札幌駅「SL弁当」(1,150円)~蒸気機関車の聖地・追分で日本一大事に保存されるデゴイチ!【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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札幌駅「SL弁当」(1,150円)~蒸気機関車の聖地・追分で日本一大事に保存されるデゴイチ!【ライター望月の駅弁膝栗毛】

キハ283系・特急「スーパーおおぞら」、石勝線・追分~東追分信号場

毎年6月下旬~7月上旬、梅雨のない北海道を旅するのが定番となっているライター望月。
初夏のカラッとした空気の下、夏休みほど人も多くなくて、のんびり北海道を満喫できます。
今年は久しぶりに道東方面を目指しました。
札幌(千歳)と道東・釧路を結ぶのは、石勝線・根室本線の特急「スーパーおおぞら」。
キハ283系気動車が、札幌~釧路間をおよそ4時間かけて、毎日6往復しています。

追分駅

追分駅

道東へ鉄道で行く場合は、新千歳空港駅から1駅の南千歳で、石勝(せきしょう)線に乗り換え。
その道東方面へ向かう特急列車の多くが、南千歳を出て最初に停まるのが「追分駅」です。
追分は石勝線と室蘭本線の接続駅で、昔は追分機関区が置かれた鉄道の町でした。
今も追分駅の前には、蒸気機関車の動輪が置かれ、その歴史を今に伝えています。
今回は初めて、追分の中でも“蒸気機関車の聖地”ともいえる場所に足を踏み入れます!

安平町鉄道資料館

安平町鉄道資料館

追分駅から歩いて15分ほど・・・、やってきたのは「安平町鉄道資料館」です。
資料館の場所は駅と目と鼻の先。
でも、機関区の名残で構内がとんでもなく広い追分駅。
駅舎から跨線橋を越え、反対側の資料館までは、どう頑張っても15分近くかかってしまいます。
毎年5~10月の第2・4金曜日、13:00~15:00のみ無料見学できる資料館ですが、それ以外の日中時間帯は事前に連絡をしておくと、安平町教育委員会の方などが対応して下さいます。
(電話:0145-25-2083、安平町教育委員会・社会教育グループ)

D51形蒸気機関車320号機

D51形蒸気機関車320号機

資料館で、とても大事に保存されているのが、D51形蒸気機関車の320号機です。
屋根をかけられ、ココまでピカピカに磨かれたデゴイチは唯一無二!
しかも定例開館日には、後ろからディーゼル機関車に押され、屋外に出されて展示されます。
ただ、小雨がパラっときただけで、デゴイチはスグに屋内に戻されてしまうのだそう・・・。
たぶんJR系博物館以外では「日本一大事に保存されているデゴイチ」ではないでしょうか。

D51形蒸気機関車320号機

D51形蒸気機関車320号機

アナログな計器類が、現役時代と同じように並ぶD51形320号機。
320号機は、昭和14(1939)年11月11日・日立製作所製で、主に函館本線、千歳線、室蘭本線、夕張線を走り、石炭輸送を中心とした貨物列車で活躍しました。
作られてから間もなく80年を迎えますが、今も国鉄OBの方などが参加された「安平町追分SL保存協会」によって丁寧に整備されています。

D51形蒸気機関車241号機のモニュメント

D51形蒸気機関車241号機のモニュメント

実は320号機は、保存される予定はなかった機関車でした。
当初、追分では昭和50(1975)年12月24日、国鉄最後の蒸気機関車による貨物列車を牽引したD51形241号機が保存される予定でした。
しかし、昭和51(1976)年4月、追分機関区の扇形車庫が火災に遭い、焼失してしまいました。
今はナンバープレートと主動輪が、320号機と共に町の文化財に指定され、保存されています。

安平町鉄道資料館

安平町鉄道資料館

追分が鉄道の町になったのは、明治時代の中ごろのこと。
夕張の石炭を、室蘭へ輸送する列車の運行拠点として機関区が整備されたことに始まります。
追分機関区は、蒸気機関車最大55両、職員も500人近い、北海道有数の機関区でした。
今は追分駅近くにある資料館ですが、数年後には国道沿いの道の駅へ移設が決まっています。
ただ、蒸気機関車の郷愁を求めて追分に来る人には、鉄道旅が好きな人が多いハズ・・・。
出来れば、新しいハコを作るだけでなく、旅行者が追分駅から町の歴史を感じながら、無理なく資料館にアクセスできるような“ストーリー”作りに期待したいところです。
それが、鉄道によって町の繁栄を作った先人たちへのリスペクトというもの。
きっと“蒸気機関車の聖地・追分”らしい資料館にバージョンアップしてくれますよね!?

SL弁当

SL弁当

さて、追分を通って道東へ向かう特急「スーパーおおぞら」や「スーパーとかち」には、残念ながら車内販売がありませんので、札幌・南千歳での駅弁購入が必須です。
追分機関区にいた国鉄最後の蒸気機関車に思いを馳せていただくなら、「札幌駅立売商会(弁菜亭)」の「SL弁当」(1,150円)がいいかもしれません。
昭和55(1980)年、「北海道 鉄道100年」の年に発売されたロングセラー駅弁です。

SL弁当

SL弁当

横長の黒い箱を開けると上蓋の裏側には、包装に描かれていた「C11形蒸気機関車171号機」の詳しい解説が現れました。
「C11形171号機」は、1999年の朝ドラの時期にJR北海道が動態復元した蒸気機関車で、ロケが行われた留萌本線をはじめ、2000年代に入ってからも北海道内各地で運行されました。
現在は、冬の釧網本線で「SL冬の湿原号」として活躍する様子が見られます。
(参考:北海道沼田町ホームページほか)

SL弁当

SL弁当

現在の「SL弁当」は、紙製のボックスが「SLペーパークラフト」になっているのが特徴。
食べた後も、手先が器用な人は、ちょっと楽しめる作りになっています。
中味は“北海道の味”というサブタイトルだけあって、北海道らしいおかずがいっぱい!
帆立のコーン焼、蛸アスパラ串、カニ焼売にチーズフライなど、本州の駅弁ではあまり見られないおかずのラインナップに、北の旅のテンションが一気に上がります。

SL弁当

SL弁当

SL弁当

SL弁当

そして何より、蒸気機関車の動輪に見立てた海苔巻3点セットがあっぱれ!
「C11形」の「C」は、動輪が3つであることを示す記号だけに、海苔巻もしっかり3つなのです。
しかも、この3つがカニ・ウニ・いくらご飯で、カニの棒肉をヨコに置いているのもSLっぽい。
これに札幌駅立売商会名物、サーモンの「笹寿司」も入ってお腹もいっぱいです。

昭和40年代、国鉄最後の蒸気機関車を撮りまくった人も、後追いでSLの魅力に惹かれた人も、北の大地に響く汽笛の音を思い浮かべながら、いただいてみてはいかがでしょうか。

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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