あけの語りびと

鳥取砂丘に現れる〝砂丘ガエル〟の謎を追え!

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
上柳昌彦あさぼらけ 『あけの語りびと』

鳥取砂丘

鳥取砂丘 – 馬の背(Wikipediaより)

鳥取砂丘……一生に一度は行きたい景勝地の一つですが、この鳥取砂丘で30年前から「カエル」が目撃されていることをご存知でしょうか?
アマガエル、トノサマガエル、ウシガエルなどが毎年目撃されて地元のニュースでは、「今年も〝砂丘ガエル〟が現れました」と風物詩になっています。

水辺を好むカエルが乾燥した砂丘で生きられるのか?この「砂丘ガエルの謎」を解明しようと調査・研究を始めたのが、公立鳥取環境大学・環境学部2年生、千葉駿(はやと)さん、20歳。

千葉駿

〝砂丘ガエル〟の謎に挑む千葉駿さん

千葉さんの名前、「駿(はやと)」は、宮崎駿(はやお)監督と同じうまへんの駿(しゅん)と書きます。母親が宮崎駿監督の「もののけ姫」を見て感動し、その年に生まれた息子に駿(はやと)と名付けたそうです。ですから子供の頃から虫や生き物が大好き!東京の大田区で育ち、小学校の行き帰りにセミの抜け殻を集めたり、カブトムシを幼虫から育てたり、教室でメダカの飼育係になったり。

読む本も生物関係が多く、ある日、図書室で手にした本、動物行動学の小林朋道(ともみち)教授の人気シリーズ『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』『先生、ワラジムシが取っ組みあいのケンカをしています!』そんな『先生シリーズ』を夢中で読んだことがキッカケとなり、小林教授が教鞭をとる、公立鳥取環境大学へ進学します。

「いままで山梨より遠いところへ行ったことがなかったんですが、鳥取はバスが少ないこと以外、不便なこともなく、環境は抜群!それにスタバもできましたし!」

と笑います。

トノサマガエル

鳥取砂丘で見つけたトノサマガエル

大学に入った去年6月、実習で鳥取砂丘に出かけたとき、千葉さんは初めて「砂丘ガエル」に遭遇!東京でカエルを見たことがなかった千葉さんはすぐに飛びつきます。1年生のとき、鳥取に棲息するカエルを調べ、2年生になった今年5月から、「砂丘ガエル」を研究テーマに毎週土日、夜9時から11時まで砂丘で調査を開始!アパートから自転車をこいで40分。砂丘の入り口に着くと、そこからカエルが出没するポイントまで歩いて行きます。

「僕も知らなかったんですが、広い砂丘には一部に草地があり、長さ100mの小川やオアシスと呼ばれる水たまりもあるんです。ここでトノサマガエル、ニホンアマガエル、ウシガエルの3種類が目撃されていたんですが、僕が調査した3ヶ月間で、さらにニホンアカガエル、ヌマガエルが見つかり、同じカエルを含めず、54匹を確認しました」

鳥取砂丘

鳥取砂丘は砂漠だけじゃなく草地や小川、オアシスと呼ばれる水たまりもあります

都会っ子の千葉さんにとって砂丘の暗闇は初めての体験!一人だけの調査なので心細くなることもあります。見上げると夏の星座が励ましてくれます。ときには蚊の大群に襲われ何十ヶ所も刺されることもあります。こういう調査で殺虫剤や蚊取り線香を使うわけにはいきません。

さて、水もあって、草もあって、餌になるバッタやクモもいる。虫なら砂丘の外から飛んできて、オアシスに棲みついても不思議じゃありませんが、カエルはどこから来るのか?

「オアシスで、カエルの卵やオタマジャクシは見つからないんです。だから、ここでのライフサイクルはいないと思うんですよ。8月に入って1センチほどのカエルの子どもを何匹も見つけたので、砂丘の外からやって来たとしか思えないんです」

ニホンアマガエル

ニホンアマガエル(2017年6月10日撮影(左)・2017年7月8日撮影(右))

鳥取砂丘の近くに「多鯰ヶ池(たねがいけ)」という大きな池があって、そこには数多くのカエルが棲息しています。池からオアシスまでおよそ1キロ。途中に国道が走っています。その国道を運良く渡り切ったとしても、真夏の砂丘は地表温度が50度を超えます。
乾燥に弱いカエルがはたしてオアシスまでたどり着けるのか……

「謎は深まるばかりですが、いまは調査を続け、データを集めて、大学を卒業するまでに『砂丘ガエルの謎』を解明したい」

と千葉さん。

「たまに、この研究が学術的に価値があるのか、考えちゃうことがあるです。でもあのクリクリっとした可愛い目を見たら、土日の夜中でも自転車をこいで会いに行きたくなるんですよ」

いま、鳥取砂丘で将来が楽しみな生物学者の〝卵〟がすくすくと育っていることは、間違いありません。

ヌマガエル ウシガエル

ヌマガエル(2017年7月8日撮影)・ウシガエル(2017年7月15日撮影)

2017年9月6日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

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