大ヒットロングラン公開中!いまだからこそ『リップヴァンウィンクルの花嫁』を語ろう。 しゃベルシネマ【第14回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
今月から始まりました「しゃベルシネマ」。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介していきます。

SNSを中心に静かな旋風を巻き起こしている「リップヴァンクル現象」について、ご存知でしょうか。
コトの発端は、3月26日に劇場公開となった映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』。
公開当初は28館での上映と小規模ながらも、公開されるやいなや、絶賛と共感の声が殺到。
日本の映画興行においてはヒットが難しいと言われている3時間という長尺作品ながらもリピーターが続出し、公開から2か月経った現在も全国の映画館でロングラン上映中です。

そこで今回の「しゃベルシネマ」では、初見でもリピーターでも楽しめる『リップヴァンウィンクルの花嫁』の見どころを掘り起こします。


寓話の世界と現実社会を行き来する人間ドラマ

vol.14-リップヴァンウィンクルの花嫁・01

東京で派遣教員をしている皆川七海。
SNSで知り合った男性・鉄也と結婚することになったものの、結婚式を挙げるにあたって親族が少ないことを鉄也に言い出せずにいた。
そこでやはりSNSを通じて知り合った「なんでも屋」の安室に代理出席を依頼し、無事結婚式を終えることが出来た。
幸せな時間も束の間、新婚早々、鉄也の浮気が発覚。
ところが義母から逆に浮気の罪を被せられ、家を追い出されてしまう。
苦境に立たされ途方にくれる七海に、安室は奇妙なバイトを次々と斡旋。
最初は、あの代理出席。
次は、月に100万円も稼げる住み込みのメイド。
そこで破天荒で型破りなメイド仲間、里中真白に出会う…。

vol.14-リップヴァンウィンクルの花嫁・021

主人公・七海を演じるのは、映画『小さいおうち』でベルリン国際映画賞銀熊賞(女優賞)を受賞、若手ながらその実力を遺憾なく発揮している女優、黒木華。
変幻自在な「なんでも屋」安室を演じるのは、『64前編/後編』『日本でいちばん悪い奴ら』など出演・主演作が相次いで公開される、綾野剛。
謎めいた女性・真白を演じるのは、シンガーソングライターのCocco。
この3人を軸に、ひとりの女性が運命に翻弄されながらも精一杯生きる姿を、美しい映像で紡いでいます。

vol.14 リップヴァンウィンクルの花嫁・02・ー02

実は公開を直前に控えたタイミングで、岩井俊二監督にインタビューをさせていただいく機会がありました。
本作を制作することになったきっかけから撮影エピソードまで、興味深いお話をじっくりと伺いました。
中でも印象的だったのが、岩井監督自身の本作の捉え方。

「この『リップヴァンウィンクルの花嫁』を書いている時、これが一体何物なのかが、自分の中でも分かったような分からないような感じの書き心地でした。なかなか正体がはっきり見えてこないものに挑んでたような気がして…。だからこそ映画を観た人が何を感じてくれるのか、とても楽しみでもありますね。」

その言葉どおり、観終わった後、すぐに映画の感想を口にすることは難しく、いつまでもその作品世界に浸っていたいような不思議な感覚に陥ります。
そして、観る毎に新たな発見がある味わい深い作品です。


誰のものとも似ていない唯一無二の世界、それが「岩井俊二」。

vol.14-リップヴァンウィンクルの花嫁・03

本作を手がけた岩井俊二さんは、1988年からそのキャリアをスタート。
映画、ドラマ、ミュージックビデオ、CFなど多方面の映像世界で活動を続け、その独特な映像は“岩井美学”と称され、常に注目を集めています。
才能は多岐にわたり、例えば1本の映画を製作するにしても、監督する、脚本も書く、カメラも回す、音楽も作る、撮影した素材を自ら編集する、プロデューサーも務める、原作小説も書く…。
ボーダレスに活躍する、文字通りのマルチクリエイター。
また自身の作品に起用した女優たちの新たな魅力を開花させることでも定評があり、『Love Letter』では中山美穂、『四月物語』では松たか子、『花とアリス』では鈴木杏と蒼井優、そして『リップヴァンウィンクルの花嫁』では黒木華と、“岩井マジック”によってスクリーンの中で大輪の花を咲かせています。

vol.14-リップヴァンウィンクルの花嫁・04

『リップヴァンウィンクルの花嫁』は映画の公開に合わせた形で、小説、映画館、インターネット、テレビドラマとメディアミックスに展開していったのが最大の特徴。
3時間の劇場版と2時間の限定配信版、そして全6話のテレビ版。
それぞれ少しずつ趣きが違い、すべてを網羅することでようやく “『リップヴァンウィンクルの花嫁』の世界” の全体像が見えてくる、という心憎い仕掛け。
映像表現だけでなく作品の発表方法まで、既存の枠に囚われない岩井俊二監督作品ならではの展開です。
また映画興行的な観点から言えば、「岩井俊二の実写長編最新作」という作家性で観客が呼べる、日本映画界においては数少ないタイプの映画監督と言えるでしょう。


リップヴァンウィンクルの花嫁』をより楽しむために…

vol.14-リップヴァンウィンクルの花嫁・05

「映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』の見どころは?」と聞かれたならば、私は敢えて、こう答えましょう。
「見どころを断定出来ないところが、見どころ」だと。

映画館の暗闇に3時間身をうずめ、ヒロインの人生を共に体感したとき、自分の心の中に去来するものは何か。
その答えを自分自身と向き合って、自分の中から探し出してみる。
そんな映画の楽しみ方があってもいいのではないでしょうか。

本作には、様々な二面性が潜んでいます。

得体のしれない現代ニッポンの姿。
現実社会とインターネットに代表される虚構の世界との往来。
善と悪。
嘘と真実。

映画をより楽しむためのキーワードをひとつ挙げるとするならば、劇中に登場する人物たちの「名前」。

「カンパネルラ」「クラムボン」といった、SNS上のハンドルネーム。
綾野剛さん演じる「安室行枡」と「ランバラル」の関係性。

そのあたりを紐解いてみると、すでに映画をご覧になった方も「もう一度映画館に足を運びたい!」という衝動にかられることでしょう。

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、現在絶賛公開中です。

vol.14-リップヴァンウィンクルの花嫁・06

大ヒット公開中、5月28日から丸の内TOEIにて上映スタート
監督・原作・脚本:岩井俊二
出演:黒木 華、綾野 剛、Cocco、原日出子、地曵 豪、毬谷友子、和田聰宏、夏目ナナ、金田明夫、りりィ ほか
原作:岩井俊二『リップヴァンウィンクルの花嫁』(文藝春秋刊)(http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163903774
©RVWフィルムパートナース
公式サイト http://rvw-bride.com/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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