本日7/20は幻のカルトアイドル女優・早乙女愛の命日【大人のMusic Calendar】

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2010年の本日7月20日、幻のカルトアイドル女優・早乙女愛の訃報が伝えられてから、早くも7年が経過した。生きていれば58歳である。子育てに専念するため第一線を退いていたとはいえ、まだまだ真実を語れる年頃であっただけに、早すぎる死が残念でならない。

本日7/20は幻のカルトアイドル女優・早乙女愛の命日【大人のMusic Calendar】

早乙女愛の存在をカルトたらしめているのは、出世作となった映画「愛と誠」(1974年、松竹)である。当時トップアイドルの座を極めていた西城秀樹の初主演映画であり、ヒデキの全身全霊な演技が語り草となっている作品であるが、今当時のことを振り返ってみると、原作である梶原一騎の同名コミックの熱狂的ファンから、ヒデキの起用に対して相当なカウンターアタックがあったらしい。今ではよくある、アニメ実写化を巡る二次元至上主義者からのオブジェクションみたいなものが、アイドル第一次黄金期に早くも露わになっていたなんて。そのアタックを見事に、演技をもってはね返したのだから流石である。

おっと、早乙女愛の話ではないか。この「愛と誠」で純愛を貫く主人公の役を演じる少女にも、当然大きな重荷がのしかかったはずである。そんな勇気あるヒロインの座を射止めたのは、鹿児島出身の15歳、瀬戸口さとみ。その役名・早乙女愛をそのまま芸名として頂き、期待されまくりのデビューを果たした(この命名パターンは、その後松田聖子、浅香唯などに適用され、アイドル黄金律の一つとなった)。結果、その純真すぎる存在感で瞬く間に観る人の心を掴み、アイドル女優の仲間入りを果たす。

当然、ここはMusic Calendarなので、音楽の話をしなければならない。しかし、この伝説の少女が残した音楽的手がかりは、シングル盤2枚のみ。しかもソロシングルは1枚だけだ。そのシングルとは、1976年3月21日にリリースされた「魔法の鏡」。

本日7/20は幻のカルトアイドル女優・早乙女愛の命日【大人のMusic Calendar】
作詞作曲は荒井由実。75年の暮れにチャート1位に躍り出た「あの日にかえりたい」でユーミンの底力がやっとオーバーグラウンドにのし上がった直後のリリースで、かつ三木聖子が書き下ろし曲「まちぶせ」でデビューを飾ったのに3ヶ月先駆けての発売だったが、こちらはユーミンのセカンドアルバム『ミスリム』(74年)に収録されていた曲のカバーである。今ではジブリ効果でスタンダードの仲間入りを果たした「やさしさに包まれたなら」を筆頭とする名曲揃いながら、発売当時はどちらかというと地味な作品という印象が強かった同アルバムの中でも、隠れ名曲と呼びたいものの筆頭にあげられる一曲だが、この早乙女愛盤は純粋な歌唱により、ユーミンにはないキラキラした魔力に彩られたヴァージョンになっている。ファンの熱烈支持のおかげか、オリコン57位に達する小ヒットを記録。これが、曲調的には相通じるものを持っている「まちぶせ」誕生の原動力になったとは思わないが。

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「愛と誠」シリーズはその後相手役を変えながら2作が制作されたが、その3作目「愛と誠 完結編」で誠を演じた加納竜とのデュエットで76年10月にリリースしたのが、主題歌となった「愛と誠」。

本日7/20は幻のカルトアイドル女優・早乙女愛の命日【大人のMusic Calendar】

梶原一騎自身が手がける歌詞の世界観(しかも意図的にか「タイガーマスク」の主題歌とメロディの一部を重ねている!)も凄いが、スクリーン上ではヒデキ以上にたたき上げのワイルドな魅力を発散した加納の歌唱が、どこかおっとりした感じに落ち着いてしまったのも、愛のマジカルパワーに圧倒された故か。

ちなみに「愛と誠」といえば、映画同様74年にテレビドラマ版(東京12チャンネル)としてスピンオフした「純愛山河 愛と誠」でヒロインに起用された池上季実子も、同じように主題歌「わたしの誠」を歌ってレコードデビューを果たした。こちらでは、早乙女愛以上にアイドル女優マニアの心を揺さぶりまくるイノセント歌唱が聴ける。但し、彼女の方はシングル発売をさらに3枚重ね、皮肉にも2枚目と3枚目ではCBSソニーで早乙女愛のレーベルメイトとなった。

未だにリメイク版が作られたり、「君のためなら死ねる!」という名ゼリフがネタにされたりと、支持を集め続ける「愛と誠」。今、来世で本家・早乙女愛と熱愛物語を演じているのは、もしかしたら昨年天に召されてしまったプリンスその人かもしれない。"I Would Die 4 U!"

「魔法の鏡」「愛と誠」写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
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【著者略歴】丸芽志悟 (まるめ・しご) : 丸芽志悟 (まるめ・しご) : 不毛な青春時代?レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 5月24日、初監修コンピレーションアルバム『コロムビア・ガールズ伝説』(3タイトル)が発売された。
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