トヨタとマツダ 提携拡大に思う

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【報道部畑中デスクの独り言】

「今回の資本(提携)は“結納金”みたいなもの…」

8月4日、トヨタ自動車とマツダが資本業務提携を正式に発表しました。
環境対応車、安全分野についての包括提携から2年。2年前は「婚約会見」と語ったトヨタ・豊田章男社長は今回「結婚会見」になぞらえ、冒頭のように語りました。

トヨタ マツダ

トヨタ・マツダの資本提携会見 東京都内、水天宮近くのホテルでは多くの報道陣が詰めかけた

今回の提携の合意内容は「EV=電気自動車の共同開発」「自動運転など先進技術で連携」「アメリカでの工場共同建設」「トヨタがマツダに商用車を供給」…主にこの4点です。

しかし、「結婚会見」の柔らかな雰囲気とは裏腹に、豊田社長の口から挑戦的な表現が次々と飛び出しました。
「トヨタの“負け嫌い”に火をつけた」「全く新しい業態のプレーヤーが私たちの目の前に現れている」「未来の車を決してコモディティ(汎用品)にしたくない」…

豊田章男 小飼雅道

握手を交わすトヨタ・豊田章男社長(左)とマツダ・小飼雅道社長(右)

私は2年前に両社が包括提携を交わした時、日本の自動車業界がいよいよ「オール・ジャパン」体制で、世界へ打って出るきっかけになるのではないかと思っていました。
トヨタは国内首位、世界でもグループでトップ3に入る自動車メーカーですが、弱点はあります。それはスポーティ・イメージの希薄さ、そしてエンジン技術と言われていました。

前者はLFAや86など、スポーツ車はあるものの、それが会社としてのイメージになかなか結び付きません。
後者はハイブリッド車(以下、HV)、その礎の一つ、電気制御技術に圧倒的な強みを持ちながら、エンジン技術が「お留守」になっていたと言われました。その後、トヨタは抜本的なエンジンの改良に乗り出し、現在、TNGA(TOYOTA New Global Architecture)という開発体制の改革にも取り組んでいます。

一方、マツダはすでにトヨタのTNGAに相当する取り組みを進めていました。「SKYACTIV」がそれです。さらにマツダにはロードスターに代表されるスポーティなイメージがあります。

つまり、マツダはトヨタにないものをことごとく持っていました。得意な市場もトヨタは日本国内と北米、マツダは欧州と、「住み分け」ができています。そして国内生産拠点は東海地方を中心に東北・関東・九州と工場を持つトヨタ、瀬戸内中心のマツダ…見事なまでの補完関係にあります。
包括提携から2年、「潜在的魅力を感じさせてもらった」(豊田社長)、「(トヨタ関係者は)とってもいい人柄の皆さん」(マツダ・小飼雅道社長)…融和も進んできたようです。

一方、トヨタはすでにダイハツ工業、日野自動車工業のほか、SUBARU、いすゞ自動車と数多の国内メーカーを傘下に収めています。もっともその関わり方には差があります。
ダイハツはトヨタの完全子会社、日野は連結子会社であり、それぞれグループの軽自動車部門、トラック部門を担うのに対し、SUBARUはトヨタが筆頭株主、いすゞは主要株主であるものの、ダイハツ・日野ほどの密接な関係はありません。
一方でダイハツのライバルであるスズキとも提携を模索しています。そして今回のマツダとの資本提携は両社の株の持ち合い…様々な試行錯誤を重ねていることがうかがえます。

着々と打たれる布石、トヨタを核にした「オール・ジャパン体制の確立」…今回の会見でそれは確信となりました。さらにそれは自動車業界に限ったものではありません。

次世代自動車の開発はIT業界など自動車業界以外をも巻き込むものとなりました。車が「コンピュータのついた乗り物」なのか?「走るコンピュータ」になるのか?これは大きな違いです。業界を超えた競争激化の中で「自動車会社として主導権を絶対に渡してはならない」…そんなトヨタの覚悟を感じたわけです。

トヨタ・ミライ

「究極のエコカー」と言われる燃料電池自動車「トヨタ・ミライ」

日本には半世紀以上前、自動車産業を国策として再編する動きがありました。当時、通産省(現・経済産業省)は「日本の自動車メーカーは2社だけでいい」と提唱していたといいます。その2社とはトヨタと日産、再編には銀行も加わり「興銀自動車構想」とも呼ばれました。
結果、日産はプリンス自動車工業、愛知機械工業、富士重工業(現SUBARU)などの自動車メーカーと相次いで合併・提携します。

一方、トヨタはこうした合併・提携は自らの体力を弱めるとして、頑として首を縦に振らず、本社所在地に例え「三河モンロー主義」とも言われました。時代は下り、日本の自動車メーカーは現状、トヨタグループに「日産・三菱(+ルノー)」連合、そしてホンダの3陣営に収斂されつつありますが、トヨタが半世紀前とは違う形で「オール・ジャパン」としての意識を高めているのは歴史の面白いところです。

一方、今回の資本提携にはEVの共同開発が含まれています。その背景として「トヨタがEVで出遅れている危機感のあらわれ」という見方がありますが、トヨタにはHVだけでなく、FCEV=燃料電池車、PHV=プラグインハイブリッド車などもラインナップし、いわば「全方位外交」を進めています。
「PHVからエンジンをとればEVになる」…以前トヨタの幹部に聞いた言葉です。要素技術は着々と蓄積しており、局面が変わればいつでも対応できるという一種の自信を感じました。むしろ、トヨタという“巨艦”がひとたび「EV主体」に舵を切れば、先行他社はあっという間に駆逐されてしまうでのはないかという別の意味での危機感を感じます。

プリウスPHV

2017年2月「プリウスPHV」の発表会 青いドレスは石原さとみさん

言葉は悪いですが、かつてトヨタは様々な分野でこのような「後出しジャンケン」で市場を席巻してきました。古くは大衆車の世界で「サニー」を「カローラ」が抜き去りました。ハイオーナーカー分野で「ローレル」に対する「マークⅡ」しかり、ミニバンの世界では「ストリーム」に対する「ウィッシュ」しかり、「エルグランド」に対する「アルファード」しかり、そしてSUVの世界では「ヴェゼル」「ジューク」に対する「C-HR」しかり…とこんな具合です。

歴史は繰り返すことになるのか?あるいは「車 110年目の大転換」(日経)のように、車のエネルギー源が大きな転換点を迎えている中、そう簡単にはいく話ではないのか?そしてそのエネルギー源の転換は、系列部品メーカーにどのような影響を及ぼすのか?そちらにも大いに注目したいと思います。

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