6月2日は横浜の「開港記念日」!~横浜駅「シウマイ弁当(開港祭バージョン)」(800円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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JR横浜駅に入ってきたのは、東海道線の主力・E233系電車。
「6月2日」は横浜の「開港記念日」!
もしかしたら横浜市内の小・中学校は「お休み」の所も多いかもしれません。
安政6(1859)年6月2日、太陽暦では1859年7月1日、横浜は幕府がアメリカをはじめ各国と結んだ条約に基づいて「国際貿易港」として開港されました。
日米通商修好条約では7/4の独立記念日になっていたそうですが、ロシアが7/1のほうがキリがいいと言い出して、この日になったといわれています。
(参考:横浜市ホームページ

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開港と共に発展を遂げてきた「横浜」、人の流れや物流を支えてきたのが他ならぬ「鉄道」でした。
明治5(1872)年、新橋~横浜間に開通した鉄道ですが、最初の「横浜駅」は今の桜木町駅の所にあったというのは有名な話。
古地図や昔の絵を見ますと、今の京急神奈川駅付近から入り江の真ん中が埋め立てられて、左に弧を描いた線路が伸びています。
この埋め立てに功績があった明治時代の実業家・高島嘉右衛門(かえもん)の名は、今も地下鉄の「高島町」という駅名などに残っています。
ちなみに、現在の位置に「横浜駅」が移ってきたのは、昭和3(1928)年のこと。
今も京浜東北・根岸線のE233系電車がカーブを描いて横浜駅に入ってくると「昔は海の真ん中を走ってたんだろうな」と思ってしまったり・・・。

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そんな横浜の名物といえば、押しも押されぬ「崎陽軒」の「シウマイ」!
この「シウマイ」が入った黄色い掛け紙でおなじみなのが「シウマイ弁当」(800円)です。
実はこの「シウマイ弁当」の掛け紙、例年「横浜開港祭」の時期は、神奈川地区のみ”特別バージョン”になります。
神奈川地区のみというのは、実は「シウマイ弁当」には横浜の「本社工場製」と「東京工場製」の2種類が存在。
「本社工場製」は今も「掛け紙」と「とじ紐」でキュッと結ばれたタイプのもので、横浜駅東口の地下にある本社工場で作られています。
なお、今年も今日(6/2)まで「シウマイ弁当」は神奈川地区限定で、開港祭バージョンの掛け紙になっています。

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1日およそ「20,000個」が出るという、恐らく日本で一番売れている駅弁「シウマイ弁当」。
横浜駅最大の「崎陽軒」売店・中央通路の売り場では、最大で1日「17回」搬入が行われるといいます。
「シウマイ弁当」で特筆すべきなのは、駅弁では珍しく売上げの波が「夕方」に来ること。
横浜の食文化として「今日は夕飯、ちょっと手抜きたいな」という時に「シウマイ弁当」という選択肢が定着しているんですね。
私自身、大好きでちょくちょくいただく「シウマイ弁当」ですが、いつもよりちょっと違う掛け紙にテンションもアップ!
きっと今夕、横浜エリアで「シウマイ弁当」を手にした人も、ささやかな「お祭り気分」と一緒に味わうことでしょう。

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「崎陽軒」の「シウマイ」が生まれたのも「横浜開港と鉄道の発展」に深く関係しています。
鉄道が開通し西へ延びるにつれ、横浜駅は「通過駅」になってしまい、お客さんはみんな東京で弁当を買ってきてしまうように・・・。
その時、小田原のかまぼこや静岡のわさび漬のような名物がよく売れていることに気づいた「崎陽軒」の初代社長。
しかし、幕末の開港と共に街の発展が始まった「横浜」には、これといった名物がありませんでした。
そこで「名物が無ければ作ってしまおう」と、開港と共に生まれた中華街の職人さんをスカウト。
横浜駅が今の場所にやって来た昭和3(1928)年に干帆立貝柱を使って生みだされたのが、冷めてもおいしい「シウマイ」でした。
戦後、昭和25(1950)年、東海道線に「湘南電車」がデビューした年「シウマイ娘」を登場させ、小説化されるほどの人気に・・・。
この人気もあり、昭和29(1954)年に満を持して誕生したのが「シウマイ弁当」なのです。
基本に忠実にメインの「シウマイ」だけでなく、幕の内の三種の神器「焼魚(鮪の照焼)・玉子焼・かまぼこ」も入っています。
シウマイ弁当」は、開港からの「横浜と鉄道」の発展の歴史もギュッと詰まった経木の折詰のお弁当なのです。

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余談ですが、駅弁に「おてふき」を付けたのも、実は「崎陽軒」が最初。
昭和31(1956)年11月から、和歌山・明和産業製のものを使って用意したという記録が残っています。
今ではすっかり当たり前となった弁当の「おてふき」も、横浜の進取の精神から始まっているのです。
(参考:汽車辨文化史)

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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