために、真夜中に官邸をスクーターで抜け出したところをスクープされたときは、人々はオランドを責めるのではなく、「大統領の警備はどうなっている!」とセキュリティが問題になった。

つまり大統領のアムールは容認・・・。 

出生率アップの土壌がフランス人のアムールへの考え方にあることは間違いありません。それは日本にはないもの、と言えます。
よって日本はただシステムだけを真似してもどんなものか・・・と考えさせられますが、いかがでしょうか?

※画像はWikipediaより

6月7日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より