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郷ひろみ初期の傑作はアイドル曲とは違う「異物感」【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

 昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード。デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡り、昔のレコードを集めている平成世代も増えているようです。
そんなアナタのために、ドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が、「ぜひ手元に置きたい一枚」を、アーティスト別、ジャンル別にご紹介していきます。

いよいよ8月、夏本番になりました。先日、ジュリーのデビュー50周年全国ツアーが始まった話をしましたが、実はもう一人、この暑い盛りにデビュー45周年ツアーを行っている歌手がいます。御年61歳、1972年に歌手デビューした郷ひろみです。そのエネルギッシュな活躍ぶりはご存じの通りですが、18年前、仕事でお逢いしたことがありまして。挨拶のとき、いきなり「ゴーです!」と右手を差し出されたのはビックリしました。いやもう大感激ですが、聞けば、初対面の相手には誰にもそうするんだとか。
「夜9時以降は、一切何も食べない」「家に一人でいるときも、常に『郷ひろみ』であることを意識する」などなど、ストイックな生活ぶりもそのとき伺ったんですが、おそらくデビューして45年、ずっとそういった緊張感を失わず、第一線を走り続けてきたんだと思います。そんなヒロミゴーがデビューした70年代前半、彼を楽曲面で支えたのが筒美京平であり、作詞面では岩谷時子でした。今回はこの二人が書いた、グラム歌謡の先駆ともいえる初期の傑作をご紹介していきましょう。どれもジャケ写込みで持っておきたい一枚です。

【その①】・・・『男の子女の子』(1972)

あまりに有名なデビュー曲ですが、発売日は72年8月1日。ちょうど45年前の今頃でした。当時の所属事務所はジャニーズで、先輩・フォーリーブスの弟分としてデビュー。その半端ない美少年ぶりで、たちまち兄貴分の4人を人気面でも凌いでいくわけですが、大河ドラマ(『新・平家物語』)に出演して顔を売った後、満を持して岩谷?筒美コンビが書き下ろしたのがこの曲です。
しかし改めて思うのは、よくこんな単純明快なタイトルを付けたなあと。曲の内容も「僕“たち”男の子」が「君“たち”女の子」に「おいで遊ぼう」とモーションをかけるだけの内容ですが、男子も女子も“たち”と複数形になっているのがミソ。そう、これは僕とあなたの個人的なラヴソングではなく、もっと広い意味での「人間愛」を謳っているのです。
それを当時まだ16歳の美少年・郷ひろみが、「キミは男の子なの?女の子なの?」と問いたくなる独特の声で高らかに歌い上げる。この曲がいきなりオリコン8位にランクインしたのは、従来のアイドルが歌っていた楽曲とは明らかに違う「異物感」があったからだと思います。その異物感を、郷ひろみはずっと抱えながら現在に至っている。いまこの曲をシレッと歌えてしまえるのも、そこが一貫しているからです。第一弾にこの曲を持ってきたジャニーさんの凄さを改めて噛みしめていただきたいなと。エジソン・ライトハウス『恋のほのお』(1970)のフレーズがチラチラ見える楽曲も、筒美京平グレイト。300円前後で入手可能です。
【その②】・・・『裸のビーナス』(1973)

まずこのジャケットに注目。ハッキリ言って、中途半端なアイドルがこんなギリシャ神話かローマ神話か?みたいな格好をしたら、それはギャグでしかありません。しかし郷ひろみが着たら、みごとに様になってしまう。これも男なの?女なの?という両性具有的なテイストがいいのです。少年よ神話になれ。
実はこのジャケット、折り返し面を伸ばすと全身ピンナップになるという、当時よくあった作りになっているのですが、敢えてその写真は掲載しませんので、ぜひ現物を手に入れて、伸ばしてお楽しみください。歌謡史上屈指のグラムなジャケットであり、これだけでも本曲を手に入れる価値はあります。
で、この曲も歌詞が艶めかしい。いや、ヤらしいワードは一切出て来ないんです。出て来ないんですよ。でも「お日さまが見てるだけだよ」「燃えながらゆれている ぼくたちのさんご礁」ってフレーズ、なんか背徳的というか、グッと来ませんか?この辺はまさに、岩谷時子の真骨頂です。
そしてこの頃になると、郷の歌声にもツヤが生まれ、「男なの?女なの?」に加えて「少年なの?オトナなの?」という危うさも…。それが聴く側をゾクゾクさせるんですよねえ。ジャニーズ時代を象徴する一枚だと思います。500円前後で入手可能。
【その③】『花とみつばち』(1974)

郷ひろみという存在自体の妖しさ。この曲はさらに一歩進んで、その妖しさを敢えて前面に押し出した快作です。郷本人もそこを自覚した上で楽しんで歌っており、それが後に『お嫁サンバ』や『ジャパ?ン!』のエンターテイメント路線に繋がっていくわけですが、その話は置いといて。
二人の関係を、花とみつばちに喩えた歌詞は秀逸で、「君と僕の二人が おぼえたての蜜の味」って、これまた妙に艶めかしいんだよなあ。そのヤらしさを中和しているのが、筒美京平の職人ぶり。よく聴くと本曲、キンクスの『All Day And All Of The Night』のおいしいフレーズを、うまーく頂いちゃってるんですよね。いや、決してパクリじゃないんです。「ロックの歌謡化」と言うのが正しい。
ちなみにキンクスの同じ曲を、ドアーズのジム・モリソンは『Hello, I Love You』でマンマ頂き、キンクス側に訴えられて大変なことになるんですが、本曲の場合は、ヒロミゴーが歌った時点で「別モノの歌謡曲」として成立しちゃうんですよね。いかにも70年代の遺物的なジャケットの衣裳も最高!これも300円前後で入手できますので、ぜひ。

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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