解散は忘れた頃にやってくる【イイダコウジ そこまで言うかブログ】

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 先週水曜についに通常国会が閉幕しました。注目された不信任決議案を受けての衆議院解散や麻生財務大臣の「増税しないのならば解散して信を問うのが筋だ」といった進言にも乗らず、消費税増税延期・ダブル選挙はせずで決着しました。メディアでは同日選回避を受けて、ではいったい総理はいつ解散するつもりなんだ?という観測記事が載りだしています。
『とりあえず衆参同日選は封印したが...消費増税再延期で「伝家の宝刀」はフリーハンドに 次なる一手は...』(6月5日 産経新聞)http://goo.gl/plhSNq
<安倍晋三首相は消費税率10%への引き上げを平成31年10月まで2年半延期した。自身の自民党総裁任期(30年9月)を超えた先に増税時期を設定したことで、首相は任期いっぱい消費増税の判断に縛られずに、与党に有利な局面で衆院解散に打って出ることができる「フリーハンド」を得た。現在の衆院議員の任期は平成30年12月。"伝家の宝刀"を抜くタイミングはどこか-。>
『総裁選も絡む「衆院解散」 浮かぶ3シナリオ』(6月6日 日本経済新聞)http://goo.gl/fHxcFp
 今年後半の臨時国会か、来年初めの通常国会冒頭か、あるいはさらに先になるのか...?どんどん先に話が行っていて、当然ですが同日選の目はもうなくなったとされていますが、実は"制度上は"まだ同日選もできることはできます。ここから先は、ある意味高校時代の政治・経済の勉強のおさらいだと思ってください。アタマの体操として、制度上いかにして解散するのか?
 まず問題となるのは、国会が閉まっても解散は出来るのか?というところ。政府見解によれば、できます。というのも、日本国憲法を制定するにあたって開かれた国会の委員会でこの問題が早くも議論されていて、制度上はできると担当の金森国務大臣が答弁しているのです。
『憲法審査会関係会議録 委員会 昭和21年7月20日』(衆議院HP)http://goo.gl/QTrHdy
<○金森国務大臣 (中略)此ノ際極ク安全ナ御答ヘヲ致シマスレバ、ヤハリ解散ト云フモノハ今マデ用心深ク政府ガヤツテ来タト同ジヤウニ、今後モ議会ノ開カレテ居ナイ内ニ、解散ヲスルト云フコトハナイデハナイカト思ツテ居リマス、併シ理論的ニ所見ヲ言ヘト云フコトヲ申サレマスレバ、勿論解散ハ出来ルモノト思ツテ居リマス>
 運用上、また国民の信を問うという事の性格上、閉会中の解散はないであろうが、純粋に理論上は可能であると答弁しています。ただし、過去の同日選も含め、衆議院の解散を閉会中に行った例はありません。あの1986年の「死んだふり解散」も、実は臨時国会は召集されていました。ただし、議場での万歳なしでの解散だったので、閉会中の解散に近い印象を関係者に残しました。
 この年は5月22日までの通常国会がつつがなく終わりました。そのまま予定されていた参院選への選挙戦に突入していったわけなんですが、5月27日の閣議で、6月2日からの臨時国会の召集を閣議決定。その日に解散しました。
 臨時会招集の権限が内閣にあることは日本国憲法53条前段に記述があります。
<内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。>
 そして、先例では解散は本会議を招集しなくてもすることができます。本会議が開かれていない場合には、衆議院議長応接室に各会派の代表議員が参集し、解散詔書を議長が朗読して解散となり、各議員に対しては衆議院公報をもって通知することになっています。上記死んだふり解散は、この議長応接室での詔書朗読によって行われたものです。
 前例のない閉会中の解散であれば日程的な縛りはありません。しかし、死んだふり解散のように臨時国会を召集しての解散で衆参ダブル選挙となると、日程的な縛りが出てきます。それは、衆議院選挙ではなく、ダブルの相方、参議院選挙側の事情です。
『公職選挙法』(e-Gov HP)http://goo.gl/CBdWd
<第三十二条  参議院議員の通常選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う。
2  前項の規定により通常選挙を行うべき期間が参議院開会中又は参議院閉会の日から二十三日以内にかかる場合においては、通常選挙は、参議院閉会の日から二十四日以後三十日以内に行う。>
 解散のために臨時国会を召集するとなると、その閉会日(=解散日)の期日によってはあらかじめ想定されていた投票日がズレる可能性が出て来るんですね。
 さて、今回改選の参議院議員の任期を調べると、今年7月25日まで。その30日前というと、6月25日。6月1日の通常国会閉会日はギリギリ第2項に引っかからない絶妙な期日なんですが、もし臨時国会を召集して解散した場合、7月10日の投票日を動かさずに解散しようとするといつなのか?
 第2項の<閉会の日から二十四日以後三十日以内に行う>から考えると、7月10日の30日前は6月11日。同24日前は6月17日。この6月11日~17日がピンポイントでダブル選が出来る最終日程となります。
 そのために臨時国会召集の閣議決定を、仮に火曜と金曜の定例閣議で行うとすると7日(火)、10(金)、14(火)...。
 今日行われた桝添東京都知事の会見、そして明日以降の東京都議会での都知事答弁などがどこまで作用するのか?これが政権の支持率を押し下げるようになれば、総理がさらなる「新しい判断」をするかもしれません。解散の火はあらかた消し止められた格好ですが、今だに熾火のようにくすぶる火種が一つだけ残っている状況です。

(飯田浩司アナウンサー「そこまで言うかブログ」 2016年6月6日)

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