しゃベルシネマ

『戦場のメリークリスマス』助監督の目に、太平洋戦争はどう映ったか…『STAR SAND 星砂物語』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第250回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は8月4日から全国順次公開の『STAR SAND 星砂物語』を掘り起こします。

戦いたくない…。日米2人の脱走兵が問いかける“平和”の意味とは。


1945年の沖縄。
戦渦から遠く離れた小さな島に住む16歳の少女・洋海は、島の洞窟で2人の青年に出会う。

一人は日本人の脱走兵・岩渕隆康、そしてもう一人はアメリカの脱走兵ボブだった。
敵同士でありながらも、共に戦うことが厭で軍を離れてしまった“卑怯者”の2人は、言葉が通じないながらも一緒に暮らすうちに心を通わせるようになっていた。

日系アメリカ人の母を持つ洋海は、隠れて暮らす彼らを気にかけて度々洞窟を訪れ、通訳を務めるように。
3人の間には不思議な関係が築かれていく。

しかし、戦闘で足を負傷した隆康の兄・一(はじめ)が洞窟を訪れたことで事態は急変。
アメリカ兵を敵と信じ、戦うことしか考えていない彼の目には、ボブは敵、隆康は裏切り者としか映らず…。


『戦場のメリークリスマス』では助監督を務め、『明日への遺言』では小泉尭史監督と共同脚本を手がけるなど、日本映画や日本文化に造詣が深いロジャー・パルバース氏。

太平洋戦争下の沖縄を舞台に書いた自作の小説「星砂物語」を、自らの監督作で映画化しました。
本作は沖縄県が制定している「慰霊の日(6月23日)」にちなみ、6月21日に沖縄県内で先行上映。
8月4日から都内を中心に全国順次公開となります。


出演は、これが映画初主演となる織田梨沙、『無限の住人』の満島真之介、『追憶』の三浦貴大と、個々の感情を剥き出しにした鮮烈な演技は見応えたっぷり。

さらに吉岡里帆、寺島しのぶ、渡辺真起子、石橋蓮司、緑魔子らが適材適所で光ります。
一方、ボブを演じるのは、オーストラリア人のブランドン・マクレランド。
「ベトナム戦争がきっかけでアメリカ人をやめようと思った」パルバース監督の分身とも呼べる脱走兵の役を、実に繊細に演じました。

そして、主題歌を手がけたのは坂本龍一。
監督と長年の友人関係にある世界的作曲家が本作のために生み出した美しい旋律は、観る者に深い余韻を与えてくれます。


“戦争映画”と聞くと、敵味方に別れた戦闘シーンを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、本作ではそのような戦いは描かれません。
それでも“反戦”という言葉がジワジワと沁みるのは、“平和とは一体何か”という問いかけを感じずにはいられないからでしょう。

彼らが“卑怯者”と呼ばわりされたのは戦時下という“時代”のせいであり、むしろ“生きることに執着した”という意味では“真の平和実践者”なのかもしれません。
時が過ぎ、戦争を体験した世代が年々少なくなっていく中で、それでも戦争の記憶は残していかなければならないものではないでしょうか。

8月15日の「終戦の日」を機に、日本人ならば触れておきたい一作です。


STAR SAND 星砂物語
2017年8月4日から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
監督・原作・脚本:ロジャー・パルバース
出演:織田梨沙、満島真之介、ブランドン・マクレランド、三浦貴大、吉岡里帆、寺島しのぶ、渡辺真起子、石橋蓮司、緑魔子 ほか
©2017 The STAR SAND Team
公式サイト http://star-sand.com/

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