GO!GO!ドーナツ盤ハンター

ソロシンガー・ジュリーの実力を堪能できる珠玉の名曲【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード。デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡り、昔のレコードを集めている平成世代も増えているようです。そんなアナタのために、ドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が、「ぜひ手元に置きたい一枚」を、アーティスト別、ジャンル別にご紹介していきます。

6月25日に69歳の誕生日を迎えた我らがジュリー・沢田研二ですが、7月16日の東京・NHKホールから毎年恒例のライヴツアーをスタート。来年1月まで全国を廻っていきますが、今回のツアーは「デビュー50周年記念」ということで、かなり気合の入ったものになっています。
16日の公演では、ザ・タイガース時代のデビュー曲『僕のマリー』から、3月に発売した最新曲『ISONOMIA』まで、2時間半で50曲を熱唱。もちろんワンコーラスずつですが、思い出すのは9年前、還暦記念ライヴでの”80曲熱唱”です。いよいよ古稀を迎える来年は「100曲歌うぞ!」と言い出しかねないパワフルさ。2013年のタイガース再結成からもちょうど5年経ちますし、そちらも何か動きがありそうで楽しみです。
今回のセットリストを見ると、節目の年なので過去曲を中心に歌っていますが、普段は新曲中心で、気鋭のミュージシャンたちを従え、ゴリゴリのライヴを展開しているジュリー。しかも自作の歌詞はバリバリの社会派。いま、ジュリーを観に来ているファンは、体型は多少丸くなろうと、心はトンがり続けるジュリーに惚れて会場に来ているのです。
先月、誕生日の際に「バンドボーカルとしてのジュリー」を特集しましたが、一回ではとてもその魅力を伝えきれないので、今回は「ソロシンガー・ジュリーの実力を堪能できる、珠玉の名曲」をご紹介していきましょう。ぜひ、肉声に近いアナログ盤で聴いていただきたいと思います。

【その①】・・・『追憶』(1974)

ソロ初期のジュリーを語る上で、外せない一曲が『追憶』です。初のオリコン1位作『危険なふたり』を書いた安井かずみ・加瀬邦彦コンビの作品で、ジュリーは本作で2度目の1位をゲット。レコ大の歌唱賞も受賞し、ソロシンガーとしての力量を世間に示しました。
愛する女性の名前が「ニーナ」というのも、いかにも安井かずみらしいセンス。去って行った彼女を想い絶唱する、サビの「許して尽くしてそばにいて」という懇願フレーズは、一つ間違うと演歌っぽくなるところ、ジュリーが歌うと未練タラタラじゃなく、カッコ良く聞こえるから不思議です。
グラムな雰囲気漂うジャケットも素晴らしく、ジュリーファンなら必ず備えておきたい一枚です。300円くらいで手に入りますが、ぜひ一緒に聴いていただきたいのが、5作目のソロアルバム『JEWEL JULIE 追憶』(1974)。
このアルバムの掉尾を飾る『追憶』は、井上堯之バンドをバックに従え歌ったロングヴァージョンで、シングルより2分以上長い6分54秒の超大作。こちらもジュリーの声の魅力をたっぷり味わえますので、余裕があれば聴き比べてみてください。

【その②】・・・『LOVE(抱きしめたい)』(1978)

『追憶』から4年後、ジュリーのヴォーカルはさらに深みと凄みを増していきます。77年に『勝手にしやがれ』で念願のレコード大賞を初受賞。年齢もちょうど30代に突入し、まさに脂が乗りきっていた時期ですが、この年ジュリーは絶唱系のバラードを連続リリースします。まず8月に、映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のエンドテーマ『ヤマトより愛をこめて』を発表。それからわずか1ヵ月後にリリースしたのが本作です。
両曲は曲調も似ており、作詞・作曲もともに阿久悠・大野克夫コンビ。混同する人も多いですが、なぜ短期間に同じような曲をリリースしたかというと、様々なウラ事情があったようです。『ヤマト…』でレコ大連覇を狙ったところ、アニメタイアップ曲なので審査対象から除外され、急遽本作をリリースした、という説もありますが、真相は分かりません。
『ヤマト…』と『LOVE』、どちらが好きかは好みもあるでしょうが、私はやはり『LOVE』を選びたい。歌詞を見ると本作、不倫の曲です。抱きしめたい女性がいるが、彼女には優しく包んでくれる家庭がある。しかし自分にはそれがない。季節は秋から冬へ。彼女の温もりが欲しいが、「いけない女」と呼ばせたくない。ここは黙って身を引こう…。
これ、男女を逆転させると演歌によく出てくるシチュエーションですが、男が身を引くのは珍しいパターン。この歌詞で阿久悠は「沢田よ、痛みを伴うダンディズムも歌えるか?」という挑戦状を叩き付けたんだと思います。その高い要求に見事な歌唱力で応えてみせたジュリー。ラストの「さよなら」4連チャンは、それぞれに声の表情が違い、ゾクゾクします。
皮肉なことに78年のレコ大は、阿久悠が書いたピンク・レディーの『UFO』に攫われてしまうのですが、この年の紅白では、ポップス系歌手としては異例の大トリを飾ったジュリー。歌ったのはもちろんこの曲でした。「歌手・沢田研二」の一つの頂点を示す傑作、300円前後で入手可能です。

【その③】・・・『灰とダイヤモンド』(1985)

85年はジュリーにとって、大きな転機になった一年です。長年在籍したナベプロを離れ、個人事務所を設立。レコード会社も、ポリドールから東芝EMIへ…。この年に唯一リリースしたシングルが本作です。(同年発売のアルバム『架空のオペラ』収録曲)
作詞・作曲の「李花幻」の正体はジュリー自身で、「いいかげん」のもじりですが、自分の思いを自分の言葉で伝えたいという姿勢は、現在のジュリーにつながります。バイオリンがフィーチャーされているのが注目すべきところで、編曲を担当したのは大野克夫。『ロンリー・ウルフ』(1979)の作曲以来、久々にジュリーのシングルを手掛けましたが、再出発にあたってジュリーが大野にアレンジを頼んだのは、すごく分かる気がします。
終始、命令口調で押し通すオラオラな歌詞も、阿久悠ワールドとはまた違った味わいがあって、ぜひ押さえておきたい一枚です。500円前後で入手可能。

 

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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