ホンモノよりもホンモノっぽい芸術作品「クローン文化財」とは【ひでたけのやじうま好奇心】

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世界初の哺乳類のクローン、「クローン羊のドリー」が誕生してから、ちょうど20年目。
いわゆる「クローン技術」は、まさに日進月歩で進化を遂げていると言われていますが…
今やなんと「生き物の世界」だけではなく、「芸術の世界」にまで広がっているという話をご存じでしょうか?

その名も…「クローン文化財」!(※この分野の第一人者、東京藝大教授で画家の宮廻正明さんが命名した言葉です。)

この「クローン文化財」とは、昔の油絵や彫刻、あるいは壁画や仏像などなど、価値のある文化財を「オリジナルそのまま」に再現した作品のこと。
「ん?それって単なる“複製”のことじゃないの?」と思うかもしれませんが、さにあらず!
“複製”とか“贋作”というのは、なんとなく「うわっつら」を真似ているだけです。
つまり「もともとの素材」とか「質感」は、オリジナルとは微妙に違っていたりするわけです。

ところが「クローン文化財」のほうは、素材も質感も、あくまで「オリジナルそのまま」!
CG技術、デジタル撮影技術、2D、3Dの印刷技術などなど、現在の科学の粋を結集して作られた「完全無欠のコピー作品」
──それが「クローン文化財」なんです!

じゃあ、どういう理由から、この「クローン文化財」なるものが作られるようになったのでしょうか。
いちばん大きな理由は「未公開の文化財」や「失われた文化財」を見られるようにするため!

たとえば…
およそ1400年前に作られた「法隆寺金堂釈迦三尊像」という、有名な国宝があります。
(※聖徳太子が可愛がってた天才職人、鞍作鳥の手になるものとされています。)

国宝級の国宝だけあって、ホンモノは例年11月1日から3日の3日間しか、一般公開されません。
ところが… 東京藝大のチームが作った「クローン文化財」の釈迦三尊像は、割とお気楽なかたちで、しかも「無料で」公開されています。
(※今年3月、富山県高岡市で「無料展示」されました。)
気楽に見ることができて、しかも…コチラのほうは、ベタベタと「素手で触ることができる」!

さらに、ある意味、オリジナルよりも優れている点もあります。
ホンモノの釈迦三尊像のほうは、なんといっても1400年前のシロモノですから、どうしても「経年劣化」が避けられません。
もともとは、銅で作られているのですが、サビやくすみが出てしまっています。
でも、「クローン」のほうは、まさに「出来立てホヤホヤ」!
高岡市での無料展示の際には、この銅像が作られた「いししえの姿」そのままに、ピッカピカの「あかがね(銅)」の状態で、見ることができたというんです!

もちろん、「失われた文化財」のクローンも、存在します。
2001年、アフガニスタンにて、世界遺産の「バーミヤン大仏」が、過激派組織によって、顔面部分を見るも無残に破壊され、世界的なニュースになりました。

で、実はこのとき、大仏さまのご尊顔だけではなく、頭上にあった天井の壁画も、破壊されてしまったのですが…
東京藝大のチームは、昔のフィルムや資料をもとにしまして、コチラの「バーミヤン天井壁画」も、完璧なクローンを作ってしまったんです!

コチラも、質感や凹凸感はもちろんのこと、絵の具を分析してオリジナルが完全再現されました。
実は、この「バーミヤン天井壁画」のクローンには、大きな意味と意義があるのだそうです。
それは… ズバリ!
「たとえ文化財が破壊されても復元できる」という、力強いメッセージなんです。
(※ヨーロッパでも、過激派組織に破壊された文化財を復元するプロジェクトが進んでいます。)

さらにさらに… 「クローン文化財」によって、失われたロマンが蘇った… という話もあります。
「光と影の天才」と謳われた、レンブラントという、中世の画家がいます。

代表作は、世界3大名画のひとつとされる「夜警(やけい)」ですが、オリジナル作品は、一部が切断されてしまっています。
でも、ヨーロッパのプロジェクトチームによって、本来あるべき「夜警」が、完全再現されました。
さらに…レンブラントには、「親友同士の男性ふたり」を描いた、2枚の肖像画があるのですが…
生前、このふたりは、「オレたちが死んだら、一緒に並べて飾ってくれ。」との遺言を残していました。
ところが、ふたりが死んだあと、この2枚の肖像画は、かたやイギリス、かたやドイツの美術館に買われてしまい、離れ離れになってしまったんです。

ところが…この2枚の肖像画。最近「クローン文化財」となりまして、生前の遺言どおり、「2枚並べて仲良く」展示されるようになったんです!
オリジナル作品では不可能となってしまったふたりの願いが、今、叶ったというわけなんです。

さらに「クローン文化財」のスゴイところといえば…
「2D」、すなわち二次元のものを「3D」、すなわち三次元のものにすることさえ可能という点!

現在、上野の東京美術館で、「ブリューゲル『バベルの塔』展」というイベントが開催されてます。

ホンモノよりもホンモノっぽい芸術作品「クローン文化財」とは【ひでたけのやじうま好奇心】

ブリューゲル「バベルの塔」展(東京都美術館HPより)

ブリューゲルの代表作は、「バベルの塔」という、有名な油絵なのですが…
驚くなかれ!
この「バベルの塔」展では、本来「2D」の「バベルの塔」の油絵を、コンピュータで徹底分析!
3Dプリンターで立体的になった、「3Dのバベルの塔」が、展示されているんです!
この、オリジナルと似て非なる、立体的な「クローン文化財」。
ある意味で「オリジナルを超えた新たな芸術作品」として、タイヘンな評判を呼んでいるんです!

クローン文化財」の技術は、東京藝大のチームを擁する日本が最先進国なのだそうですが…
今後も、時代の要請に応えて、ますます増えてきそうです!

6月21日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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