あけの語りびと

毎年一万人の人が訪れる観光名所は“ちゅういちっちゃん”が守り、育てるアジサイの山「あけの語りびと」(朗読公開)

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
上柳昌彦あさぼらけ 『あけの語りびと』


アジサイの花言葉は「移り気」・・・。
開花から花の終わりまで、何回も色を変えるからでしょう。
「七変草(しちへんぐさ)」という別名からすると、7回も色を変えるようです。

JR武蔵五日市駅を過ぎて、車で15分ほど走ると、左手に見えてくるのが「南沢あじさい山」の看板です。

「南沢」とは、この山の所有者である南澤忠一(みなみざわ ちゅういち)さんの苗字。
47年前、自宅の庭に咲いた二株のアジサイを植えました。
「山の途中にある墓地へ行くのに、花の中を通っていけないか」とふと思ったのがキッカケだったといいます。

南澤忠一(みなみざわ ちゅういち)さん

当時、材木業を営んでいた南澤さんの起床は、毎朝4時。
アジサイの手入れや挿し木をしてから、会社に行くのが日課でした。
こうして挿し木を繰り返すうちに、一万株のアジサイの山が完成!
毎年、一万人の人が訪れるあきる野市の観光名所になっていたのです。


「あじさい山から見える朝日を見るのが楽しみな毎日だった」とふり返る南澤さん。
「花を見た人から「きれいですね」と言ってもらえるのがうれしくて気が付くと夢中になっていた」と目を細めます。

そんな南澤さんは現在、87歳になりました。
地元の人からは「忠一(ちゅういち)っちゃん」と親しまれています。


しかし、アジサイの花のシーズンは、1カ月ほど。
その1カ月を楽しむために、管理は1年を通じて行わなければなりません。
株の剪定、植え替え、消毒など、たゆみない努力によって素晴らしい1か月が約束されるのです。
膨大な労力だけでなく維持費の面でも大変でした。
10年ほど前から「任意の協力金」を募るようになりましたが、その金額は300円のみ。
南澤さんから、ため息の漏れる日が増えていきました。

そんな「あじさい山」に救世主のごとく現れたのが、 高水健(たかみず けん)さんでした。
高水さんは、まだ27歳の若さ!
あきる野市の出身で、街おこしの企画などを提案する会社『do-mo』を立ち上げたばかりの青年です。

高水さんが南澤さんを訪ねたのは去年のこと。
「あじさい山」のアジサイを使った「あじさい茶」を開発できないかという相談のためでした。
話を進めるうちに「この山を絶対に守りたい」という強い意志が、高水さんの胸の内で燃え始めたといいます。

去年秋から、南澤さんの弟子として、アジサイの手入れから学びはじめ、インターネットのクラウドファンディングでは、180万円を集めて底をついていた運営資金をささえました。

クラウドファンディングの代表支援者のテープカットによる、 オープニングイベント

高水さんは言います。
「実際に取り組んでみると、やはり想像を絶する労力と感性を要する作業。山の維持というのは、並大抵のことではないと実感しています」そう言いながら、声は弾んでいます。

今年は花の開花が遅れたために、まだアジサイを楽しめるとか。
土・日・祝日の夜のライトアップは、今月23日まで続くそうです。

2017年7月12日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

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