B.LEAGUE

清水久嗣のB.LEAGUEレポートオーバータイム!逆襲の来シーズンへ。川崎ブレイブサンダース・辻直人インタビュー

 

 

男子プロバスケットボールリーグ・Bリーグ。
5月27日の代々木第一体育館。
1年前は満面の笑みで天井へカップを掲げていた男は
1年後、目の焦点が定まらないまま茫然とコートを見つめていました。

その男の名は川崎ブレイブサンダース・辻直人選手(#14 SG)。

(c)2017 KAWASAKI BRAVE THUNDERS.

去年はNBLファイナルでMVPを獲得し、最高の形でBリーグの開幕を迎えた辻選手。
ケガに泣いた今シーズンでもありましたが、レギュラーシーズン50試合に出場しチームの中地区優勝に貢献。
プレイでは37.6%という確率以上に相手にダメージを与える3ポイントシュート、得点王ファジーカスへの華麗なパスなど華やかなプレイが身上。持ち前の明るいキャラクターでコート以外の言動でもブースターを楽しませるエンターテイナーでもあります。

そんな彼を見たこともない表情に変えたのはBリーグ初代王者をかけたチャンピオンファイナル決勝の試合後。栃木ブレックスが川崎ブレイブサンダースを下し、初代王者に輝きました。栃木選手が歓喜の輪を作る横で川崎の選手たちは涙を浮かべ、言葉では言い表せない表情を一様に浮かべていました。

あれから時間も経って、いま改めてあのファイナルを含めた今シーズンのことを中心に辻選手に伺いました。

(c)2017 KAWASAKI BRAVE THUNDERS.

ファイナルのコートに立つことを許されたのは川崎・栃木の2チームだけ。セミファイナルを勝ち抜きファイナルまでの間は「精神的に高い緊張感があった」と振り返る辻選手。
前日記者会見でも質問にはいつも通り笑顔とユーモアを交えて応えていただけに、見ている側からすればそれは感じませんでした。
そしてファイナルのアリーナに集まったBリーグ最多10144人の観衆を前に辻選手は
「1万人の前でバスケットをしたのは初めてかもしれません。コートに入場した時は緊張感というか、とても高ぶるものがありました。でも、いざティップオフのとなるとそこまでの緊張感はありませんでした。」といいます。
試合は第1クォーターから辻選手が3ポイントシュートを決め勢いに乗るかと思われたものの、得点では伸び悩み終わってみれば9得点。3ポイントは1/7という、辻選手らしくない結果に。
「試合が終わった瞬間、短かったな。あっという間に試合が終わってしまったな。と感じました。自分の中では不完全燃焼だったので、疲労度も余り感じませんでしたし、負けて悔しいというのは先に出てこなくて。ああ終わってしまった…というのが一番で、込み上げてくるものは無かったですね。失望感のほうが大きかったです。」
勝てば王者、負けたら終わりという一発勝負。
全力を出せなかったという想いがベンチでたたずむ辻選手の表情から溢れていました。

(c)2017 KAWASAKI BRAVE THUNDERS.

ファイナルで敗れ、間髪入れず日本代表合宿へ向かった辻選手でしたが体調を崩したこともあり、東アジア選手権の代表に残ることができませんでした。
「ファイナルが終わって、気持ちがぷつんと切れたというか。さらに代表に行って気持ちも張っていたと思います。練習も満足にできませんでしたし、合宿から帰ってきたら今までにないくらい高熱が出ました」と話す辻選手。厳しい戦いの反動があったようです。
今シーズンは「だましだまし、やっていた」とケガと向き合わなくてはいけないシーズンとなりました。年末年始は腰痛に悩まされ「初めての経験で、日に日に腰が痛くなってきて。日常生活も寝られなくて…。」それでも「トレーニングで症状が軽くなった時もあり」、腰の様子を見ながらも戦列に復帰したものの4月14日の富山戦に左足首を捻挫。翌日の試合は欠場し、チームから全治3週間と発表されました。

ちなみに私は翌節4/22の実況担当。当時の川崎は既に中地区の優勝を決めていたことから
『さすがに辻選手の出番は無いだろう』と高を括っていましたが、
当日、アリーナに到着するとなんと辻選手の姿が。

『いや、チームに帯同しているだけだろう』と思えばシュート練習に参加
『たぶんシュート練習だけだろう』と思ったらステップなどのウォーミングアップに参加。
『さすがに練習だけだろう』と思っていたらまさか途中出場するではないですか!
しかも3ポイントシュートを3本中2本決め、9分強の出場ながらチームの勝利に貢献。思わず『本当にケガをしているんでしょうか?』と実況で言ってしまったほど。
しかし実際は「練習で少し動けてシュートも結構入ったんですよね。ただ、ディフェンスが余りできなかったんです。オフェンスも左足が内側になった時に痛さが出ていました。テーピングを取ると、まだ痛いんですよ。」と今でも痛みが残るほど重症であったことは間違いありませんでした。
ケガをした当時、辻選手は北卓也ヘッドコーチに試合への出場を直訴したといいます。「時間は制限するけど出られるなら」と北HCの承諾を得て練習にも参加。1試合の欠場だけで戦列復帰を果たすと翌日の渋谷戦にも途中出場。さらに翌節の横浜戦からスターティング5に復帰。平均20分以上の出場時間をキープし、チャンピオンシップファイナルまで休まず戦い抜きました。足首の痛さと向き合ってシーズンを戦い抜いた辻直人選手。人一倍強い責任感からか休んで治すという選択肢はありませんでした。
「シーズンの全60試合に出られたらよかったなというのはあります。ケガで出られなかった期間は長かったですし、戻ってきてからも沢山試合には出られなかったし、出たい気持ちはあっても体はまだ無理で…焦る気持ちを押さえないといけないことを学びましたね。」と、ケガから新しいことを学んだシーズンでもあったようです。

(c)2017 KAWASAKI BRAVE THUNDERS.

