しゃベルシネマ

難病をも超える強い想いは、母への愛情『いつも心はジャイアント』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第256回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、8月19日から全国順次公開の『いつも心はジャイアント』を掘り起こします。

スウェーデンのアカデミー賞 ゴールデン・ビートル賞で3部門受賞の人間ドラマ


頭骨が変形する難病を抱え、施設で生活している青年、リカルド。
彼には父親はおらず、母親は精神を病んで別の施設で暮らしていた。
母に会うことも出来ず、特異な風貌から差別を受ける辛い日々が続くなか、リカルドは自分が巨大化した不思議な世界を空想することで日々を過ごしていた。

ある日、ペタンクという球技に出会ったリカルドは、練習を通じて、親友のローランドをはじめ、多くの仲間を得ることに。

そこでリカルドは、ペタンクの北欧選手権に出場することを決意する。
大会で優勝することが出来れば、きっと母に元気を与え、一緒に暮らせる日が来ることを夢見て…。

スウェーデンのアカデミー賞であるゴールデン・ビートル賞で、作品賞を含む3部門に輝いたヒューマンドラマが日本にやって来ました。

難病を抱えた青年が前を向いて生きていく姿を情感豊かに描いたのは、これまで短編を中心に活躍しているヨハネス・ニホーム監督。
ニホーム監督にとっては本作が初の長編映画となります。

ちなみに主人公のリカルドが夢中になるペタンクとは、ヨーロッパで盛んなフランス発祥の球技。
日本で言えば、ゲートボールに近いスポーツでしょうか。
幅広い年齢層が楽しめる競技で、一見簡単なようですが、球をコントロールするためにはかなりの技術が必要なのだとか。

本作では、リカルドの外の世界と内面をふたつの映像表現を巧みに使い分けて表現しています。
外の世界は、リアリティ溢れるドキュメンタリー・タッチの映像で。
そうすることにより、彼が受けるいじめや偏見がより醜く辛辣に、観る者の目に映ります。

一方、彼の内面世界を表現する映像は色彩豊か。
巨人となった幻想の世界は、観客をもファンタジーの世界へと誘います。

とは言え、この映画は“現実逃避”を薦めているわけではなく、むしろその逆。
たとえ社会的弱者であっても、その環境に“気付く”ことで、社会に適応していくことが出来る可能性を本作は訴えています。

人間の差別意識や悪意を本当の意味で根絶することは難しい。
しかし、どんなに不快なことがあったとしても、常に別の世界から差し込む一筋の希望があるということを…。

クリスティアン・アンドレン演じるリカルドに施された顔面の特殊メイクには最初は驚いてしまうかもしれませんが、逆境にも負けずひたすらペタンクに打ち込むリカルドからは、生きることの美しさと逞しさがあふれています。
その純粋な魂に触れると、愛おしさを感じずにはいられませんよ。


8月19日から新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督・脚本:ヨハネス・ニホーム
出演:ヨハン・シレーン クリスティアン・アンドレン アンナ・ビエルケルード ほか
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公式サイト http://www.giant-movie.jp/

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