プレミアム・フライデーに厳しい空気【報道部畑中デスクの独り言】

「すみません、プレミアム・フライデーについてうかがっているのですが…」
「(顔の前で手を振りながら)イヤイヤ…」

「月末金曜日は早めに仕事を終えて豊かに幸せに過ごす」ことを趣旨とした「ブレミアム・フライデー」が今年2月24日からスタートしました。政府と経済産業省が提唱するこの取り組み、開始当日には東京都内のホテルなどでイベントが行われ、世耕経済産業大臣、経団連の榊原会長も出席しました。

2月24日、東京都内のホテルで開かれたキックオフイベント。世耕経済産業大臣(左から6番目)、経団連・榊原会長(右から5番目)も参加した

榊原会長は日本橋の百貨店で夫人とショッピングを楽しみ、取り組みをアピール。その後も実施日には各地で催しが開かれ、定着に向けた取り組みは続いています。

プレミアム・フライデー開始を周辺企業の従業員が祝った

6月30日に行われた「プレミアム・フライデー」サミット。石原経済再生担当大臣(当時 右から4番目)は銭湯を楽しんだという)

開始から約半年、プレミアム・フライデー推進協議会事務局が行った意識調査では早帰りに関わらず「普段の週末にはできない過ごし方ができた」と答えた人が約4割に達しました。過ごし方では「家でゆっくり過ごした」「外食・お酒を飲みに行った」「買い物」がトップ3、さらに家での過ごし方については「趣味や娯楽」「家族と一緒に過ごした」という回答が目立ったということです。
また「ブレミアム・フライデー」という言葉を知っている人は約9割に達し、認知度そのものは上々のようです。今後、普及が進んでいけば旅行消費6000億円規模の経済効果が見込めるという試算もあります。
一方でこの「プレミアム・フライデー」…街の人たちはどのようなイメージを持っているのでしょうか?6回目の実施となった先月28日、私は東京・新橋周辺のサラリーマンを中心に話を聞きました。この日は蒸し暑く、顔から汗がしたたり落ちている人もいました。ご協力いただいた方々には改めて御礼を申し上げます。
取材は難航しました。この種の街角インタビューで拒否されることはもちろんあるのですが、今回はその割合がいつもに比べて格段に多かったのが正直な印象です。それも「ニッポン放送ですが…」ではなく、冒頭挙げたような「プレミアム・フライデー」の言葉を挙げた途端に目をそらす人が多かったのです。
ひょっとすると、「プレミアム・フライデー」という言葉自体に嫌悪感をもよおしている人が多いのかもしれません。答えていただいた人からも目立ったのは「月末の請求処理があるので」「世間で活用しようというムードじゃない」「取り組みは続いた方がいいと思うが、浸透するには1~2年はかかるのではないか」「会社が強制的に休ませないと定着しないのではないか」…そこには自ら何かをしようという姿勢や余裕はみられず、冷めた空気を感じました。中には「プレミアム・フライデーで逆に店がとりにくくなった。デメリットだ」という声も。様々な取り組みも「一握りの人たちの道楽」と映ってしまうのかもしれません。
プレミアム・フライデーははたして定着するのか…?経団連の関係者は「週休2日制」を例に出します。この「週休2日制」…今でこそ学校や企業で定着しているこの制度ですが、この制度が始まったのでは1965年、半世紀以上前のこと、第一号はあの松下電器産業(現 パナソニック)でした。その後、1980年ごろに大企業で定着しますが、官公庁で完全週休2日制が導入されたのは25年前の1992年、そして学校でも導入されたのは2002年のことでした。つまり、制度が定着するのに40年近く以上の時を数えたというわけです。
パナソニックのホームページなどによると、1965年は東京オリンピックの翌年、不況でその効果を疑問視する向きも多かったそうです。創業者の松下幸之助氏は当時の不況を経済的な「国難」とした上で「(経済国難に)いま直面している時に、われわれは週5日制を実施するのである。これは容易ならないことである。このことをよくわきまえて、先輩国のアメリカ以上に合理的経営を生み出す決意で臨んでいただきたい。そして、日本を一挙にアメリカに近づけるその先達を松下電器が担うのだという意気込みでやってほしい」…こう訴えたと言います。そして「1日教養、1日休養」のスローガンのもと、従業員の勤労意欲と能率の向上に大きな役割を果たしたとあります。
松下幸之助氏の言葉には何というか、敢えて火中の栗を拾い、国の将来を背負う骨太な覚悟のようなものを感じます。これに対し、プレミアム・フライデーはどことなく軽い感じがします。働き方改革の一環という理念を掲げてはいるものの、「消費喚起」の姿勢には、言い方は厳しいですがある種の「チャラさ」と「押しつけがましさ」が見え隠れします。親しみやすい表現を用いる工夫はうかがえますが、この「チャラさ」と「押しつけがましさ」が人心にいま一つ響かず、冷めた空気につながっているのではないでしょうか。
同じ経済団体でも中小企業を束ねる日本商工会議所は、プレミアム・フライデーについては「全面的に賛成とは言わない」とした上で、各企業に判断を任せる「玉虫色」の姿勢です。中小企業の厳しい状況を鑑みた形で、さらに三村明夫会頭は「いまの状態は中途半端。ある時期に一つの評価を下した方がいい」とも述べています。
先人の功績は歴史が評価する…とはよく言われることですが、この取り組みは後世に名を刻むのかどうか?一時の流行で終わってしまうのか?現状は厳しいと言わざるを得ないようです。それほど労働環境の習慣を変えるということは難しく、40年後を見据えるぐらいの地道な覚悟が必要なのかもしれません。

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