「他のメンバーに助けられて迷惑をかけたシーズンでもあったと思いました。」と続ける辻直人選手。既に2017-18シーズンへの取り組みは始まっています。
リベンジのチャンピオン奪取へ向けてオフシーズンどんなことに取り組みたいか尋ねると
「個のレベルアップですね。」と即答で返ってきました。具体的には
「体ももっと大きくしたいです。ケガをしてからアウトサイドの攻撃が中心になっていたので、もっとガツガツ得点に絡むことをやりたいですね。Bリーグの戦いを通して、体格というのは次のステップを考えた時に必要なのかなって感じました。東アジア選手権の日本代表の試合を見ていても、サイズの小さい僕があの中で戦うにはもっとフィジカルを強くしないと。今のままでは代表に入っても、ただ3ポイントシュートを打つだけになってしまいますし、同じポジションの選手も多いので、自分はボーダーラインの選手だと思います。」と日本代表も見据えた狙いが伝わってきました。
しかし「代表活動は大事だと思いますけど、今年に限って言えば身体の部分を最重視したいですね。代表に選ばれたらいいですけど、どうしても入りたいっていうよりは身体を大きくしたり、ケガをしない体を作りたい。」と目先ではなく、目標はその先にあるようです。
「最終的に東京五輪を目標に掲げているのでもっと体を強くしてプレイの幅を広げるのは大事だと思います。」

フィジカルの強化にスキルの向上。「やりたいことが一杯あって時間が足りないですね。」と笑顔を見せる辻選手ですが、前を向いて行動できる姿勢はどこから来ているのでしょうか。
幼少期から兄弟の影響でバスケットを始めた辻直人選手は京都・洛南高校→青山学院大学へと進学。学生バスケットのエリート街道を歩んでいるように見えますが「その時々に挫折はありました」といいます。それでも「何かあるたびに母や兄に口うるさく言われていたのは『チャンスの神様に後ろ髪は無い』って。チャンスはその時にしか無いから、逃したら後ろからはつかめない。変に良いプレイを見せようとするのはアンタらしくない。勝つ気を前面に出した方が良いプレイができるって中学校から言われています。」
Bリーグで味わった挫折も新たなチャンスとして、それを逃さずレベルアップを図ろうとしています。それは来季の地区分けにおけるレギュレーションについて尋ねても同じこと。
来季は北海道・栃木・千葉・A東京・渋谷ら強豪揃いの東地区を戦うことになったことについても「同じ地区で6試合ずつ当たりますし、シーズンの過ごし方が大事だと思いました。月曜日の疲労感はとんでもないものになるかもしれませんね(笑)でも楽しみは楽しみですね。代表クラスも多いですし、個人のことを考えてもレベルアップできると思います。」とむしろ歓迎ムードですらありました。

(c)2017 KAWASAKI BRAVE THUNDERS.

最後に辻選手から昨季を振り返り、来季に向けてファンにメッセージを頂きました。
「昨季はシーズン進むに連れて沢山の方が来てくださって、NBL時代から応援してくださっている方も変わらずに来てくださって本当に感謝しています。おかげでセミファイナルの等々力アリーナは凄い雰囲気でバスケットできて、一緒に戦って幸せでした。また来シーズンからずっとBリーグは長く続くと思うので、数多くチャンピオンになって皆さんと一緒に喜びたいです。最高の雰囲気の中で強いチームばかり揃った東地区の戦いは、すごく楽しんで見てもらえると思います。一緒に戦って、喜び合って、最後には笑顔で追われるようにしたいと思います。」
いつもコート内外で笑顔を振りまく辻選手ですが、Bリーグの王者になった時はどんな表情を見せてくれるのでしょうか。

ちなみにオフシーズン・シーズン中を問わず、Bリーグを盛り上げるためにも、ファンにより認知してもらうためにも「いろんな所に出てみたい」と話す辻選手。実は大の競馬好き。チャンピオンシップの記者会見でも優勝賞金の使い道を冗談ながら「競馬で」と答えたほど。「競馬中継も出てみたいです」と言っていただきました。

早速、日曜競馬ニッポンからオファーさせていただきます!(笑)
お楽しみに?

9月29日に開幕するBリーグ。2017-2018シーズンの日程も決定。
https://kawasaki-bravethunders.com/news/20170707_1.html
またチケットの販売概要も発表され、いよいよ新シーズンの足音も聞こえてきました。
https://kawasaki-bravethunders.com/news/20170707_2.html
川崎ブレイブサンダースはホームの川崎市とどろきアリーナで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦します。
チームを引っ張る辻直人選手の活躍にぜひ注目してください!

2017-18シーズン開幕戦
川崎ブレイブサンダース vs 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
開催日:9/29(土)19:05~、9/30(日)16:05~
会場:川崎市とどろきアリーナ(JRほか武蔵小杉駅から各バスで8分「とどろきアリーナ前」で下車徒歩5分、JR武蔵中原駅から徒歩15分)
チケット:https://www.bleague-ticket.jp/club/tk/
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(清水久嗣)

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