池田駅「親子弁当」(648円)~懐かしさいっぱい!根室本線・普通列車キハ40の旅【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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キハ40

キハ40、根室本線・浦幌駅

ワインで有名な池田からは、根室本線の普通列車でのんびりと釧路方面を目指します。
北海道の普通列車の主役と言ってもいいキハ40。
鈍行旅の醍醐味は、やっぱり特急列車が走る区間の普通列車!
多くのお客さんが特急に流れる中で、ホントにゆっくりとした時間を楽しむことが出来ます。
この列車も池田から30分あまり走った浦幌で、5分ほどの小休止となりました。

上厚内駅跡

上厚内駅跡

帯広都市圏はだいたい浦幌までのようで、昼下がりのこの列車はお客さんが私1人だけに・・・。
北海道の普通列車ではよくあることで、私も何度か経験しておりますが、昨今伝えられている厳しい経営状況のことを思うと、ちょっと哀しい気持ちになってしまいます。
そんなこともあって利用状況が悪い駅の廃止が進んでおり、根室本線でも上厚内駅が今年(2017年)3月をもって廃止されてしまいました。

スーパーおおぞら

キハ283系・特急「スーパーおおぞら」

ただ、駅が廃止されても、列車がすれ違う設備は残されており、いわゆる信号場となっています。
この列車も、上りのキハ283系・特急「スーパーおおぞら」との交換のため10分近く停車。
信号場となってしまった以上、列車は停まってもドアは開きません。
ドアが開けば、ホームに降りて、のんびり気分転換が出来るのですが・・・。
目の前にホームの跡があるのに、何とも退屈な時間だけが流れていきます。

太平洋

根室本線からの太平洋

シラカバなどの木立の中を走り抜けて、厚内から先、根室本線は太平洋に沿って走ります。
特急列車ですと札幌から3時間近く、ずっと内陸を走ってきますので、進行右手にパァーッ!と、水平線が見えてきたときの開放感がたまらないんですよね。
なので、下り「スーパーおおぞら」の指定を取る場合は、帯広までなら狩勝峠の車窓が見られる進行左側、釧路まで乗る時はこの海が見られる進行右側を取るようにしています。

パシクル沼

パシクル沼付近

そして道東に入ってきたことを感じさせてくれるのが、釧路市の飛び地・音別と白糠町の境付近に広がるパシクル沼と周辺の湿地帯。
湿地帯の中を列車が走るのは、やっぱり道東らしい風景です。
今ならこういった地盤の悪いところを通るようなルート設定はなされないと思いますが、昔の土木技術でココに線路を通したことはいろんな意味で偉大!
明治時代の人たちが残した遺産の上に、北海道の鉄道旅は成り立っているのです。

親子弁当

親子弁当

そんな明治の先人たちに思いを馳せながら、根室本線の普通列車・キハ40のボックスシートにどっかり腰を下ろしていただきたい駅弁があります。
それは、池田駅の駅弁「親子弁当」(648円)。
調製元は、もちろん池田駅前の「レストランよねくら」。
この駅弁も30分前までの電話予約(015-572-2032)で購入することが出来ます。

親子弁当

親子弁当

黄色い綴じ紐をほどいて、昔懐かしい掛け紙を外すと、これまた立派に経木の折詰が“くるん!
この「反り」が神!
ご飯の水分を経木がしっかり吸い取ってくれて、絶妙な食感が約束されたサインなんです。
しかも、この「反り」が見られる経木の折詰に入った駅弁は、今やホントに希少!!
思わず、座席で『素晴らしい!!』と声を上げてしまいました。
残念ながら、他にお客さんがいないので、恥ずかしいこともないんです。

親子弁当

親子弁当

この「親子弁当」こそ、「レストランよねくら(米倉屋)」の原点ともいえる駅弁。
池田駅は明治37(1904)年に開業し、その翌年、「米倉屋」が構内営業を認められました。
その時に作られたのが、この「親子弁当」だったんです。
で、この「親子弁当」だけじゃナンだよね・・・てことで数か月後に生まれたのが「バナナ饅頭」。
実は「バナナ饅頭」より、この「親子弁当」のほうが、歴史ある商品なのです。

親子弁当

親子弁当

温もり感じるご飯の上に、鶏と卵のそぼろが載っただけのシンプルな駅弁。
でも、明治30年代であれば、これは十分なご馳走だったことは想像に難くありません。
しかも、ご飯と経木の折詰が醸し出す、これぞ「駅弁」という匂いが旅情を誘います。
やっぱりコレは、明治の先人たちが北海道に懸けた思いをギュッと閉じ込めた駅弁。
いただくなら、ちょっぴり懐かしいキハ40のボックスシートが最高のシチュエーションです。

キハ40

キハ40、根室本線・白糠駅

北海道の懐かしい旅を演出しているキハ40ですが、ここへ来て、ついに新型気動車「H100形」の試作車が来年・年明けにも落成予定という発表がありました。
この気動車が量産化されれば、キハ40も引退ということになります。
日本最後の“昭和”、日本最後の“国鉄”を追体験するなら今のうち・・・。
ぜひ、その際は、池田の「親子弁当」のような懐かしい駅弁を片手に楽しんでみては!?
(参考:JR北海道プレスリリース、2017年7月12日付)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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