コメディ映画の皮を被った、現代人への経済指南書!?『殿、利息でござる!』 しゃベルシネマ【第8回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
今月から始まりました「しゃベルシネマ」。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介していきます。

時代劇を観ていると、先人の知恵から現代を生き抜くヒントを得ることも多々あります。
そこで今回の「しゃベルシネマ」は、5月14日から全国公開となる映画『殿、利息でござる!』を掘り起こします!

ビンボー庶民が殿を相手に一発逆転!?

vol.08殿、利息でござる!・01

舞台は、江戸中期の仙台藩。
財政が厳しく、重税にあえぐ百姓や町人たちの破産と夜逃げが後を絶たなかった。
小さな宿場町・吉岡宿もすっかり寂れてしまい、例に漏れず。
造り酒屋を営む穀田屋十三郎は、町の行く末を案じていた。
ある日、町一番の知恵者である茶師・菅原屋篤平治が十三郎に、ある秘策をを打ち明ける。
それは藩に大金を貸し付け、その毎年の利息を住民に配る…という、奇想天外なものだった。
藩に貸し付ける元金の目標は、千両(現在の約3億円)という目も眩むような金額。
しかも計画が明るみに出たならば、即刻打ち首間違いなし。
誰もが無謀と感じるこの奇策、十三郎と仲間たちは町を守るために私財を投げ打ち、計画を進める…。

原作は、「武士の家計簿」で知られる歴史家・磯田道史氏による評伝「無私の日本人」に収録されている一編「穀田屋十三郎」。
いまから250年前に本当に起こった庶民の話、つまり実話を映画化しました。

vol.08殿、利息でござる!・02

主人公の穀田屋十三郎を演じるのは、硬軟自在な魅力をみせる阿部サダヲ。
意外なことに、時代劇で主演を務めるのは本作が初とのコト。
ほか、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、千葉雄大、松田龍平と、映画・ドラマの主演クラスの俳優が勢揃い。
さらに寺脇康文、きたろう、西村雅彦、草笛光子、山﨑努といったベテラン俳優が名を連ね、極めつけは仙台藩主役で、フィギュアスケートの羽生結弦選手が映画初出演。
どこを切ってもスターが顔を出すという、金太郎飴的ムービーです。
この“一世一代の金貸しストーリー”をコミカルにテンポ良く描いたのは、『白ゆき姫殺人事件』や『予告犯』など、話題作を次々手がける中村義洋監督。
豪華なキャストを適材適所に配し、しかも全員にしっかり見せ場があるという心憎い演出は、中村監督ならでは。

…と、ここまで聞いて。

阿部サダヲさん主演で、人気者がたくさん出演しているコメディ映画なのね。

…と、タカをくくったアナタ。

vol.08殿、利息でござる!・03

そう思ったとしても、無理はありません。
チョンマゲに見立てた貨幣を頭に乗せた、阿部サダヲさん。
このビジュアルの方向性に間違いはありませんが…。
本作の魅力は、そんなに浅いものではないんです!

決して驕らず勘違いせず。ガチで小銭をかき集める!

vol.08殿、利息でござる!・04

本作がいちばん伝えたいのは、無私の心。

この計画について、決して口外せず。
ケンカや言い争いはせず。
大願を成就しても、子孫の代までつつしみ深く生活する。

風呂もお酒もガマン!
宝物も家財道具も、必要とあらば家を売り払ってでも、破産同然になっても、ひたすら小銭をかき集める。
それはとてもとても地味な作業ではありますが、彼らの身体を張った行動から次第にリアリティが感じられ、観るうちに共感さえ覚えることでしょう。

本作には腕利きのサムライも悪代官も登場しませんが、逆転の発想と信じる想いで町を救った先人たちの知恵と生きざまが、しっかりと刻まれています。
「無私の日本人」たちの奇跡と感動の歴史秘話。
我が身のためではなく、郷土のため、ひいては子孫のためにと奔走する町人たちの姿に、我々現代人が忘れかけている“何か”を見いだすことが出来るのではないでしょうか。

『殿、利息でござる!』は、2016年5月14日から丸の内ピカデリーほか全国ロードショーです。

殿、利息でござるB5表_CS5

殿、利息でござる!
監督:中村義洋
原作:磯田道史『無私の日本人』所収「穀田屋十三郎」(文春文庫刊)
出演:阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、寺脇康文、きたろう、千葉雄大、橋本一郎、中本賢、西村雅彦、山本舞香、岩田華怜、重岡大毅(ジャニーズWEST)、羽生結弦(友情出演) 、松田龍平、草笛光子、山崎努 ほか
©2016「殿、利息でござる!」製作委員会
公式サイト http://tono-gozaru.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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