ビンビン来る魅力の真空パック!サザン初期のシングル盤【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

By -  公開:  更新:

昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。
そんなアナタのためにドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が「ぜひ手元に置きたい一枚」をアーティスト別・ジャンル別にご紹介していきます。

先週は“元祖夏男”山下達郎を特集しましたが、バンドで“夏”といえば忘れてはならないのが、サザンオールスターズです。湘南のアイコンでもあるサザンですが、デビュー曲『勝手にシンドバッド』がリリースされたのが39年前のちょうど今頃、1978年6月25日のことでした。
当時私は小学6年生でしたが、まったく聴き取れない歌詞、これはコミックバンドなのか?そもそも「胸さわぎの腰つき」って何なんだ?しかも当時のヒット曲(『勝手にしやがれ』+『渚のシンドバッド』)を繋ぎ合わせただけの人を食ったタイトル…すべてが意味不明で「変なバンドが出て来たなあ」と子供心に思ったものです。
来年でデビュー40周年、まさか現在のような国民的バンドになるとは思ってもみませんでしたが、あの頃感じた「よく分からないけど、ビンビン来る魅力」が、当時のシングル盤にはそのまま真空パックされています。今回は「ドーナツ盤で聴きたい、初期サザンのシングル盤」をご紹介していきましょう。

【ビギナー向け】・・・『思い過ごしも恋のうち』(1979)

思い過ごしも恋のうち,サザン・オールスターズ

デビュー曲『勝手にシンドバッド』は発売当初さっぱり反応がなかったのですが、『ザ・ベストテン』の「今週のスポットライト」のコーナーに生出演したことがキッカケで「何だあれは?」と火がつき大ヒット。大方の予想に反して、いきなり売れてしまったサザン。これがフロントマンの桑田佳祐にとってはかなりのプレッシャーになったようです。『勝手に…』のような傑作は、そう簡単に書けるものではないですから。
当時ノイローゼにもなったようですが、そんな中、何とか書き下ろした第4弾シングルがこの曲です。第3弾『いとしのエリー』の次に出た曲で、バラード調の前作とは打って変わって、『勝手に…』や第2弾『気分しだいで責めないで』と同様、疾走感溢れるラテンフュージョン系のナンバーになっています。実はこの曲が第3弾になるはずが、本人たちの意向で『エリー』が優先され、発売が後回しになったのですが。
「心に残る言葉を言わなけりゃ、どうにもならない」という歌詞は、自身の恋愛観と同時に、アーティストとしての苦悩を吐露しているようにも聞こえます。そう、若き日の桑田佳祐は、こんなにも悩んでいたのです。
このシングルは79年7月発売ですが、先行で4月に2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』が出ており、そこからシングルカットされる形でリリースされました。その際、コーラスやアレンジを変更しており、そのヴァージョンはどのアルバムにも収録されていません。つまりこの曲のシングルver.が聴きたければ、このドーナツ盤(か再発シングルCD)を手に入れるしかないのです。
というわけで、サザンファン必携の一枚ですが、意外と200円前後で容易に手に入るので、ぜひ備えておきましょう。

【上級者向け】・・・『栞のテーマ』(1981)

栞のテーマ,サザン・オールスターズ

この「お面にセーラー服」のジャケット、どこかで見たなと思う方も多いでしょう。そう、名盤の誉れ高い4thアルバム『ステレオ太陽族』(1981)からの転用で、本曲はアルバムB面の最後を飾る〆の一曲です。
桑田が音楽監督を務めた映画『モーニング・ムーンは粗雑に』(1981)の挿入歌でもあり、「栞」は范文雀が演じた、劇中に登場する女性の名前です。ただし映画で使われたヴァージョンは歌詞が微妙に違っていて、それも何らかの形でリリースしてほしいものですが。
当時のセールスは、オリコン最高44位止まりとさほど伸びなかったのですが、非の打ち所のないバラードの傑作で、こういう曲を挿入曲としてサラッと書けてしまうところが天才たる所以。アルバムの〆に持ってきたのもよく分かります。
この曲をサザンのベスト1に挙げるファンも多く、これを聴いて自分の娘に「シオリ」と名付けた人も多かったようです。実はももクロの玉井詩織も、親がサザン好きでこの名前になった、とある番組で告白していましたが「お前もか〜!」。
本曲、あまり売れなかったので若干入手しづらいと思いますが、500円前後で入手可能です。余談ですが、B面の『My Foreplay Music』は、中日のレジェンド・山本昌投手が現役時代、打席に立つときの登場曲として使っていました。そんなわけで、ドラファンにも必携の一枚です。

【その他、押さえておきたい一曲】

『C調言葉に御用心』(1979)

C調言葉に御用心,サザン・オールスターズ

第5弾シングル。当時すでに死語だった「C調」(調子いい、の逆さ言葉)をリバイバルさせた。B面の『I AM A PANTY』はパンティーをテーマにした怪作。

『いなせなロコモーション』(1980)

いなせなロコモーション,サザン・オールスターズ

第8弾シングル。タイトル、曲調ともに、オールディーズテイスト満載の快作。歌詞中にコニー・フランシスやドリス・デイなども登場。

※6/17(土)朝8時半~放送の『八木亜希子 LOVE&MELODY』は、「サザン・達郎・ユーミン オールリクエスト」と題して、この3組の楽曲しばりでお送りします。あなたのリクエストが採用されるかも?サザンへのリクエストもお待ちしております。

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

Page top