西武・辻発彦監督 監督就任を決めた落合博満の一言とは?

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辻発彦 栗山巧

【日本ハム対西武】八回、2ラン本塁打を放った西武・栗山巧を出迎えるベンチの辻発彦監督=2017年8月20日札幌市・札幌ドーム 写真提供:産経新聞社

2戦連続で、首位ソフトバンクに完封負け。レギュラーのユニホームに戻ったとたん、こんなに弱くなる-とファンの嘆きが聞こえそうです。期間限定の炎獅子で20勝4敗。勝率8割3分3厘を誇っていただけになおさらでしょう。とはいえ、シーズンはこれからが正念場。もっか3位の西武は、2位楽天を2ゲーム差で追っています。今度は指揮官の腕の見せ所。

とはいえ、今季、ここまでチームが躍進するとは思わなかった。1にも2にも、4年連続のBクラスを立て直した辻監督の手腕は、すごいと言わざるを得ません。選手としてリーグ優勝10回。日本一が7回もあり、コーチで3回の内に、日本一が2回も本当にすごい。昨年、中日のコーチにもかかわらず、西武からオファーを受けた際、こんな裏話があります。すでに、退任が決まっていた落合GMは、後任の森監督の参謀役は、辻さんと決めていたそうです。

辻さんも、西武側への返事を待ってもらい、落合GMに直接相談したそうです。

「どのオファーだ」

と落合さんが水を向けると、

「監督です」。

「それなら、出してやる」

と送り出してもらった。仮に監督以外ならば、中日だったようです。1995年以来、22年ぶり、古巣へ戻りました。現役から指導者まで、仕えたのは、西武が広岡、森。ヤクルトでは野村といった歴代の名将ばかり。加えて、06年のWBCの王ジャパンで、守備走塁コーチをつとめた。

中日監督時代の落合さんが白羽の矢を立てたのも、優勝経験が豊富だったから。西武へ戻ると、担当記者との雑談で、いろいろなエピソードを語っています。

「若いときに苦労していなかったら、今のおれはない」。

中でも、広岡さんには強烈な印象を受けました。

「よくメガネの奥がきらりと光る、というだろう。広岡さんがそうだった。思い出に残るのは、左足の前で捕球しろと何度言われたか。基本の『き』を繰り返して…。こっちもうまくなったところを見てもらいたいから、ノックをお願いします、と頭を下げても、おまえのやり方では、おれのノックを獲れない。サラリとかわしてしまう人だった」。

では、森さんはどうだったのでしょう。活躍できず、辻さんが落ち込んでいると、

「なんでそんな顔をしている。おまえのおかげで何試合勝たせてもらったか、と肩をもんでくれた」

と言います。落合さんについては、

「選手第一で考える人。何があろうと、選手の側につく。だから、選手へ怒ることもなかった」

と振り返っています。さまざまな経験から、

「すごい人たちのいいところだけを自分なりに考え、出しているだけだ。うまくいっていると思うかい」

と、担当記者へ問いかけている。

選手とは、1対1でじっくりと話す。盗塁のサインを出していいかなど、秋山や浅村などの主力へ事前に根回しするほど。今年から、浅村のキャプテン就任など、辻監督ならではの刺激策も大奏功。存在は地味ですが、対話型のスタイルは、現在のプロ野球には最も合っていると言えるかもしれません。

8月24日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」

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